第54話 昔話の世界 その2
のどかな田舎道を、一人の少女が駆け抜ける。
「ウサギにも亀にも負けてたまるかああああ!!」
「ちょ、先輩!!ウサギも亀も引いてますから!!戻って来て!!」
「ナマケモノにも負けないぞおおお!!!」
「なんでどんどん遅い動物になっていくんですか!!」
叫ぶ瞬の後ろでは、城田が真美を応援している。
「そこだ!行け!差せ!差せ!」
「おい競馬か!!なんて名前の競走馬だよ!!」
「それはもちろん、真美の海だぞ」
「舞の海みたいに言うな!!なんで四股名なんだよ!?」
そのまま真美はぶっちぎりでゴール。ドン引きのウサギと亀がゆっくりと後に続く。
「ふう〜!勝った勝った!これで『ウサギとカメ』の物語は完結させたよね?」
「いや、真美が一着でゴールしてしまったから彼らの物語は持ち越しだ。だが見事な走りだったぞ」
「何してんだ!!せっかくクリアかと思ったのに!」
三人は偶然レース直前のウサギと亀を見つけ、『ウサギとカメ』の物語を完結させようとしていた。
だが真美がぶっちぎりでゴールしてしまったことで、無効になってしまったようだ。
「あちゃー!じゃ、仕方ないね!次の物語を探しに行こー!」
「あんだけ走ってよく元気ですね!?20kmぐらい走ってましたよ!?」
三人はそのまま歩き出し、次の物語を探しに向かった。
しばらく歩いていると、海が見えてくる。
砂浜には亀が一匹と子どもが数人いるようだ。
「お、あれ浦島太郎の始まりのところじゃないですか?」
「だね!早速乙姫を装って近づこう!」
「いきなりクライマックスじゃねえか!!余計なことしないでくださいね!?」
「では我は巨大ロボットの役をやるぞ」
「出てこねえよ!!浦島太郎をロボットバトルものにすな!!」
三人が騒いでいるうちに、釣竿を持った若者とまさかりを持った子ども、それに大きな熊が現れていじめっ子たちを追い払った。
「あれなんか違う話混じってない!?金太郎と熊いるんだけど!?」
「わお!見て見て瞬くん!熊の上に金太郎が乗って、浦島太郎を乗せた亀が金太郎の上に乗ったよ!」
「何してんだ!新手のブレーメンの音楽隊か!!」
「では我がギロを担当しよう」
「ブレーメンの音楽隊にギロ出てこねえよ!!そもそもあれブレーメン行ってねえから!!」
「なら代わりに我が行こうではないか。どこから行けるのだ?東急東横線か?」
「お前ブレーメン横浜にあると思ってんの!?」
結局縦に重なった浦島太郎たちを見送ることにした三人は、一旦休憩を入れることにした。既に時間帯は夜になっている。
「はあ……。この世界ろくな物語がねえな。世界ごとボケてんじゃねえか!」
「だがこのような世界も楽しいであろう?どうだ?いっそこの世界に住み続けるというのは」
「正気か!?嫌だわ絶対!!何が起こるか分かんねえもん!」
「でもでも、楽しそうじゃない?ほら、あそこにいるお猿さんはカニさんとゲートボールしてるよ?」
「老人会か!!柿投げ合えよ!!」
すると三人の前を、斧を持った老人が横切った。竹林に向かっているようだ。
「お!あれかぐや姫の竹取の翁じゃないですか?」
「うむ。かぐや姫の物語が始まるようだな。月に代わってお仕置きする話だったか?」
「かぐや姫はセーラー服着てねえよ!!いいから追いかけるぞ!」
「わーい!私ハーレーで行くー!」
「うるせえからやめて貰えます!?」
竹取の翁の後ろをこっそりとつける三人。
案の定光る竹を見つけた翁は、勢いよく斧を振りかざした。斧は竹に突き刺さり、途中で止まる。翁は衝撃で斧を手放してしまった。
「腕力不足!!あいつどうやって竹取ってたんだよ!?」
「あーもう、仕方ないなあ。手伝うよ!粉に牛乳か豆乳を混ぜ、シェイカーに入れて振る者よ!飲み干して己の力にせよ!プロテイン!!」
真美が呪文を唱えると、翁の腕がみるみる太くなり、黒い毛がびっしりと生える。
「な、なんじゃこれはああ!?」
「あ、お爺さんだいじょーぶ!これで竹取れるからさ、やってみなよ!」
「なんじゃお主は!?どこから現れおった!?」
「いいから。早くやって?」
「はいっ!!」
真美は以前見せた鬼の形相を翁に見せ、翁は大人しく従って再び斧を振りかざした。
するとあっさりと竹が切れ、光る部分から女の子が現れた。
「おおお……!これはなんということだ!そうだ、この子をかぐや姫と名付けて育てよう!」
「少し待て、老いた者よ。その赤子を我に渡せ。さもないとお前の近所にある商店街をショッピングモールに変えるぞ」
「この時代の人にその嫌がらせ意味ねえよ!!地域活性化妨げる段階じゃねえよ!!」
「ははあ!あなた様はまさか神様でしょうか!喜んでお渡しいたしましょう!」
「あっさり渡しやがった!!おいどうすんだよ、いきなり物語壊れちゃったぞ!?」
城田は自信満々で右手を上げる。
「まあ見ていれば分かる。少し揺れるぞ」
するとゴゴゴゴ、と空が揺れ始め、空に浮かんでいた月がどんどん大きくなってきた。
「おいおい!!何してんだお前!!」
「要するにこのかぐや姫が月に帰れば物語は完結するのであろう?では月の方を持って来れば楽ではないか」
「強引過ぎるだろ!!どこで神の力使ってんだよ!?」
「わーい!私月で流しそうめんやってみたかったんだよねー!」
「なんでだよ!!相場餅つきだろ!!」
月はそのまま竹林へ墜落。城田はそこにかぐや姫を乗せ、もう一度右手を上げた。
するとかぐや姫が乗った月はまた空に上って行く。月に乗ったかぐや姫と熊と金太郎と亀と浦島太郎は、そのまま空へと帰って行った。
「おい余計なのがいたぞ!!新手のブレーメンの音楽隊が!!」
「わーい!これでかぐや姫は完結だね!てことはこの世界はー?」
「うむ。クリアだ。最初から我の力を使えば良かったのだな」
「最近クリアまで無理やりが過ぎるぞ!?」
納得いっていない瞬を無視して、城田は白いドアを出現させる。
「よし。次は祭りの世界だ。もう手遅れかもしれぬが……」
「もう後の祭りなの!?」
こうして三人は、昔話の世界を脱出することに成功したのだった。




