第20話 ゲームセンターの世界 その3
「次のミッションはシューティングゲームだ。二人プレイでクリアする必要があるぞ」
ホワイトチョコレートの山を抱えながら、城田が説明をする。既にいくつか齧った後があるようだ。
「お前ホワイトチョコ食べながら説明すんのやめろ!あとちゃんと一枚ずつ食え!?」
「良いではないか。どうせ食べるのは我なのだから」
「にしても、先輩がシビレ切らしてまた魔法でホワイトチョコ取ったのにはびっくりしましたよ。何でしたっけ、あの呪文?」
「ああ、アームを大仏の手に変える呪文のこと?あれ便利だよね。一瞬で全部取れちゃったし」
「ほんと罰当たりますよ!?大仏様そんなことに使って……」
そんなことを話していると、三人はシューティングゲームの機械まで辿り着いていた。
「これがそのシューティングゲーム、「ハウス・オブ・ザ・バット」だ」
「デッドじゃなくて!?」
「バットだ。次々に出てくるバットを狙って撃ち、粉砕していくゲームだ」
「特殊な設定!!」
「わお、楽しそうだね!バット折るとストレス発散になるもんね!」
「助っ人外国人か!荒々しいことしないでください!!」
城田がゲームの説明を終えると、どのペアで挑むかを決めることになった。
「城田と真美先輩のペアだけはやめましょうね?絶対真面目にやらないでしょ?」
「そんなことないよ失礼だな!ただバットを持ってる人の方を狙いたくなるだけ!」
「物騒!!」
「我は銃そのものを投げるぞ」
「負け確じゃねえか!!武器を投げるのは最終手段だろ!!」
やはり城田と真美のペアではダメそうな雰囲気が出ている。瞬は、自分がやらねばと半ば使命めいた気持ちを抱いていた。
「とにかく、絶対俺は入りますからね!後はどっちがやるか決めてくださいね!」
「むー、仕方ないな。じゃあ城田さん、桃鉄で勝った方ね!」
「日が暮れるわ!じゃんけんとかで決められません?」
「でもじゃんけんだと私が勝っちゃうよ?じゃんけんの世界でのこと忘れたの?」
「ああそうだった……。じゃあどうすれば……?」
瞬が迷っていると、城田がオセロを持って来た。
「これで決めるのはどうだ?」
「ゲーセンでオセロすんな!!備え付けのゲームで遊べよ!!」
「真美よ、我は容赦しないぞ?では早速始めよう。そこに座るが良い」
「聞けって!!」
「わーい!私もオセロ好きだよ!いつも一人でシミュレーションしてるからね!」
「寂しい人生!!」
「よし、始めるぞ。我が黒だな」
「白じゃねえのかよ!!」
「じゃあ私はチャコールグレーだね」
「オセロにそんな色ねえわ!!見分けづらいだろ!!」
結局瞬は止めきれず、オセロが始まってしまった。
ここからは長くなるので省略するが、結果的には城田が勝ったようだ。
「ふっ流石我だな。オセロ白帯の異名は伊達ではない」
「初心者じゃねえか!!何を威張ってんだ!」
「うー、負けたー!色が見分けづらかったのが原因かなあ」
「本当にチャコールグレーで始めたのはびっくりでしたよ。次からちゃんと白選んでくださいね」
「では本命のシューティングゲームを始めようではないか」
城田と瞬はシューティングゲームの機械に入り、200円を入れてゲームを始めた。
ゲームが始まると、ユニフォーム姿にヘルメットを被った少年が、バットを持って画面上に現れた。
「よし、あのバットだけを狙えば良いんだな?」
「そうだ。少年やランナーに当たってしまうとミスになるぞ」
「ランナーどこにいんだよ!!」
早速瞬がバットを狙って撃つ。少し外れてヘルメットを掠めてしまった。
画面上に『バッド!』の表示が出る。
「ミスの表示ややこしいな!!」
「次は我が撃つぞ」
城田は銃を構え、バットを狙う。城田が放った弾丸はバットに命中し、『バット!』の文字が画面上に出てくる。
「だからややこしいわ!!バットだかバッドだか分かんねえよ!!」
「瞬よ。集中するのだ。あと四回ミスしたらゲームオーバーだぞ。命を懸けるのだ」
「そこまではしたくねえよ!!」
なんだかんだと言いながら、城田と瞬はゲームを進めていった。
そして『ボス!!』の表示が出現し、画面上に釘バットを持ったヤンキー風の少年が現れた。
「うわ、ガラ悪いのが来たな」
「うむ。どうせなら髪型をコーンロウにした方が不良感があると思うぞ」
「お前の不良のイメージアメリカ過ぎない!?」
画面上でヤンキー風の少年が釘バットを振りかざす。すると釘を打たれてダメージが蓄積していたバットは、ボロボロに崩れ落ちてしまった。
画面上に『バット!』の文字が出てくる。
「ええ!?なんかクリアしたんだが!?」
「うむ。素晴らしいシューティングゲームだったな」
「最後シューティングしてねえが!?」
ヤンキー風の少年はふっと笑い、お前の勝ちだとでも言いたげに去っていった。
「なんだこれ……。クリアした気がしねえな」
「これで二つ目のミッションもクリアだ。最後のミッションに行くぞ」
不良を倒せず消化不良の瞬を連れ、城田はシューティングゲームの機械を出た。
「あ!おかえりー!どうだった?」
真美がリズムゲームをしながら二人に声をかける。だが彼女の姿勢はどう見ても低く、肩幅の数倍足を開いていた。
「クリアしましたけど……。先輩は何してるんです?」
「私はリズムゲームをリズム四股踏みでクリアしようとしてるよ!もうちょっとなんだ!」
「何してんだ!!だからリズム四股踏みって何なんですか!?」
「良い志だ。我もメロディー張り手を練習していてな」
「適当に喋んな!!」
真美がゲームを終え、息を着きながら戻って来る。
「ふう〜、クリアクリア!達成感あるね!じゃ、最後にプリクラ撮りに行こっか!」
「それが一番嫌なんですよね。なんでこのメンツでプリクラなんか……」
「何を言う瞬よ。仲間の絆を深める良い機会ではないか」
「一番異端なのお前だからな!?」
城田と真美が嫌がる瞬を引きずってプリクラの機械に入る。
「さあさあ、早速撮っちゃうよ!」
「ポーズはどうするのだ?小顔ピースはしていいのか?」
「ノリノリだなお前!本当に神か!?」
「ポーズはもちろん土俵入りだよ!さあ、腰を屈めて!」
「いやいや、本気で言ってます?誰がそんなポーズで……」
瞬が喋っている間にシャッターが切られ、画面に撮ったプリクラが表示された。
「いや俺以外写ってないじゃないですか!屈むから!!」
「ちゃんと落書きしとこうよ!「すり足で来た」って」
「何なんですかその来たシリーズ!?」
「我は「北陸新幹線で来た」と書いても良いか?」
「なんでだよ!!金沢駅かここは!?」
なんとかプリクラを撮り終えた三人は、ゲームセンターの世界をクリアしたのだった。
「さあ、次はお菓子の世界だ。白いお菓子がありそうだな」
「お前もう自分の欲の為に旅してない!?」
「私はあのちっちゃいヨーグルトみたいなのが好きなんだー!あれをネズミの生き血に入れると使い魔になr」
「風評被害凄いことになりますからやめてください!?」
こうして三人は、次の世界へ向かった。




