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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第69話 釣りの世界 その2

 朝日が昇り、海にキラキラと反射する。

 海鳥が時折水面に向かって急降下しては、銀色の魚を加えてまた空へ戻る。

 そんな中をゆっくりと進む船の上で、城田の声が響いた。



「オロロロロロロロロロ!!」



「うるせえよお前!!前も言ったけど神なんだから船酔いぐらいなんとかしろよ!!」



「ちょっと瞬くん!城田さんだって頑張って生きてるんだよ!」



「我はもうここまでだ。後はお前たちでなんとkオロロロロロロロロ!!」



「生きるの辞めようとしてますけども!?ああもう吐く音うっせえな!!」



 城田の吐瀉物が弧を描き、水面に向かう。それはまるで船が通ってきた軌跡を残しているようだ。



「やかましいわ!!良いように言うな!!」



「そんなことより、見て!向こうから何か大きなのが流れて来るよ!」



 真美は前方を指差し、瞬も同じ方向を見る。すると確かに、何かが流れて来るのが見えた。



「んん……?あれ何ですかね?」



「私目良いからちゃんと見てみるよ!視力12.25あるんだー!」



「なんだそのサンタが来そうな視力は!?」



 真美は目を凝らして流れて来るものを見る。距離は5kmほどとかなり離れていて、瞬の視力では全く何か分からない。

 真美は集中しているのか、ぶつぶつと何かを口にしている。



「イタリアではフォークとスプーンを使うのは子どもだけ……イタリアではフォークとスプーンを使うのは子どもだけ……」



「なんでパスタの食べ方呟いてんですか!!本場でも地域によるでしょ!!」



「見えてきたよ瞬くん!あれは結構な大物だね!」



「漂流物で大物って……何が見えたんです?」



「えっとね、代々木国立競技場!」



「デカ過ぎるわ!!え今東京海底都市になってたりします!?」



 船の前方で目を凝らす瞬と真美に、城田がヨロヨロと近付いて来る。



「すまぬ、どうしてもこの気分の悪さが治らぬのだ。二人のどちらでも良いのだが、我の両耳に指を突っ込んでくれぬか?」



「背中摩るんじゃねえの!?お前それしゃっくりの治し方だろ!!」



「しゃっくりと咳が同時に出て、嘔吐も止まらぬのだ」



「器用な体調不良!!」



 結局真美が城田の背中を摩り、城田も少し落ち着いたようだ。

 そこで三人は、いよいよ本格的にマグロを探し始めることにした。



「よーし、じゃあマグロを探そー!マグロは群れになってるから、レーダーで感知できるんだよね?」



「うむ。我もレーダーを持っているぞ。これでマグロを探そうではないか」



 そう言うと城田は片眼鏡のようなものを装着し、海の方を見た。



「どうだ城田?反応あるか?」



「うむ。今水面近くに鰯がいるのだが、戦闘力は75000だ」



「おいお前それスカウターだろ!!あとイワシの戦闘力ク〇リンと一緒じゃねえか!!強えな!!」



「鰯と言えども、強く生きているのだな」



「意地でもイワシ漢字で書くのな!?」



 城田がすれ違う魚の戦闘力を測っていると、真美が遠くを指差して叫んだ。



「見て!10km先に渋滞が!」



「カーナビか!!なんで渋滞起こってんだよ!!」



「ううん!車じゃなくてね、多分魚の渋滞?」



「え?魚の渋滞って……」



 瞬が呟くと同時に、城田のスカウターがモフっと音を立てて爆発する。



「今の爆発音だったの!?柔らかそうに爆発すんなよ!!」



「そんなことより、あれはまずいぞ。我のレスバ戦闘力スカウターが壊れるほどの強さだ」



「ずっとレスバの強さ測ってたのかよ!!だとしたらさっきのイワシめっちゃ嫌な性格してんじゃねえか!!」



「瞬くん見て!さっきのイワシのアカウント特定したよ!弱魚男性って名前!」



「めちゃくちゃ捻くれてそう!!」



 三人がそんな会話をしているうちに、瞬の視力でも分かるほどに魚の群れが近付いて来ていた。



「おいおい、なんかやばいぞあれ!!」



「うむ。太陽の光に鱗が反射して尾を引いているな。まるで箒星のようだ」



「呑気か!!んなこと言ってる場合じゃねえだろ!!」



「見て瞬くん!あれマグロの群れだよ!カタカナの『マグロ』の形を成してる!」



「親切だなマグロ!!ていうかやばいやばい、もう近付いて来てるって!!」



 『マグロ』の形を成したマグロの群れは、もう船に迫って来ている。ぶつかる直前のところで、先頭のマグロが水面を跳ね、甲板へと飛び込んで来た。



「わお!マグロが飛び込んで来たよ!何かを訴えてる気がする!」



「マグロが何を訴えるって言うんですか!!」



「そりゃ、『俺たちの生き様は一瞬のせツナ的な輝きだ』って」



「やかましいわ!!そんなウィットに富んだマグロがいるか!!」



「なんや瞬くん、アツナってるんちゃうん?」



「無理にツナを入れるな!!何ですかその急な関西弁は!?」



 真美がツナという単語で遊んでいると、本当に飛び込んで来たマグロが話し出した。



「なんでい!なんか美味しそうな匂いにつられて来たら、人間しかいねえのかい!」



「美味しそうな匂い……?あ!ちょっと待て!城田、お前何食った?」



「小腹が空いていたのでサバとイカを丸呑みしたぞ」



「マグロの餌じゃねえか!!それ吐いたからマグロが集まって来たんだろ!!」



 ビチビチと飛び跳ねるマグロを、真美が強引に抱え込む。



「な、何するんでい!?海に戻しやがれ!」



「うるさいよ!エラ呼吸の分際で!」



「呼吸法で分類してるんですか!?」



 騒ぐマグロと瞬を無視して、真美はマグロを大きなクーラーボックスに入れた。



「おっけー!これでマグロはゲット!この世界はクリアで良いんだよね?」



「うむ。我の見事な作戦勝ちだったぞ」



「お前は吐いてただけだろ!!」



「よし、では次の世界へ行くぞ。次はラジオの世界だ」



「結局釣りっぽいこと一回もしてないけど大丈夫!?」



「うむ。クリアしたから大丈夫だ。次の世界に行ったらラジオを練乳で食べるのが楽しみだぞ」



「ラシオのことイチゴだと思ってない!?」



 こうして三人は、釣りの世界を脱出することに成功したのだった。

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