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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第46話 リモコンの世界 その2

「えーっと、じゃあまずはこのリモコンから押してみよーよ!」



 真美が手に取ったのは、白い本体に幾つかボタンが付いたオーソドックスなリモコン。

 だがボタンには何の説明も書いておらず、押したら何が起きるのかは予想できない。



「ほんとに大丈夫なんですよね?これ押したらとんでもないことが起こるとか無いですよね?」



「えー、押してみないと分かんないよ。もしかしたら突然缶が付いたオープンカーに乗せられてウエディングドレス着てるかもだし?」



「結婚式か!!イメージがやけに具体的だな!?」



「うむ。もしかするとブーケがスタンドを超えて外に飛んで行くかもしれぬな」



「ブーケトスの場外ホームラン見たことねえよ!!なんでこれ押したら結婚式になる流れなの!?」



「もー、いいから押してみよーよ!ちなみにだけど、瞬くんは何が起こって欲しい?」



「下半身がウミウシになるのだけは避けたいですね」



「瞬くんの一番嫌なことってそれなの!?」



 珍しく真美のツッコミが入ったところで、とりあえずボタンを押してみることにした三人。緊張の面持ちで真美がリモコンを握る。



「じゃあいくよ?えい!」



 真美がボタンを押すと、目の前のモニターに映画のような画面が映し出される。

 内容は、少年とカニの友情物語だ。



「おい『EIGORO』じゃねえか!!どんだけ引っ張るんだこのボケ!!」



「瞬よ、よく見てみるのだ。これは『EIGORO 3』の方だぞ」



「どうでもいいわ!!なんで『EIGORO 2』ヒットして続編作られてんだよ!!」



「なんか楽しくなってきちゃった!私いっぱい押してみるね!」



「え!?ちょっと先輩大丈夫なんですか!?」



「まあまあ、ものは試しだよ!いっくよー!」



 真美はモグラ叩きのようにそこら中のリモコンのボタンを押していく。

 すると次々に空間に変化が起き始めた。



「わお!鮮魚コーナーが出て来たよ!」



「『EIGORO』に引っ張られ過ぎだろ!!」



「瞬よ。『EIGORO 3』だ」



「うるせえよ!!どっちでもいいわ!!」



「瞬くん!米袋もいっぱい出て来たよ!」



「え、何寿司作ろうとしてる!?」



「いや、そこは海鮮丼ではないか?」



「どっちだっていいわ!!材料一緒だから似たようなもんだろ!!」



「見て見て!レジも出て来たよ!」



「寿司じゃなくて寿司屋作ろうとしてた!!なんでこのリモコン全部寿司関連のボタンなの!?」



「ああ!城田さんの頭が貝柱に!」



「何やってんだ!!体白いからホタテ握りみたいになってんじゃねえか!!……なってねえわ!!」



「大変だ!私の服が漁師風キレイめカジュアルコーデに!」



「絵面がひとつも想像できねえ!!漁師にキレイめカジュアル要素無いだろ!!」



「ああ!瞬くんの下半身がウミウシに!」



「この野郎これまでの会話全部振りに使いやがったな!?だからずっと海関係だったのかよ!!」



 ここで真美は一旦ボタンを押すのをやめた。

 肩で息をしながら、瞬がモニターにもたれかかる。



「はあ……はあ……。なんだここのリモコン!?全部ふざけてんな!?」



「全く同感だ。ふざけているにも程があるだろう。我が以前出した気持ちリモコン、通称「キモコン」を見習って欲しいものだ」



「お前のが一番ふざけてるわ!!多分ここのリモコンはお前を見習ってると思うぞ!?」



 城田と瞬が気の抜けたやり取りを披露する中、真美は腕を組んで眉間に皺を寄せる。真剣に何かを考えているようだ。



「先輩どうしたんです?深刻そうな顔して」



「いや、志望大学どうしようかなって」



「なんで今それ考えたんですか!?」



「だって私高校3年生だよ?大学のこと考えないと!元気にしてるかなーそろそろおばあちゃん家で会いたいなーって」



「大学のこと従兄弟だと思ってます!?」



「我はコンビニのことを大学だと思っていたぞ」



「お前最終学歴コンビニなの!?何の学問やったんだよ!!」



「冬の時期限定だが、味噌田楽だな」



「やかましいわ!!おでんじゃねえか!!」



 どのリモコンを押しても海関係の何かが出て来てしまう。そんな危機的状況に陥った三人は、その場に座り込んでしまった。

 ああいや訂正しよう。下半身がウミウシになっている瞬は座ることができていない。



「細かいわ!!ほっとけ俺のウミウシは!!」



「瞬くん、地の文にツッコミ入れてる場合じゃないよ!この世界から出られなくなるんだよ!」



「そうですけど……。どれが正解のリモコンなのか分からないじゃないですか」



「うむ。我から提案だ。我にはこのモニター自身がこの世界の管理人に思える。そこでだ。キモコンをこのモニターに使ってみないか?」



「なるほど!モニターを「こいつらを出してやろう」って気持ちにさせちゃうってことだよね?ナイスアイデア!ところでお腹空かない?蕎麦食べよーよ」



「呑気か!!いいからさっさとやりますよ!!」



 城田が右手を上げると、気持ちリモコン、通称「キモコン」が出現した。



「では、いくぞ。目ん玉かっぽじってよく見ておけ」



「それ耳で言うんだよ!!目抉ってどうすんだ!?」



 城田はキモコンをモニターに向け、ボタンを押した。

 するとモニターの表示が代わり、文字が浮かび上がってくる。



『ハロー!僕ちんはモニター!みんな元気かなー?ここから出たい?出たいよね?でも出さなーい……と見せかけて出しちゃう!またねー!グッバーイ!サワディーカー!』



「なんで最後タイ語!?」



「やったー!許可貰ったからこれでこの世界はクリアだね!ところでお腹空かない?うどん食べよーよ」



「頭麺類に支配されてます!?」



「鮮やかな解決法だったな。では次に行くぞ。次の世界は不動産屋の世界だ」



「もうなんでもありだな!?」



 こうして三人は、リモコンの世界を半ば強引に脱出したのだった。

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