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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第33話 トレジャーハントの世界 その1

 城田がドアを開けると、隙間から熱風が流れ込む。

 瞬と真美は思わず顔を手で庇い、ドアの先を見た。



「あれは……砂漠か?」



「うむ。概ね合っているぞ。だがあれは砂ではない。きな粉だ」



「なんでだよ!!どんだけ餅あっても食いきれねえだろ!!」



「わーい!私きな粉大好き!きな粉に塩振って食べると美味しいんだよねー!」



「きな粉メイン!?そいつに肉のポジション張るポテンシャル無いですって!!」



「我はきな粉に薄力粉をかけて食べるぞ」



「粉に粉かけんな!!めちゃくちゃむせるだろそれ!?」



 いつも通りのテンションを保つ三人だが、なかなかドアをくぐれずにいた。


 それもそうだろう。平和な花見の世界から一転、灼熱の砂漠に放り出されるのだから。

 覚悟が決められないのは、仕方の無いことだ。



「いやそんな理由じゃねえよ!?この砂漠がきな粉でできてることにツッコんでんだよ!!」



「でもでも、暑いことには変わりないんじゃない?ほら、さっきも熱風が爽やかに吹き抜けて行ったし!」



「熱風はそんなテニス部のエースみたいに通らないですよ!?」



「真美よ、あの熱風は餅を焼いていたストーブが近くにあったから吹いたものだ。このきな粉砂漠が暑いわけではないぞ」



「ああきな粉食う為に餅焼いてたのか、納得……しねえよ!!誰がこんなとこで餅焼いてんだ!!」



「あ、瞬くんそれ私!きな粉の匂いがしたから反射的に魔法でお餅とストーブ出しちゃった」



「じゃあ熱風の原因先輩じゃないですか!!なんで砂漠が暑い根拠として挙げたんだよ!?」



 やいやいと騒ぎながら、三人はドアをくぐった。程よい気温のきな粉砂漠には、ところどころに黒蜜のオアシスが見える。



「いまいち締まりがねえなあ……。ま、いいや。灼熱の砂漠に放り出されるわけじゃないし」



 瞬は無理やり自分を納得させ、きな粉砂漠を進んで行く。

 少し歩いていると、城田が立ち止まって前方を指差した。



「今回の目的地はあそこだ」



 城田の指差した先には、城のような大きな建物が見える。



「あれは遺跡か……?なるほど、あそこでトレジャーハントするんだな!」



「その通りだ。だが遺跡の中には落とし穴や居酒屋のキャッチなど様々なトラップがある。気をつけるのだぞ」



「キャッチに引っかかるタイプの人!?」



「私は裁判傍聴のキャッチに引っかかったことがあってね?」



「何に引っかかってんだ!!どこでそんなバイト募集してるか気になって仕方ないわ!!」



 緊張感が無いまま、三人は遺跡の入口に辿り着いた。


 本来は扉があったであろう場所は四角く穴が空いており、暗い遺跡の中へ三人を誘うように風が吹いていた。



「なんか不気味だな……。不穏な風も吹いてるし。ん?でもなんか風の音が変だな。なんか吐き出されてるような音が……」



「ああごめん、それ私のゲップ!」



「何してんだ汚ねえな!!なんでそんな勢いでゲップ出るんですか!!」



「いやーさっき焼いたお餅食べ過ぎちゃってさ。このきな粉美味しいねー!」



「まだ食ってたのかよ!!いい加減食うのやめろ!!」



「我も白い息を吐いた方が良いか?」



「なんでお前だけ冬の設定なの!?」



 相変わらず緊張感の無い三人は、遂に遺跡の中へと足を踏み入れた。


 暗い遺跡の中は石造りになっており、ひんやりとした空気が三人を包み込む。



「わお!なんか探検って感じだね!熊とか出ないかなー!」



「出てたまるか!!もうちょっと命大事にできます!?」



「我はこういう時に神が出て来てくれればと思うぞ」



「お前神じゃなかった!?」



 大きな瞬の声が遺跡の中にこだまする。その声は壁に反響し、より大きくなっているようだ。

 瞬の大声が合図だったかのように遺跡が振動し、今まで入口から入って来ていた光が突然無くなった。



「え!?何が起こってんだ!?」



「どうやら遺跡の入口が崩れ落ちてしまったようだ。もう出られないようだな」



「わお!これぞ探検って感じ!でも暗いよね。こんな時の為に用意してた魔法があるんだ〜」



 真美はうきうきで杖を取り出し、高く掲げた。



「眩く輝く光の精霊よ、我が手に宿り、暗闇に道を示せ!ライトボール!」



 すると真美の杖の先から光が放たれ、壁に四角く画面のようなものが現れた。



「真美先輩……?これ何の呪文ですか?」



「何って、大相撲のプロジェクションマッピングだよ!これで暗闇でも相撲が見られるよ!」



「呑気か!!今相撲見てる場合じゃないでしょ!!」



「あ〜、相撲を見てると目が冴えてくるね!頭もシャキッとする感じ!」



「相撲をエナジードリンクみたいに言うな!!」



 真美の魔法は的外れだが、一応明かりとなって道を照らしてくれる。これで三人は、前に進むことができるようになった。



「これで進めるから良いじゃん!相撲も見られて一石二鳥だよ!」



「相撲は見なくても良いんですけどね!?」



「うむ。真美よ、お手柄だぞ。ところでこんな時になんだが、我が消えかかっているのだ。白い食べものを恵んではくれぬか?」



「お前はほんと役に立たねえ神だな!?今食べものなんか持って……あ!先輩、餅焼いてましたよね?」



「焼いたよ!草餅!」



「なんで緑なんだよ!!ノーマルの餅焼いてくださいよ!!ああもうどうすんだ……」



 そんな時、真美がスカートのポケットを探り出す。数秒ゴソゴソとしていた真美だが、何かを見つけたようだ。



「瞬くん!私きびだんご持ってたよ!お花見の世界で使ったやつ!」



「おお!!早く城田にあげてください!!」



「おっけー!さあ城田さん、食べて!」



 真美は城田にきびだんごを手渡し、城田は急いでそのきびだんごを飲み込んだ。

 すると半透明になっていた城田の体は、元の白さを取り戻していく。



「ふう〜、良かったね城田さん!」



「うむ。助かったぞ。今飲み込んだ団子は我が胃袋でゆったりと暮らすであろう」



「お前の胃袋1LDK!?」



 城田も無事元に戻り、三人は更に遺跡の奥へと進んで行った。

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