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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第40話 ハイキングの世界 その2

 緩やかに曲がりくねったのどかな山道に、真美の楽しげな歌声が響く。


「むかしむかし浦島は〜♪助けた亀に連れられて〜♪」



「先輩それ海の歌ですよ!!山の歌歌って貰えます!?」



「防衛省へ〜行ったとさ〜♪」



「どこ行ってんだ!!亀いじめてた子どもは国の脅威じゃないですよ!?」



「え?あの子どもって第一次世界大戦のオスマン帝国の風刺じゃないの?」



「そんなえぐい浦島太郎聞いたこと無いですよ!?」



 そんなやり取りを繰り広げる二人の隣を、城田が飛び跳ねながら進む。



「風船に入っていると歩けないから辛いぞ」



「まだ入ってたのかよ!!早く出て来い!!」



「だがこの風船できっといつか自由に空も飛べるはずと信じているぞ」



「ス〇ッツか!!いいから山登れよ!!」



「君を忘れないで曲がりくねった道を行くぞ」



「歌が違えよ!!」



 少し後ろを歩く耶麻岡は、先ほどまでと変わらずにマイペースに登っている。

 なだらかな坂道が、彼女のマイペースさをそのまま表しているようだ。



「皆さん〜、そろそろ休憩にしましょ〜!私がお弁当を作って来ましたよ!」



「わーい!何が入ってるんだろう?クリームシチューかな?」



「誰がこんな麗らかな日に山でクリームシチュー食べるんですか!!」



「真美よ、クリームシチューなわけがなかろう。我の予想では、ビーフシチューだ」



「誤差だろ!!なんでさっきからシチュー縛りなの!?」



「皆さん違いますよ〜!私が持って来たのはクラムチャウダーです!」



「なんで汁っぽいもんばっかりなんだよ!!お前もボケんの!?」



 木の切り株に腰掛けた城田、瞬、真美の三人は、耶麻岡がクラムチャウダーを注ぐのを見守っている。



「何してんだろ俺たち……。これじゃ炊き出しじゃねえか!」



「だがこういうのも良いだろう。皆で同じ料理を分け合い、取り合い、投げつけ合う。こうして友情は育まれるのだ」



「前半で良い話を期待した俺が馬鹿だったわ!!」



「私は炊き出しの手伝いでアヒージョを出したことがあってね?」



「何してんだ!!熱すぎてすぐ食えねえだろ!!」



「我はいつもアヒージョをストローで吸っているぞ」



「それ吸ってるの油だけだろ!!発想がデブ過ぎるわ!!」



「いや、ちゃんと海老も吸っているぞ」



「タピオカのストロー使ってらっしゃる!?」



 どんどん関係の無い方へ話が逸れていく三人を無視して、耶麻岡がクラムチャウダーを注ぎ終わった。



「さあ皆さん〜!できましたよ〜!一人ずつ取りに来てくださいね〜!」



「やったー!誰から行く?じゃんけんで決める?」



「じゃんけんだと先輩が勝っちゃうでしょ。普通に右から順番で良いんじゃないですか?」



「えー、面白くないー!なんかゲームしようよゲーム!」



「では我が考案した末尾取りゲームはどうだ?」



「なんだそれ?」



「一人ずつ言葉を言っていくのだが、前の人が言った言葉の最後の文字から始めないといけないというルールだ」



「ただのしりとりじゃねえか!!まあいいよ別にそれで」



 どうでも良くなってきた瞬は、適当に進めようとする。



「よーし!じゃあ誰からしりとりを始めるかを鬼ごっこで決めよー!で、最初の鬼を誰がやるかをクリケットで決めることにしよーよ!」



「なんでどんどん長くなっていくんですか!!クリケットがどのくらいかかるのかピンと来ねえよ!!」



「クリケットの試合は長いと日をまたぐぞ」



「長すぎるわ!!終わるまでにもう3食ぐらい要るだろ!!」



「そこは4食じゃない?」



「なんで夜食食ってんだ!!受験生か!!」



「皆さん〜?冷めますよ〜?」



 もう面倒くさくなった耶麻岡が、三人の元へクラムチャウダーを運んで来る。

 三人が一斉にそれを口に含むと、三人の目の前が暗くなり、意識を失ってしまった。



「ふう〜、やっと食べてくれましたね〜。さ、この人たちをあの方の元へ連れて行きましょ〜」



「どこへ連れて行くと言うのだ?カラオケか?」



「なっ!なんで起きているんですか!ていうかカラオケなんか行きませんよ〜!ナンパじゃないんですから!」



「我は神であるぞ。睡眠薬など効かぬ。えー、カラオケ行こうよー。我の十八番のオペラ座の怪人を聞かせてやるぞ」



「くっ……!まさかこんな適当なのが神だなんて……!カラオケでオペラ歌う人見たこと無いですよ〜!?」



 何故かナンパを始めた城田の前に、灰色の大きな影が現れた。



「何してるんだよ耶麻岡!僕もう待ちくたびれちゃったよ!」



「そ、その声は……我が王!」



「王だと?その後に将は付かないのか?我は餃子が食べたくてな」



「付かないですよ〜!!餃子食べないでください〜!!このお方は私の主君でありこの世界の支配者、灰キング様です〜!」



 膝まづく耶麻岡を見下ろし、灰キングはふんぞり返る。



「そうだぞ!僕がこの世界の王様だ!偉いんだぞ!」



「偉いだと?更生した不良よりも偉いというのか?」



「よく分かんないけどそれあんまり偉くない気がするぞ!」



 城田は少し考えた後、右手に力を入れながら言った。



「なるほど。お前がこの世界で一番偉いのならば、お前を倒せばこの世界から出られるというわけだな?」



「そうだぞ!やれるもんならやってみろだぞ!」



「ふむ。ではやってみようではないか」



 城田が右手を上げると、ゴゴゴゴと空が揺れ出した。



「な!?何をしたんだぞ!?」



「何をと言われても、その辺にあった惑星を動かして衝突させようとしているだけだ。お前にこれがどうにかできるか?」



「な、なあ〜!?お、お前、何者だぞ!?なんでそんなことができるんだぞ!?」



「我は城田保和糸。白の世界の神である。この世界を破壊されたくなければ、大人しく降伏しろ」



「わ、分かったぞ!!降伏するからそれを止めるんだぞ!!」



「うむ。素直で助かるな。まるで力に怯えているようだな」



「まさしくその通りなんだぞ!?」



 少しして、瞬と真美が目を覚ました。



「うーん、あれ、なんで俺寝てんだ?それに耶麻岡は?」



「いなくなっちゃったね……。先に次の世界で待ってるとか?」



「なんであいつ着いてくるんですか!!」



 いつも通りの二人に、城田が声をかけた。



「目覚めたか。この世界はクリアだ。次の世界へ行くぞ」



「え?でもまだ山登ってないよ?」



「うむ。我が山を削ってここが頂上にしておいた。あとついでにボウリング場も作ったがやるか?」



「何してんだ!!おい良いのかこんな無理やりクリアして?」



「大丈夫だ。これはギャグ小説だからな」



 そう言う城田の口角は、得意気に上がっていた。



「さて、次の世界は電車の世界だ。どんな新幹線があるか楽しみだな」



「ターミナル駅前提なの!?久しぶりに出てきたな新幹線!!」



 こうして三人は、ハイキングの世界を脱出することに成功したのだった。

城田頑張ったよ!!感想で褒めてあげて!!

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