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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第63話 警察の世界 その2

 時刻は15時30分。三人とKEIJIは予告状にあった三丁目のコンビニで、作戦の確認をしていた。



「よし、作戦を確認する。まずは狙われているポテトチップスのり塩味の警備だ」



「だいじょーぶ!ちゃんと私が全部買って食べてるから!」



「何してんだ!!もう守る必要無くなったじゃねえか!!」



 のり塩ポテトチップスを貪る真美の後ろから、半透明になった城田が現れる。



「我もそろそろ消えかかっているのだが、塩にぎりか何かを買ってはくれぬか?」



「自分で買えそれぐらい!!ていうかお前消えかけんの久しぶりだな!?」



「実はまだゲームセンターの世界で獲得したホワイトチョコレートが残っているのだ。それを少しずつ食いつないでいるぞ」



「まだあったのかよ!!あとどれくらいあるんだ?」



「値段で言うと7500円分だ」



「個数で言えよ分かりにくい!!」



 城田が塩にぎりを買って食べ、元の白さを取り戻したところで、KEIJIが作戦の続きを話す。



「予告状には犯行時間は今日の16時とあった。だが奴のことだ、2時間は遅れると見ていい」



「ショパン遅刻魔なの!?自分で予告した時間ぐらい守れよ!!」



「そして奴が現れた時のセリフは必ずこうだ。『ごめーん!起きたら時間だったー!』」



「だらしねえなショパン!!もう予告すんのやめとけよ!!」



「私は起きたら修学旅行が終わってたことがあってね?」



「修学旅行フルで寝てたんですか!?どうやって班行動とかしたんだよ!!」



「ううん、当日の朝二度寝して起きたらみんなが帰って来てたんだよねー!」



「家出てすらなかった!!もう病気ですよ!?」



 すると塩にぎりを食べ終わった城田が口を挟む。



「ちょっと待て。ショパンは遅刻したくてしているのではないかもしれぬぞ。遅刻癖のある者というのは、実はちゃんと準備をしている。準備をしている間に色々なことが頭に浮かんでしまい、それをやっている間に時間が過ぎてしまうのだ」



「なんかよく分かんねえけども……要するに何が言いたいんだ?」



「ショパンはADHDだ」



「だとしたらもう怪盗やめちまえ!!向いてねえよ!!」



「こら瞬くん!そんなこと言わないの!ADHDの人だってやりたい仕事があるんだよ!」



「その内容が犯罪だから言ってんだよ!!できねえ方が良いだろ!!」



 KEIJIはいつも通りの三人をスルーし、そのまま真面目な顔で口を開いた。



「とにかくのり塩ポテトチップスを守りきるんだ。警備はそこの白いあんたに任せる。他の二人は俺と一緒にショパンを取り押さえるのを手伝ってくれ」



「いやお前見て?今そののり塩ポテトチップスが全部食われてんだぞ?」



「ふう〜食べた食べた!のり塩が歯にくっついたから歯医者さんで全部抜いて貰って来るね!」



「早まり過ぎだろ!!歯磨けよ!!」



 すると突然辺りが真っ暗になり、スポットライトが道を照らす。

 そしてスポットライトの中に、細い肘が姿を見せた。



「ズレてるズレてる!!立ち位置間違ってるって!!もうちょい右だわ!!」



「瞬よ、そこは南南西ではないか?」



「恵方か!!怪盗がそんなおめでたい方角に来るか!!」



 スポットライトの中に横歩きで人影が現れる。細い肘の主が登場だ。黒いスーツに黒いシルクハットを被り、同じく黒いマントを羽織って目には仮面を付けている。



「よっしゃ!今日は時間通りに着い……ちょっと早かったあああ!!ミスったあああ!!」



「もうこいつ予告状書くの向いてねえって!!ゲリラで来いよ!!」



 瞬のツッコミが聞こえていないのか、ショパンはそのまま自己紹介を始める。



「ふふふ……我が名は怪盗アルセーヌ・ショピャピョピュピョピャターザン」



「噛み過ぎだろ!!最後ターザンって言ったぞ!?」



「予告通り、ポテトチップスのり塩ファミリーパックを頂戴しに参上した!」



「何ちょっと量増やしてんだ!!贅沢すんな!!」



「さあ、大人しくポテトチップスのり塩ファミリーパックを渡せ!さもなくばこの水鉄砲が火を吹くぜ!」



「水か火かはっきりしろよ!!」



 ショパンがズンズンと進んで来ると、コンビニとショパンの間に割って入る大きな背中があった。KEIJIだ。



「そこまでだ、アルセーヌ・ショピャピョピュピョピャターザン」



「噛んだやつ無理に再現すんなよ!!よく聞き取れたな!?」



「お前を現行犯で逮捕する!お前ら、取り押さえろ!!」



 KEIJIの声で瞬の両側から城田と真美が飛び出した。真美は虫取り網、城田は虫かごを持っている。



「おいカブトムシじゃねえんだから!!そんなんで怪盗が捕まるか!!」



「くっ……!まさかあーしの弱点である虫取り網を持って来るとは……!」



「お前一人称あーしなのかよ!!ギャルか!!」



 虫かごに頭を突っ込んだショパンに、KEIJIが手錠をかける。



「ようやく捕まえたぜショパン。俺が警察学校を卒業し、刑事になってからずっとお前を追いかけてきた!もう2ヶ月になるか……」



「お前新卒だったのかよ!!だから軽犯罪しか担当してねえの!?」



「あーしの怪盗人生もここまでか……。仕方ない、連れて行け」



「お前言うほど怪盗じゃなかったよ!?」



 いつの間にか到着していたパトカーに乗せられ、ショパンは連行されて行った。

 見送った三人は、ほっと息をつく。



「これで一件落着!あとは私が怪盗アルセーヌ・ショパン十六世を受け継ぐだけだね!」



「ブルボン朝か!!ショパン続き過ぎだろ!!」



「では我が予告状を書く係をやってやろう。漢文で良いか?」



「現代人が読めるようにしろ!?」



 真美はショパンが落として行った仮面を拾い上げ、大きく伸びをする。



「とりあえずこれで警察の世界はクリアだね!城田さん、次はどんな世界なの?」



「うむ。次は広告の世界だ。牛や馬が放し飼いされているらしいぞ」



「それ放牧だろ!!行く前から間違えんな!!」



 こうして三人は、警察の世界から脱出することに成功したのだった。

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