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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第55話 祭りの世界 その1

 城田が白いドアを開けると、いきなり大声が響いて来た。



「わーっしょい!わーっしょい!わーっしょい!」


 三人の目の前には大きな神輿を担いだ複数人の男が現れ、そのまま通り過ぎて行く。



「わお!もうお祭り始まってるの?私も混ざりたい!水と油のように!」



「混ざってねえじゃねえか!!あ、ちょっと先輩待って!!」



 真美は神輿の方に駆け寄り、屈強な男たちに混じって叫び始めた。



「パッタイ!パッタイ!パッタイ!」



「掛け声違いますよ!!それタイの焼きそば!!」



「うむ。元気で良いことだ。ところで神輿とはなんだ?あらかじめ一定時間の残業が給与に含められていることか?」



「それみなし残業だろ!!無理に間違えなくていいからな!?」



「だが神輿というものを知らなかったのだから仕方ないであろう」



「そもそもお前神なのになんで神輿知らねえんだよ!!」



「それは宗教が違うからだ。我を信仰する宗教は『発教(はっきょう)』というのだが、お前も入信するか?」



「なんだその頭おかしい宗教!!そんなもんに勧誘すんな!!」



 城田と瞬が神輿を担ぐ男たちにも負けないほど大騒ぎしていると、真美が満足そうに戻って来た。



「ふう〜満足満足!良い汗かいたー!ほら見て、おでこから汗が噴射しててビームみたいじゃない?」



「呑気してないですぐ病院行ってくださいね!?」



「え?だいじょーぶでしょ!シンガポールにいる親戚も口から水噴射してたけど元気だよ?」



「マーライオンと血繋がってます!?」



「瞬に真美よ。久しぶりに合った従兄弟同士のようなやり取りを繰り広げている場合ではないぞ。あれを見るが良い」



「そんな気まずそうだった!?」



 城田が指差した先には、神社まで続く長い道の両端に、これでもかと屋台がひしめき合っている。

 屋台の前では呼び込みをしている若者たちがお互いを睨み合い、バチバチと火花が散っているようだ。



「わお!屋台がいっぱい!楽しそうだね!まずはあのビュッフェスタイルの屋台から行こーよ!」



「それだけで終わるでしょ!!楽しむ気ゼロじゃないですか!!」



「我はあのたこ焼きすくいとかいうのをやってみたいぞ」



「たこ焼き水に入れんな!!明石焼きみたいになってんじゃねえか!!……なってねえわ!!」



 ずらりと並んだ屋台を見ながら、真美が城田に尋ねる。



「ねえ城田さん、この世界では何をしたらクリアになるの?」



「この世界は祭りの世界。と言っても、お前たちが想像する夏祭りがベースの世界だ。見ての通り屋台が並んでいる。この世界でのミッションは、屋台の中からこの世界の管理人を見つけ出すことだ」



「見つけ出す……?いつもなら管理人が先に出て来るけど、今回は出て来ないってことか?」



「その通りだ。この膨大な数の屋台から、管理人を見つけ出す。さすればお主らはこの世界から出ることができるであろう。多分。知らんけど」



「関西人か!!お告げみたいな雰囲気出しといてあやふやなのかよ!!」



 城田と瞬が言い合う中、真美だけはうきうきで目を輝かせている。



「とりあえず屋台を回らなきゃだね!わーい楽しみ!アオザイ着てこなきゃ!」



「ベトナムの祭り来てます!?」



「我はビビッドでカラフルでふわふわのワンピースと猫耳ニット帽を……」



「原宿系の変態やめろ!?」



 三人はとりあえず屋台を見て回ることに決め、ぎゅうぎゅうに詰まった屋台が並ぶ道へ足を踏み出した。



「へいらっしゃい!うちのたこせんが1番安いよ!」



「んなこたあねえ!うちのたこせんの方が安いぜ兄ちゃん!」



「バカ言ってんじゃないよ!うちのたこせんの方が安いに決まってんだろ!」



「おっとうちを忘れちゃいけないぜ!たこせんならうちが1番だよ!」



「なんでここたこせん激戦区なんだよ!!喋り方も全員一緒でややこしいわ!!」



 三人がたこせん激戦区を抜けると、また新たな屋台が待っていた。



「兄ちゃんどうだい!うちのたこせんが1番安いよ!」



「おいまたたこせんじゃねえか!!他のもん売れ!!」



「具体的にどれくらい安いのだ?我の手持ちは2.415マルクなのだが」



「お前ドイツ出身!?日本円持って来いよ!!」



「えー困ったなあ。私も寛永通宝しか持ってないよ!」



「どこから持って来たんだそんなもん!!」



「でもこれ、日光御用銭だから1枚25万円くらいの価値あるよ?」



「早く質屋行ってきて貰えます!?」



 真美が質屋へ向かい、城田と瞬は祭り会場に取り残された。

 城田が瞬を見つめ、ぽつりと呟く。



「やっと二人っきりになれたね」



「気持ち悪過ぎるだろ!!何するつもりだお前!?」



「今日浴衣着てきたんだ。……どうかな?」



「いつもと同じ上裸コートじゃねえか!!浴衣に謝れ!!」



「あ、見て。あそこにピラニアすくいがあるよ。どっちが多く取れるか勝負しない?」



「取れば取るだけ死に近づくだろ!!そんなおぞましいデートに俺を誘う(いざなう)な!!」



 すると質屋から真美が駆け足で戻って来て、二人に声をかけた。



「二人ともお待たせー!いやーめっちゃ大金が手に入っちゃったよ!どうしy……あ、なんかごめん、邪魔しちゃった?あとは二人でごゆっくり……」



「こんなとこで空気読むな!!ちょっと先輩戻って来て!!助けて!!」



「そんなこと言わないで?我と耳繋ごう?」



「どうやんのか知らねえけど気持ち悪いから嫌だわ!!誰かこいつなんとかして!!」



 暴走気味の城田を連れ、三人は管理人を探しに屋台が並ぶ道へ戻って行った。

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