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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第53話 昔話の世界 その1

 城田が白いドアを開けると、そこは昔ながらの田舎道。

 茅葺き屋根の家がぽつんぽつんと並び、のどかな緑の風景に一筋の小川が流れている。



「わお!昔って感じ!マンモスはいるかなー?」



「昔過ぎるでしょ!!金太郎でも倒せねえわ!!」



「そうであるな。そこまで昔ではない。真実の口が作られた辺りの時代か?」



「お前だけイタリアでタイムスリップしてる!?」



 三人がいつも通り大騒ぎしていると、目の前の小川に一人の老婆が洗濯物を持って歩いて行くのが見えた。



「見て見て瞬くん!お婆さんが洗濯物持ってるよ!てことはロミオとジュリエットが始まるのかな?」



「なんでロミオが川から流れて来んだよ!!どんな擬音で来るんですか!!」



「そりゃもう、ドンロミオ、ドンロミオって」



「ロミオがマフィアみたいになってる!!」



「真美よ、違うぞ。あの老婆が出て来たということは、今から始まるのは老婆とジュリエットだ」



「老婆をロミオみたいに言うな!!なんだその特殊な百合物語は!?」



「名台詞があるぞ。「ああ老婆、あなたはどうして老婆なの」というものだ」



「歳取ったからだよ!!」



 老婆が川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこ、どんぶらこと大きなカボスが流れて来た。



「おいなんでカボスなんだよ!!嫌だろカボス太郎とか!!」



「そこはカボ島太郎じゃない?」



「なんですかカボ島って!!カボスが亀に乗ってんのシュール過ぎるでしょ!!」



香母酢(カボス)がどうやって乙姫と愛を育むのかが見どころの名作であろう?」



「なんだその特殊な恋愛ストーリーは!?玉手箱から何出て来んだよ!!」



「もちろん酢橘(スダチ)だ」



「似たようなもん出て来た!!なんで柑橘縛りなんだよ!?」



「帰りは亀ではなく椪柑(ポンカン)に乗って帰るぞ」



「柑橘漢字で書くのやめていただける!?」



 老婆はカボスを拾い上げ、そのまま近くの家に持って帰った。

 騒ぎがひと段落したところで、瞬が城田に尋ねる。



「城田、この世界では何をすればいいんだ?」

 


「鋭い質問だ。まるで牛の歯のように鋭いぞ」



「じゃあ鋭くねえじゃねえか!!なんで草食動物で例えた!?」



「この世界は昔話の世界。たくさんの昔話が入り交じっている。その中で、ひとつの物語を完結させることができればこの世界はクリアとなるぞ」



「わお!てことは、あのお婆さんから始まる物語を守ればいいんだね?かっこいい!まるで物干し竿のよう!」



「物干し竿のことかっこいいと思ってたんですか!?」



 盛り上がっている真美に、城田が訂正を加える。



「別にあの老婆の物語を守る必要は無いぞ。この世界では歩いていると様々な物語が始まる。どれか一つでも完結させることができれば良いのだ。桃太郎でも金太郎でも浦島太郎でもイリアスでもオデュッセイアでも、何か一つ完結させれば良い」



「最後二つだけ神話じゃなかった!?」



「では早速、完結させる物語を探しに行くぞ。どの物語に興味があるのだ?」



「さっきのカボスが気になって仕方ねえわ!!あの話聞いたことないけど!?」



 カボス太郎の物語を見届けたい瞬に対し、城田と真美はあまり乗り気ではないようだ。



「うーん、でもカボス太郎って定番じゃん?瞬くんも知ってるでしょ?」



「知らないから興味あるんですよ!!どんな話なんですか!?」



「仕方ない。真美よ、話してやれ」



「分かった!2.5倍速でいい?」



「現代っ子か!!普通のスピードでお願いします!!」



「りょーかい!じゃあ話すね!」



 真美は一度深呼吸をし、『カボス太郎』の物語を語り始めた。



「Once upon a time……」



「とりあえず日本語でお願いできます!?」



「ええ?仕方ないなあ。199X年、地球は核の炎に包まれた」



「世紀末か!!そんな不穏な始まり方なんですか!?」



「ああごめん間違えちゃった!改めて最初からね!」



 真美はもう一度深呼吸をし、改めて『カボス太郎』を語り始めた。



「むかーしむかーしあるところに、お爺さんとお婆さんと桃太郎が住んでいました」



「ああ桃太郎のその後の話なのな!?ややこしいなあ!!」



「ある日お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に、桃太郎は新台を打ちに出かけました」



「桃太郎が鬼倒した後パチカスになってる!!」



「お婆さんが川で洗濯をしていると、川上からべろんちょべろんちょと大きなカボスが流れて来ました」



「嫌な擬音!!気持ち悪い流れ方だな!!」



「ああまたこのパターンねと思ったお婆さんは、カボスを拾って家へ持って帰りました」



「おい婆さん慣れんな!!二回目だけども!!」



「お婆さんがお爺さんと一緒にカボスを切ると、中から元気なカボスが出てきました」



「なんでカボスの中にカボス入ってんだよ!!マトリョーシカか!!」



「そして二人はカボスにカボス太郎という名前を付け、いつまでも幸せに暮らしました。一方桃太郎は借金を背負って家を追い出され、一発逆転を狙って更なるギャンブルに手を出すことになったのでした」



「桃太郎がカ〇ジみたいなその後送ってる!!」



 語り終えた真美は、満足そうに瞬に話しかける。



「どうだった?面白かった?」



「めっちゃ嫌な話でしたね。とりあえずカボス太郎はやめときましょう」



「うむ。では他の物語を探しに行くぞ。LOOPはないか?」



「おい楽しようとすんな!!」



 三人は完結させる物語を探すために歩き出した。

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