第34話 トレジャーハントの世界 その2
「うわあああああ!!!」
遺跡の中で、三人は転がってくる大岩に追いかけられていた。
「なんで!?なんでこうなった!?」
「いきなりこんなシーンから始まっても状況が分からないであろう。ではここから少し前の回想に入るぞ。我が花見の世界でドアを開けるところからで良いか?」
「前話の冒頭じゃねえか!!そこからやったら第33話をまるごとやることになるぞ!?」
「じゃあじゃあ、私がプリンセス的な人と恋に落ちるところからは?」
「なんそこまで戻るんですか!!レーシングゲームの世界の話でしょそれ!!」
では回想に入ろう。何も無い白の世界に、一人の神が生まれた。上位の神から名を授けられたその神は、白の世界を支配する存在として君臨した。その名を「城田保和糸」という。
新米神の彼は、何も無い白の世界を開拓することなく、そのままにしておくことを選んだ。
彼曰く、「あなた色に私は染まります」というメッセージが込められているそうだ。
城田は
「待て待て!!城田が生まれたとこからやるな!!あとなんだそのウエディングドレスみたいなメッセージは!?」
「我が白い理由だ。納得いったであろう?」
「いかねえだろ!!お前ウエディングドレスと同じカテゴリなの!?」
「いいなー!私も結婚式に憧れがあってね、サリーを着て宮殿を歩きたいんだー!」
「なんでインドで挙げる前提なんですか!?」
迫り来る大岩から走って逃げながらも、緊張感の無いやり取りを繰り広げる三人。何故こうなったのか。
ではそろそろ、何があったのかという回想に入ろう。
入口が閉ざされた遺跡の中で大相撲のプロジェクションマッピングを頼りに歩いていた三人は、行き止まりに当たってしまった。
「あれ……。これ以上進めないな」
「うむ。どうやら行き止まりのようだな。我も今人生に行き詰まっていてな」
「今人生相談やめろ!?」
「私も魔法の研究に行き詰まっててね、クリスマスを7月に変える魔法なんだけど」
「余計なことしないで貰えます!?」
いつものペースで話していた三人だが、このままではどうしようも無い。一旦引き返すか、壁を壊して進むかという議論になった。
「この壁分厚そうだし、一旦戻るのも良くない?相撲を見られる時間も増えるし」
「だから相撲は見なくても良いんですよ!!でも引き返すって言っても、ここまで一本道でしたよ?他に隠し通路があるとかなら良いんですけど……」
「ここはこのまま進んだ方が良かろう。壁を壊して進むのが賢明だ。尺的に」
「こらこら尺とか言うな!!話が進んでないのはお前らのせいだからな!?」
揉めていた三人だが、一旦引き返すのも面倒だということで、城田の案で行くことにしたようだ。
「でも壁を壊すってなると私か城田さんが何か出さなきゃだよね?またゴリラの腕にする?」
「ちょっとネタ擦り過ぎなんでやめときましょう。それにゴリラの力でも、この分厚い壁をぶち敗れるかどうか……」
「なら我の力で大岩を出そう。下り坂になっているここなら、丸い大岩を転がせば壁を壊せるやもしれぬ」
「なるほど!それいいね!城田さん、ついでに丸餅も出して貰えるかな?」
「まだ食い足りねえのかよ!!」
「では大岩と丸餅を出そう。我々が轢かれないように、後ろに下がってからにするぞ」
「丸餅は出すのな……」
三人は壁からかなり遠ざかり、真美は城田に出して貰った丸餅にかぶりつく。
そんな真美を横目に、城田は右手を上げた。
すると球体の大岩が出現し、ゴロゴロと坂を下っていく。下り坂でどんどん勢いを増していく大岩は、あっという間に壁に到達。勢いそのままに、分厚い壁をぶち破った。
「やったー!大成功!城田さん、ナイスだね!」
「うむ。我にかかればこのくらい晩飯後だ」
「朝飯前じゃなくて!?一日終わってんじゃねえか!!」
ツッコミを入れながらも、壁を突破できたことに内心ホッとする瞬。
だが次の瞬間、またゴロゴロと大きな音が遺跡の中に響き渡る。
「ん?なんだ?」
「すまぬ。大岩をもう一つ出してしまった」
「何してくれてんだてめえ!!おい、てことはこれ……」
「わーい!大岩が追っかけて来るよ!逃げろー!!」
「うわあああああ!!!」
これが事の顛末である。ということで現在、三人は大岩から逃げながら走っているところだ。
「おいこの岩トラップでもなんでもねえのかよ!!城田この野郎!!」
「過ぎたことを言っても仕方ないであろう。お前たちには明るい未来が待っている。その先を見据えて進むのだ。この先大人になっていくに連れて辛いことも増えていくだろう。だがお前たちなら乗り越えられる。我はそう信じているぞ」
「卒業式の担任か!!んな呑気なこと言ってる場合じゃねえんだよ!!」
「ぐすっ……し、城田さん……私、頑張るよ!!どんなに辛いことがあっても、城田さんの言葉を思い出して乗り越える!」
「なんで感動できるんですか!?」
「待て、瞬に真美よ。あそこに横道がある。一旦あそこに避難するのだ。ライオンに追われるシマウマのように」
「最後の例え要る!?」
横道に逃れた三人は、目の前を物凄いスピードで通り過ぎていく大岩を見てホッと息をつく。
「ふう……なんとか大岩からは逃れたな」
「ちょっと瞬くん!見てあれ!!」
「なんですか?また相撲とかですk……ええ!?」
瞬がくるりと振り返ると、そこにはキラキラと輝く何かがあった。相撲のプロジェクションマッピングに反射して、肌色に輝いている。
「これは……もしかして金銀財宝!?」
「わーい!これがこの遺跡の宝物なんだね!早速ゲットしよー!」
三人はキラキラと輝くものに向かって走って行った。
「おお、丸くて半透明で……宝石とかですかね?」
「かなー?でもなんか柔らかそうじゃない?」
「うむ。これは宝石ではない。わらび餅だ」
「おいわらび餅かよ!!え、この世界の宝物ってわらび餅なの!?」
「外がきな粉砂漠だからな。当然のことだ。早速外に持って行って食べようではないか」
「外に出るって言っても、入口が塞がれてるだろ?どうやって出るんだよ」
「我の力で外に出ることぐらいはできるぞ。我神ぞ?うん?」
「お前それできるなら岩に追っかけられてた時にやれよ!!」
わらび餅を手にした三人は、城田の力で遺跡の外まで戻って来た。
「さて、次は海の世界だ。ドアを開けるとビーチに出るはずだから、今度こそ水着美女を餅が喉に詰まった!!」
「詰まらせてんなよ!!神なのに!?」
「海の世界かあ、フナムシが楽しみだね!」
「そこ楽しみな人いないと思いますよ!?」
こうして三人は、トレジャーハントの世界を後にした。




