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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第67話 演劇の世界 その2

「さあ、いよいよ本番だね。僕の指導でパワーアップした君たちを、存分に見せつけてやるんだ!」



「私頑張るよ!日本を代表する右サイドバックだって証明して見せる!」



「一人だけサッカーの練習してました!?」



「我も自信が付いたぞ。今ならお好み焼きのオーディションにも受かりそうだ」



「受けるオーディション間違え過ぎだろ!!なんで審査でお好み焼き作るんだよ!?」



「何を言っているのだ瞬よ。焼かれる方に決まっているであろう」



「お前キャベツか何か!?」



 舞台裏の通路に固まる三人と薬舎は、いよいよ始まる演劇に向けて気持ちを作っていた。真美はぶつぶつと自分に役を言い聞かせる。



「私は小野妹子、私は小野妹子……」



「役違いますよ!!アラジンに遣隋使出て来ねえよ!!」



「私は小野妹子関、私は小野妹子関……」



「妹子を勝手に力士にすんな!!」



 集中する真美を横目に、城田は余裕しゃくしゃくだ。



「我はもう準備万端だ。このまま役に入れるぞ」



「いつもと変わらねえけど……お前何の役だったっけ?」



「もちろんツーペアだ」



「ポーカーの役言ってどうすんだよ!!トランプしまえ!!あと役弱いな!!」



「だが我はツーペアでポーカーの天下を取ったことがあるぞ。その時使っていたトランプは数字が46まであるのだが」



「じゃあツーペアでも奇跡だわ!!不正トランプ使ってんなよ!!」



「トランプ46だ」



「大統領アイドルグループみたいに言うな!!……なんだ大統領アイドルグループって!!」



「代表曲は『大統領令で関税をかけたくなる』だ」



「ほんとに大丈夫かそのタイトル!?」



 舞台裏で騒ぐ三人の耳に、劇場アナウンスが聞こえてくる。



『間もなく舞台『アラズン』開演です』



「訛るな!!パチモンみたいになってんじゃねえか!!」



「何言ってるんだい?実際にタイトルは『アラズン』だよ?」



「え俺たちずっとパクリ演劇の練習してたの!?」



「失礼だな、コピー演劇と呼んでくれ」



「コピーバンドみたいに言うな!!題材のパクリはダメだろ!!」



「ランプの魔人ズーニーだっているんだよ?」



「何この演劇全員東北出身なの!?」



 薬舎と瞬が言い合っていると、開演のサイレンが鳴り響き、プレイボールの声が聞こえてくる。



「なんでだよ!!甲子園か!!」



「ちょっと瞬くん静かに!始まったよ!」



 下手の舞台袖から買い物袋を持ったおばちゃんが歩いて出て来る。

 上手からはタンクトップに麦わら帽子を被った小太りの男が出て来た。

 小太りの男は舞台の真ん中で話し始める。



「おらの名前はズン。青森でりんご農家をやってるだ」



「おいアラビア要素どこ行ったんだよ!!青森の人出て来たけど!?」



 瞬が裏でツッコミを入れていると、おばちゃんがズンを見つけて声をかけた。



「あらズン!こんなとごでどうすだの?」



「タイトルこれだったのかよ!!おばちゃんのセリフじゃねえか!!」



「そっちこそこんなとごで何すてるだズン子さん」



「ズン子さん!?名前が酷似してるぞ!?」



「いやねえ、あだすはさっきなんかランプ?みたいなのを拾っただ」



「ランプ?そんなもん拾っちゃダメだあ、交番さ届けるべ」



「ちょっと訛りなんとかならない!?」



 瞬の叫びも虚しく、東北訛りのセリフが飛び交う中で演劇は進んでいく。



「な、なんだあ!?ランプを擦ったら、人が出て来ただ!!」



「ワシはランプの魔神ズーニーや。自分の願いなんでも叶えたるから言うてみ?ほれほれ」



「なんで魔神関西人なんだよ!!ノリ軽すぎるだろ!!」



「おらを……おらを、さくらんぼ農家にしてくれだ!」



「もう山形行けよこいつ!!」



「さくらんぼ農家にさしたる代わりにワシをここから解放してくれや。あべのハルカス登ったら降りられへんようなってもうてん」



「高所恐怖症!!ていうかそれだと今こいつらあべのハルカスにいることになるぞ!?」



 そして場面は進み、いよいよ三人の出番が近づいてきた。



「緊張するねー!私はナップサックの役だからセリフ無いけど!」



「何ナップサックになる夢叶えてんだ!!ていうかなんだナップサックの役って!!」



「我はナップサックの紐の役だ。セリフもあるぞ」



「ナップサック一人で成り立たなかった!?なんで紐だけ意思あるんだよ!!」



「お!瞬くん出番だよ!行っておいで!」



 真美に背中を押され、瞬は舞台に走り出る。

 だがどうも瞬の様子がおかしい。



「(やべえぞ!!ずっとツッコミ入れてたらセリフ忘れた!!どうしよう……)」



 そんな瞬の様子を見かねて、真美が小声で話しかけた。



「瞬くん、だいじょーぶだよ!薬舎さんとの特訓の日々を思い出して!」



「(特訓の日々……。そうだ、俺は……!)」



 瞬の脳裏に、本番までの特訓の日々が蘇ってくる。



『もっと脇を締めろ!グッと引きつけるんだ!』



『体が早く開き過ぎだ!もっと堪えて踏ん張れ!』



『できるだけバッターボックスの後ろに立つんだ!ボールをよく見ろ!』



『低く構えてステップは小さく!テイクバックでのブレを少なくするんだ!』



『フォロースルーは片手で!両手でフルスイングすると腰を痛めるぞ!』



「なんで全部バッティングのアドバイスなんだよ!!俺らここ数日何してたの!?」



 思わず回想にツッコミを入れてしまった瞬。しまったと思ったが、次の瞬間観客席から割れんばかりの拍手が聞こえてくる。



「「「「「ブラボーー!ブラボー!!」」」」」



「……え?なんで!?」



 困惑する瞬の元に、薬舎が歩み寄る。



「素晴らしいセリフだったよ!流石、特訓の成果を活かしただけあるね!」



「セリフでもねえし特訓は全部野球の話だったが!?」



「これだけの声援を貰えたんだ!君たちをこの世界から出してあげよう!」



「ええ……。ええ……?」



 すると城田と真美がズンに背負われて出て来た。



「瞬よ、よくやったぞ。お手柄だ」



「おいナップサックで出て来んなよ!!ズンが可哀想なことになってるだろ!!」



「しかしあそこまで感情を込められるとは、素晴らしい演技力だ」



「素なんですけども!?ちょっと先輩も何か言ってくださいよ!!」



「……」



「ダメだナップサックになりきってる!!」



「さあ、次の世界は釣りの世界だ。どんな長靴が釣れるか楽しみだな」



「とりあえずゴミの無い釣り場行かせて貰える!?」



 こうして三人は、大歓声と拍手を背に、演劇の世界を後にしたのだった。

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