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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第39話 ハイキングの世界 その1

 城田がいつものように白いドアを開ける。  

 ドアの向こうにはなだらかな山々が幾つも並び、暖かい陽の光が照らす明るい緑の風景が一面に広がっていた。



「わお!めっちゃ緑だね!掃除してないプールくらい緑!」



「嫌な例え!!もっと綺麗なもんで言ってくださいよ!!」



「やはり山は良いものだ。自然に触れると心が癒されるぞ。まるでカンフー映画のようだ」



「カンフー映画を森林浴みたいに言うな!!どのシーンで癒されてんだ!?」



「それはもちろん、ヌンチャクを振り回してマッサージをするシーンだぞ」



「戦闘シーンだろそれ!!お前あれマッサージだと思ってたの!?」



 のどかな風景に相対するかのように騒ぎ倒す三人。そんな三人の元へ、ナイロンのハットを被った軽装の女が歩み寄って来た。



「こんにちは〜!ハイキングの世界へようこそ!私はここの管理人、耶麻岡(やまおか)です」



「山岡じゃねえのかよ!!」



 瞬のツッコミを気にも止めず、耶麻岡は話を続ける。



「早速ですが、皆さんにはハイキングをして貰います〜!皆さんはハイキングと言えば何を思い浮かべますか〜?せーの、山!」



「川!」



「合言葉か!!え、先輩忍者の里出身ですか!?」



「ううん、ニューヨークのストリート育ちだよ?」



「じゃあただのゴロツキじゃねえか!!」



「我は練馬育ちだが吉祥寺育ちと言っているぞ」



「どっちでもいいわ!ていうかお前東京都民なの!?」



 三人の会話が聞こえていないかのように態度が変わらない耶麻岡は、引き続きハイキングの世界について説明を続ける。



「この世界での目的は、自然に触れることです!皆さんは普段自然と触れ合っていますか〜?」



「もちろん!木にぶら下がって1日が終わることもあるよ!」



「ナマケモノか!!もっと人生大事にしてくださいよ!!」



「我はいくつか森を作ったぞ」



「何してんだ!!神の力そんなことに使うなよ!!」



「いや、ちゃんと植林して作ったぞ」



「神の力使えよ!!」



「ちなみに、植えたのはアオダモだ」



「プロ野球選手か!!バットの材料じゃねえか!!」



「良いツッコミだ。草超えて森だな」



「やかましいわ!!上手いこと言うな!!」



 もう耶麻岡は三人を無視し、三人は耶麻岡を無視しているというすれ違いの状況が起こっている。

 それでもマイペースな耶麻岡は、ハイキングの世界について説明を続けた。



「これから皆さんに登って貰うのは、あそこに見える少し高めの山です〜!あの山を登り切れば、この世界はクリアになります!」



「なるほど!じゃあ早速登っちゃおう!城田さん、ヘリ出して!」



「堂々と不正すんな!!ちゃんと自然と触れ合いましょうよ!!」



「そうだね!ヘリなんか使ったら自然と触れ合う機会が減り過ぎるもんね!ヘリだけに!」



「やかましいわ!!」



「では今からスケボーを出すぞ。人数分で良いか?」



「なんで上り坂に1番向いてない乗り物選んだ!?今回いつにも増して話進まねえな!?」



 ここまでグダグダのやり取りを披露されても全くペースが変わらない耶麻岡は、ハイキングの準備について話し出した。



「ハイキングでは服装が大事になって来ます〜!動きやすい服装と、日除けに帽子を被るのが好ましいですね〜!」



「なるほど!じゃあ早速ハチマキ巻いてハッピに着替えよう!」



「話聞いてました!?神輿担ぐ服装じゃないですか!!」



「ハッピの背中には「示」の文字が書いてあるよ!」



「「祭」じゃねえのかよ!!ちょっと足りねえな!?」



「では我はこの大きな風船に着替えようぞ」



「お前風船のこと服だと思ってんの!?」



「皆さん個性的ですね〜!でもハイキングでは自分のペースが大事ですから、そのままでも良いと思います〜!」



「良いわけねえだろ!!風船が山登ってたら二度見するわ!!」



 瞬の大声が響くが、のどかでだだっ広いこの世界では小さなもの。そよ風が吹き、鳥たちが歌う。優しく照らす太陽に、色とりどりの花たちがその顔を向ける。

 時折小鹿が顔を出し、その後ろにいるブラキオサウルスも三人を歓迎しているようだ。



「おい今恐竜がいたぞ!?もしかしてこの世界平和じゃないな!?」



「何を言ってるんですか〜?この世界はと〜っても平和ですよ〜!大統領の独裁が目に余るだけで!」



「政治的にも平和じゃねえのかよ!!なんだこの世界!?」



「決して、山を登ったらUFOに連れ去られるとかそんなことはありませんからね〜」



「ある言い方だろ!!むちゃくちゃだなハイキングの世界!!」



 ここは平和な平和なハイキングの世界。アリたちが今日のご飯を運び、小鹿たちはヴェロキラプトルのご飯になっている。のどかな風景だ。



「おい鹿食われてたぞ!!どこがのどかなんだよ!?」



「見て見て瞬くん!私のポニーテールを前に持ってきたら〜?ちょんまげ!」



「何してんだ!!もう先輩が1番平和ですよ!!」



「瞬よ。今から人文字で「平和」を作りたいのだが、お前は「和」の口の部分をやってくれるか?」



「無理やり平和作ろうとすんな!!あと1人で口を作るのは無理だろ!!」



「さあ皆さん?そろそろ出発しましょ〜!」



「本当に大丈夫なんだろうな!?」



 こうして平和な世界でのハイキングが始まった。

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