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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第78話 瞬のツッコミを取り戻せ!

「えー!瞬くんちっちゃいー!まるで短命の人の生命線みたい!」



 秒太郎によって子どもの姿にされてしまった瞬を見に、城田と真美が集まって来た。



「たんめい……?あ!そ、そんな例え良くないと思います!」



「おやー?ツッコミにキレが無い!これじゃ調子出ないよ!」



「うむ。やはりツッコミというものは大事だったのだな。しかし小さいな瞬よ。ちょっと顕微鏡を持って来るから待っていろ」



「ぼくそんなに小さいの……?ミジンコとどっちが小さいかな?」



 もはやツッコミになっていない瞬の言葉に、真美は頭を抱える。



「あちゃー!これじゃこっちもボケるにボケられないじゃん!どうしよう城田さん!」



「そこにいる紳士風の妖精の仕業だな。お前は何の妖精なのだ?」



 城田は近くにいた秒太郎に尋ねる。



「私は時間の妖精。彼が私と仲良くなりたいと言うので、仲良くなるための試練を与えたのだよ」



「試練?あー!お店の入口とかお部屋の境目にかかってるやつだよね!」



「違うぞ真美よ。アラビア半島の東部に位置する島国のことだ」



「アラビアはんとうってどこ……?」



 城田と真美は顔を見合わせ、驚きの表情を浮かべる。



「瞬くんって子どもの頃からツッコミできたわけじゃないんだね!うーん、困ったなー」



「うむ。見たところ今の瞬は小学五年生ぐらいだろう。つまり、ツッコミに目覚めたての時期だ。第30話に書いてあった」



「そっかー!なるほど、分かったよ!つまり時間の妖精さんが与えた試練は、瞬くんのツッコミの腕を戻すことだよ!」



「ふむ。興味深いな。確かにこの時期の瞬はツッコミが全くできないわけではない。簡単なボケから始め、どんどんツッコミの腕を戻して行くのが良いな」



 秒太郎は城田と真美の前に出て、シルクハットを取って礼をした。



「その通り。彼はツッコミが主な役割だったようだね。君たちの力で彼のツッコミを元に戻すことができれば、私は君たちと友人になろう。約束するよ」



「よーし!そうと決まれば瞬くんのツッコミ修行始めるよー!」



「しゅぎょう……楽しそう!」



 小さい瞬は修行という言葉に目を輝かせる。そんな様子を見て、真美は瞬の目線に合わせてしゃがみこんだ。



「ねえ瞬くん?おねーさんの名前分かるかな?」



「分かるよ!真美せんぱいでしょ?」



「ぶっぶー!正解は野崎ゴリラでしたー!」



「なんでだよ!野崎はそのままなんだ!?」



「おー!いいじゃん!じゃ、次城田さんね!」



 城田は真美と同じく瞬の正面にしゃがみ、くるりと後ろを向いた。



「こっち見てよ!なんで後ろ向いたの!?」



「我の美尻を見たいであろう?」



「罰ゲームが過ぎるよ!!」



 城田の二段ボケにより、瞬のツッコミに少しキレが戻って来ていた。そして、瞬の見た目にも変化が現れている。



「見て城田さん!瞬くんがちょっと大きくなったよ!」



「うむ。これでアジアゾウくらいにはなったか」



「大き過ぎるよ!!ゾウの種類限定する必要あった!?」



「わお!また大きくなった!よーし、このままいくよー!」



 真美と城田は、瞬に向かってどんどんボケ始めた。



「見てて瞬くん!私今からフラフープしながらピザ生地回すから!」



「どっちも回しちゃダメだよ!!どこ見ていいか分かんないよ!!」



「では我は今から前転をしながら後転をするぞ」



「体引きちぎれない!?」



「瞬くん!見て見て!シロオリックスのモノマネだよ!」



「マニアック過ぎるわ!!ジュレヌクでもないの!?」



「では我は北朝鮮の偉い人のモノマネをしよう」



「色んな人から怒られてしまえ!!」



「さー瞬くん!さっき回したピザ生地にメガネケースを乗せて焼くよ!」



「黒焦げのメガネケースが出て来るだけだろ!!メガネケースに謝れ!!」



「では我の特技を見せよう。どうだ?親指が人並み以上に反るぞ」



「知らねえよ!!絵面が地味過ぎるわ!!」



「じゃー最後に、フラフープしながらバク宙するよー!」



「なんか球体描こうとしてません!?」



 城田と真美のボケラッシュが終わる頃には、瞬の姿はすっかり元の高校生に戻っていた。



「わお!瞬くんが元に戻った!これで立派な石油王だね!」



「掘り当てた覚えありませんけれども!?」



「うむ。秒太郎よ、これで満足か?」



 秒太郎は三人の前までやって来ると、鼻メガネをクイッと上げてにっこりと笑った。



「素晴らしい!予想以上に君たちの絆は深いみたいだね。ぜひこちらから、友人にして欲しいとお願いするよ」



「わーい!これで妖精の世界もクリアだー!」



「なんか俺、無自覚にツッコミさせられてただけの気がするんですけど……」



「まーまー、いいじゃん!さて城田さん、次はどんな世界?」



「次はクリスマスの世界だ。確かバドミントンで羽の代わりに栗を使うことだったか?」



「それ栗スマッシュだろ!!……なんだ栗スマッシュって!!」



 いつも通りになった三人を見て、田吾作は秒太郎のところへ近寄った。



「秒太郎さん、あいつらなんか良いトリオっすね」



「はは、そうだね。彼らのような友人を持てて誇らしいよ」



「ほんとはオイラと仲良く喋ってた時点でクリアだったんすけど……言わない方が良いっすかね?」



「それは黙っておこう。せっかく彼らの絆を見ることができたんだ。良い仕事をしたと思っておこうじゃないか」



 こそこそと話す妖精たちを見て、瞬が秒太郎に話しかける。



「ん?秒太郎なんか言ったか?」



「いや、なんでもないさ。さあ、次の世界へ向かうんじゃなかったのかい?」



「ああそうだった!行きますよ真美先輩、城田!」



「ちょっと待ってね、今ピザ焼き上がるの待ってるから」



「まだ焼いてたのかよ!!かなぐり捨てろそんなもん!!」



 こうして三人は、妖精の世界を後にしたのだった。

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