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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第61話 美術館の世界 その2

 三人が更に奥に進むと、美術品も変わり種が増えてくる。



「見て見て、ルイ・〇ィトンのベビーカーだって!」



「うむ。赤子というものは生命の始まり。美しいものだ」



「こっちにはイブ・サン〇ーランの哺乳瓶があるよ!」



「うむ。赤子の生命を維持するミルクを与えるものだ。実に美しい」



「わお!こっちにはエル〇スのよだれかけがあるよ!」



「うむ。赤子の象徴的な物品だ。とても美しい」



「なんでハイブラのベビー用品しかねえの!?美術品の定義広過ぎるだろ!!」



 我慢できずに瞬が叫びを上げる。対して真美は何とも思っていないようで、どんどん前に進んで行った。



「ほら瞬くん、そんなとこで止まってないの!こっちにアカチャン〇ンポのベビー服もあるよ!」



「じゃあただのベビー用品店じゃねえか!!もうハイブラでもねえ!!」



「だが赤子というのは美しいものだ。人間は成長するに連れて醜くなっていくからな。もうお前たちなどカラスに破られたパンパンのゴミ袋のようなものだ」



「おい思想強いな神!!俺たちのことそんな風に思ってたの!?」



 更に三人が進んで行くと、今度は文字が書かれた半紙がたくさん飾ってある部屋だ。



「なるほど。書道も美術品としているのだな。我は漢字が好きだから書道も好きだぞ。なになに、これは『印度』か」



「漢字だけど外国じゃねえか!!それで良いのか!?」



「こっちにもあるよ!えーっと、『ペンは剣よりも強し』だって!」



「それを毛筆で書いてどうすんだよ!!前提から外れてんじゃねえか!!」



 瞬のツッコミも虚しく、城田と真美はどんどん進んで行く。



「こちらにもあるぞ。『क्या कामाबोको को नाश्ते के रूप में गिना जाता है?』と書いてあるな」



「漢字どこ行ったんだよ!?アラビア語知らねえって!!」



「『かまぼこはおやつに入りますか?』と聞いているぞ」



「なんで入る可能性あると思ったんだよ!!それバナナでする質問だろ!!」



「こっちのは『多汗症』って書いてあるよ!」



「知らねえよ!!病院で診て貰え!!」



 書道コーナーを抜け、三人は一旦休憩を入れた。いや、疲れているのは主に瞬だけなのだが。



「美術館なのに全然落ち着かせてくれねえな……。何がなんでもボケるんだな……」



「そー?ボケてるとは思わなかったよ?」



「うむ。我もだ。そんなことより、我々の目的はここに飾る美術品を作ること。そろそろインスピレーションは湧いて来たか?」



 城田が瞬と真美に尋ねる。だが二人の反応は正反対だ。



「はいはーい!私めっちゃ湧いて来てるよ!今なら煮卵の絵も描けそう!」



「もう描いてたでしょ!!いやこんなんで湧いて来るわけねえだろ……」



「よし、では各々で飾る美術品を作ってみようではないか。On your mark」



「え陸上の大会とか始まろうとしてる!?」



 三人は美術品の制作に取り掛かり始めた。もちろん真美は魔法、城田は神の力を使っている。瞬は城田から雑に渡された粘土の塊を前に、一人唸っていた。



「俺だけ粘土工作なのか……。何作ればいいんだ……?」



「瞬くん困ってるね!私がヒントあげよーか?とりあえず作りやすいものから作るといいよ!例えば北朝鮮の偉い人とか!」



「色んな意味で作りにくいわ!!四方八方から怒られるでしょ!!」



 そんな中、城田は手が止まってしまっていた。意外にも悩んでいるようだ。



「うーむ、なかなか美しいものができぬな。一旦折り畳み傘を作るのはやめるか」



「お前折り畳み傘作ってたの!?どういった理由で!?」



「瞬に真美よ、やはり我々は力を合わせることが必要なようだ。瞬の粘土に真美の魔法と我の神の力を込め、美術品を作り上げようぞ」



「わーい!私津市役所がいい!」



「三重県の!?美術館の中に市役所作んなややこしい!!」



 城田は粘土に向かって右手を上げ、真美は杖を高く掲げる。

 粘土を持つ瞬はかなり不安そうだ。



「じゃあいくよー!」



「真面目にやってくださいね!真面目に!」



「分かってるよー!偉大なる大地の結晶よ、集まりてその形を成し、」



「我の元にそのぶよぶよに太った姿を現せ。メタボリックシンドローム!」



「あれこれ確か雪の世界で出てきた呪文じゃ……」



 瞬の頭にガーリックシュリンプ味のポップコーンが浮かんできたところで、瞬の持つ粘土が光って形を変え始めた。


 細長い四本足が生え、長めの首も伸びていく。耳がちょろっと出てきて、口の部分が前に伸びた。

 だんだんと茶色く色づいていき、そこには牛と鹿の中間のような動物の像ができていた。



「……いやジュレヌクじゃねえか!!」



「違うよ瞬くん!これはインパラのメス!」



「知らねえよ!!似たようなもんだろ!!」



「やはり牛の仲間は美しいな。見ろこの曲線美を」



「だから知らねえって!!せめて予告通りジュレヌクにしとけよ!!」



 瞬の叫びを聞いて、漢朝が三人の元へ駆けつけた。

 漢朝はインパラのメスの像を見て、感嘆の声を漏らす。



「おお……素晴らしい……!これほどまでの曲線美とは!」



「褒め言葉曲線美しかねえの!?」



「我がジュレヌク美術館に飾るのに相応しい!!ここまでの曲線美を表現できるとは、夢にも思いませんでしたよ!」



「ここジュレヌク美術館っていうの!?じゃああのベビー用品はなんだったんだよ!!」



「ここまで素晴らしいものを作られるとは……。いやはや素晴らしい!クリアにしましょう!」



「聞けよ!!」



 漢朝によってクリアが明言され、城田と真美はインパラのメスの像を囲んで踊り始める。見事なブレイクダンスだ。



「喜び方のレベル高えな!!ちょ、いいから落ち着いて!!」



「華麗にクリアできたな。流石は我。まるで神のようだ」



「だからお前神だろ!!」



「よし、では次の世界へ向かうぞ。次は警察の世界だ」



「わーい!警察大好き!無料で部屋と食事を提供してくれるし!」



「前科何犯か教えて貰えます!?」



 こうして三人は、インパラのメスの像を残して美術館の世界を後にした。

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