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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第28話 運動会の世界 その1

 城田がドアを開けると、がやがやとした人の声とお馴染みの音楽が聞こえてくる。

 ドアの先には、グラウンドにトラックが描かれ、紅白の帽子に体操服を着た人々が集まっている光景が広がっていた。



「運動会の世界かー!私割と運動会は好きだったよ!」



「ああ、先輩結構足速いですもんね。リレーとかが楽しかったんですか?」



「ううん、人体の構造を観察し放題だからだよ!」



「相変わらず発想が怖ぇな!!」



「我は玉入れの玉に一つ一つサインを書いていたぞ」



「何してんだ!!足引っ張りまくりじゃねえか!!」



 いつも通り騒ぐ三人の元に、ジャージを着た壮年の男が近づいて来た。その恰幅はかなり良く、薄くなった頭がいかにも「校長」という感じだ。



「皆さん、運動会の世界へようこそ。私はこの世界の管理人、甲兆(こうちょう)です」

 


「校長じゃねえのかよ!!」



「皆さんにはこの世界で白組に入り、三つの競技に参加して貰います。最終的に総合得点が紅組を上回れば、この世界から出ることができます」



 今までの管理人とは違い、甲兆はさらっとこの世界の説明をしてくれる。




「なるほどね!じゃあ私は早速イモリ食い競走に参加して来るよ!」



「ねえよそんなの!!どの地域の運動会だよ!!」



「我はグリーンカレーの大食い選手権に参加したいぞ」



「もう運動してねえじゃねえか!!」



「さて皆さん、参加する競技を決めてください。ここに今日の競技順が載っているので、この中から選んでください」



 柔らかい表情ながら淡々とした口調の甲兆は、三人に競技順が載った紙を渡す。



「あれ?イモリ食い競走が無いよ?ちょっと甲兆さん!リスト作り直して!」



「だからねえって!!食うの躊躇して終わらねえだろそんなの!!」



「我が楽しみにしていた木星転がしも無いぞ」



「転がすなそんなもん!!地球よりでかいのやめてくれる!?」



「決まらないようでしたら、最初の開会宣言に参加しますか?私一人では寂しくて……」



「しっかりしろ!?あんなもん何人もいたら意味不明だろ!!ていうかお前もボケんの!?」



 瞬にツッコミを入れて貰い、甲兆は満足そうだ。

 城田と真美にツッコんでいるのを見て、自分もツッコんで欲しくなったのだろう。

 その気持ちは分からなくもない。私もたまに彼にツッコミを入れて欲しいことがある。例えば



「長ぇよ!!なんでお前の心情描写が一番詳細なんだよ!!」



 え?そりゃ地の文だから。いくらでもこの分量は調整できるよ?なんなら今から羽毛布団の良さについて1000字分語ろうか?



「絶対やめろ!?誰も興味無ぇだろ!!」



 じゃあ目玉焼きは何で食べるかについて2000字分の脳内会議を……



「どうでもいいわ!!お前は塩で食ってろ!!」



「瞬くん?そろそろ本筋に戻るよ?」



「だって先輩、地の文が一番ふざけるんですもん。俺がここで何もしなかったら、本筋に戻ることすら叶わないですよ?」



「確かにそうだけどそろそろ長いよ!ほら、本筋はこっちだよ!あ、ちなみに私は目玉焼きを角砂糖で食べる人だよ!」



「コーヒーか!!味覚特殊過ぎません!?」



 なるほど、その手があったか……。ではもっと奇抜な発想を



「地の文さん?そろそろ私怒るからね?」



 真美はいつだかに見せた鬼の形相をこちらに見せてくる。

 ということで速やかに本筋に戻ろう。

 城田は真剣にリストを見ながら、参加する競技を考えていた。



「瞬に真美よ。やはりここは、誰か一人が参加するのではなく、三人で力を合わせられる競技が良いと思うのだがどうだ?」



「え?お前どうした?そんなマトモなこと言うキャラじゃなかっただろ?」



 城田の発言に、瞬は驚きの声を上げる。



「何を言うのだ。我はいつも真面目だぞ。話を戻すが、三人で力を合わせる競技ということで、一つ目は障害物競走(人生)はどうだろうか?」



「お前障害物競走のこと人生だと思ってんの!?」



「わお!障害物競走なんていつぶりだろ?でもどうやって力を合わせるの?」



「そうだよ!これ個人競技だろ!」



 城田は二人に向かってチッチッと人差し指を振る。



「なんだそれムカつくな」



「障害物競走は、協力できる競技だぞ。例えば網をくぐる時、真美が網を予め撤去しておくとか」



「不正じゃねえか!!ただの徒競走になるだろ!!」



「うーむ、ダメだと言うか。では仕方ない、他の競技で考えようではないか」



 再び振り出しに戻った三人は、迷いながらも最初の競技を決めたようだ。



『では、綱引きに参加する選手は入場門に集まってください』



 そのアナウンスを聞き、三人は入場門へ向かう。最初の競技は綱引きのようだ。



「これなら三人の力を合わせられる!城田、先輩、頑張りましょうね?」



「うむ。手がかぶれるからなるべく綱には触らないようにするぞ」



「お前神のくせに敏感肌なの!?」



「よーし、じゃあ準備するよ!私がバフかけてあげる!」



 そう言うと真美はどこからか杖を取り出した。



「粉に牛乳か豆乳を混ぜ、シェイカーに入れて振る者よ!飲み干して己の力にせよ!プロテイン!!」



 真美が呪文を唱えると、三人の腕は屈強な筋肉を纏い、更に黒い毛がびっしりと生えた腕に変わった。



「先輩、確かこの呪文ってゲームセンターの世界で使った……」



「うん!腕をゴリラの腕にする呪文だよ!」



「やっぱり!!気持ち悪いけど、これなら勝てそうですね!気持ち悪いけど」



「どうせならマウンテンゴリラの腕にして欲しかったぞ。これはニシローランドゴリラの腕だろう」



「お前シートン!?」



 こうして準備万端の三人は、綱引きへと向かった。

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