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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第64話 広告の世界 その1

 城田が白いドアを開けると、人がごった返すスクランブル交差点に出た。

 歩行者天国になっており、信号は暗くなっている。横断歩道の周りには商業ビルが立ち並び、大きなモニターに映像が流れ、広告が幾つも掲示されている。



「わお!めっちゃ人いるね!東京のあそこに似てるね!えーっと、パタヤ?」



「渋谷でしょどう見ても!!なんでタイのビーチに見えるんですか!!」



「いやー、ついぽっちゃり!」



「不意打ちで太んな!!」



 交差する横断歩道の真ん中で、城田は上を見上げている。興味深そうな視線は、どうやらビルに掲示されている広告に向いているようだ。



「城田、何見てんだ?」



「あの『広告募集中』という広告を見ていたぞ」



「募集中だからまだ広告じゃねえよ!!なんでそんなもん見てんだ!!」



「白い部分が多くて好感が持てるのでな。ただ、我なら『広告募集中』の文字は入れない」



「じゃあただの白い板になるだろ!!なんだただの白って!!レフ板か!!」



 城田と瞬が言い合っていると、突然空中にモニターが現れ、映像が流れ始めた。城田の視線は空中のモニターに移り、真剣な表情になる。



「見ろ、あのモニターにこの世界のミッションが映し出されるぞ。映像が終わるまで一切瞬きをするな」



「はーい!じゃあ接着剤で瞼貼り付けとこーっと!」



「後で血の涙流しますよ!?っていうか城田、瞬き禁止っていうけど映像どのくらいあるんだよ?」



「ざっと三時間といったところか」



「タイ〇ニックか!!目カピカピになるわ!!」



 真美が瞼に接着剤を塗っていると、モニターから音声が流れ始めた。



『はじめまして。沖縄県観光大使兼はばちゅーばー小学校PTA副会長の比嘉です』



「観光大使だけでいいって!!あとせめて会長であれよ!!」



『これから皆さんに沖縄県の魅力を伝えるため、各島の映像をお届けします』



「この世界の説明しろよ!!沖縄のPRは今いいわ!!」



『さあ、皆さんもこの映像を見てぜひ沖縄県へのプロカバディチーム誘致を応援してください!』



「カバディでいいの!?野球とかじゃなくて!?」



「私はプロ相撲チームがいいなー!15対15の!」



「もう乱闘じゃねえか!!それ見て何が楽しいんですか!!」



 モニターは一面緑色になり、沖縄の豊かな自然が映し出された。



「よし、この世界の説明が終わったぞ」



「一言もされてねえが!?何にも分からなかったぞ!!」



「聞いたであろう?この世界のミッションは沖縄県にプロカバディチームを誘致することだ」



「嘘だろ!?まずカバディにプロリーグがあるのかどうかから教えてくれ!?」



「インドにあるぞ」



「日本にねえのかよ!!じゃあダメだわ!!」



 城田と真美が早速プロカバディチームの誘致に向かおうとしていると、一人の男が足早に三人に近づいて来る。肌は小麦色に日焼けしており、白いTシャツに短パンというラフな格好だ。



「はじめまして!私は沖縄県親善大使兼なんくるないさ中学校PTA会員の大城です」



「もう役員でもねえのかよ!!この沖縄の一般人たちは何!?」



「比嘉の方から説明が不足しておりましたので、私の方から補足しに来ました!」



「え?カバディチームの誘致に補足とかあるの?」



「あってくれないと困るんですけども!?」



 大城は三人に向かって白い歯を見せ、爽やかな笑顔で話し始める。



「この世界は広告の世界。ありとあらゆる商品に広告が付いており、それらが常に流れたり掲示されています。皆さんには、この世界でも注目される広告を作っていただきたいのです!そしてその広告収入で、沖縄県にプロモルックチームを誘致したいのです!」



「カバディじゃなかった!?」



 大城の説明に、城田と真美はうんうんと頷いている。そして真美は元気よく手を挙げ、大城に質問をした。



「チャンス大城さん質問!」



「先輩チャンスは要らないですよ!!」



「広告を作るってことだけど、何の商品で広告を作るの?壺?」



「絶対怪しいやつ!!そんな広告作らせないでくださいよ!!」



 瞬のツッコミを聞いて、大城はにわかに焦り出す。目はあちこちに泳ぎ、額には大粒の焦が浮かんでいる。これではピンチ大城だ。



「やかましいわ!!おい大城、まさかお前壺用意してたりしないよな?」



「え、えーとですね、その……。壺なんです」



「怪しいやつだった!!ちょ、ダメだろこんな商売に手貸したら!!」



「壺ではないが、我は透明なプラスチックのフォークを8800円で購入したことがあるぞ」



「バカ過ぎるだろ!!何ちゃんと消費税まで取られてんだよ!!」



 大城は申し訳なさそうに三人に向かって頭を下げる。



「すみません、でも我々にはこの壺しか無いんです!この壺が売れなければ、プロクリケットチームの誘致は実現しない!」



「おいカバディがずっと行方不明だぞ!!」



「私の心からのお願いです。どうかこの壺が爆売れするような広告を作ってください!できればツボに入るようなキャッチコピーを付けて!」



「やかましいわ!!何ちょっと上手いこと言ってんだ!!」



 瞬は姿勢を変えずツッコミを入れるが、城田と真美はやる気満々で腕まくりをしている。



「よーし、私頑張っちゃうよ!絶対に売って見せる!例えその壺をビン・カンの日に捨ててでも!!」



「ゴミに出すな!!あと壺ほんとにその日でいいんですか!?」



「我は広告を作るのが初めてだが、自信はあるぞ。手始めにこの白い紙に『広告』と書くか」



「せめて商品名書いてくれ!?」



 三人と大城は、壺を売るための広告作りを開始した。

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