第19話 ゲームセンターの世界 その2
〜♪
富士にかかる薄雪よ〜♪
ひとり酒場で泣かせるな〜♪
恋しさ胸にしみる酒〜♪
冷えた心を溶かすよう〜♪
「おいこら待て!!」
え?今度は何?
「なんで歌から始まってんだ!!てかこれロックンロールの世界で歌った演歌風ロックだろ!!」
だってオープニングがあると盛り上がるじゃないですか。始まった感もあるし。
「だとしても小説でやるな!これ読まされた読者はなんて思うんだよ!!」
そりゃもう、ああ泣けるな〜って。
「思うか!!この歌で泣ける層が分かんねえわ!!いいから早く本編!!」
はいはい、分かりましたよ。ではここから本編スタート!
三人は早速UFOキャッチャーの前まで来ていた。と言っても、まずは物色の段階だ。
一つ目のミッションはUFOキャッチャーで景品を獲得すること。なるべく早くクリアする為に、取りやすい景品を選んでいるのだ。
「取りやすいって言っても、結局は欲しいものに目が行っちゃうよね〜!ほら、このハンドスピナーとか」
「懐かしいな!今持ってる人見たこと無いですよ!?」
「我はこの新幹線のおもちゃが……」
「新幹線はもういいわ!!お前どんだけ新幹線引っ張るんだよ!?」
「だがこれは東北新幹線だぞ?緑の車体にピンクのラインがオシャレだろう?」
「知るか!!とりあえずそんなでかいおもちゃ取れないから、小さいぬいぐるみとか探しましょう」
そう言って瞬は辺りを見渡すと、小さなぬいぐるみやソフビなどが入っている、一回り小さいUFOキャッチャーへ足を運んだ。
「ほら、この辺とかどうですか?落ちそうになってるぬいぐるみとかもありますよ!」
「でもそれ、ワイヤレスマウスのぬいぐるみだよ?要る?」
「ああ遊園地の世界のやつか……。要らねえな……」
相変わらず酷い言い草である。遊園地の世界にいるワイヤレスマウスは、今頃咽び泣いているであろう。
「ではこのソフビはどうだ?ヒーローのソフビだが……。知っているか?」
「いや知らないな……。なんだこれ?金髪のヒーロー?」
「私も知らないけど、なんか私たちと同じ作者から生み出された感はあるね!」
「先輩、それ以上はやめときましょう。宣伝になっちゃうんで」
「『染髪マン〜髪色で能力が変わる俺はヒーロー活動を始めました〜』という作品の主人公、染髪マンだな。大学デビューで金髪にしたらヒーローになってしまった主人公が、黒髪しか許さない秘密結社と自由を賭けて戦う物語だ」
「がっつり宣伝すんな!!全く、話の中で宣伝させられる俺たちの気持ちも考えろよ?」
作者の気も済んだところで、三人はプレイするUFOキャッチャーを決めたようだ。
「私たちがやるのは、これだー!」
真美が指差したUFOキャッチャーの中には、原寸大の餃子のぬいぐるみが入っていた。
「要らねえだろ!……と言いたいところですけど、これはちょっと欲しいですね……」
「でしょでしょ?無駄に焦げ目とかがリアルなところも良いよね?」
「ですね。ていうか、城田はどこ行ったんですか?」
「ああ、なんかホワイトチョコレートを見つけたからそっちやりに行ってるよ」
「何してんだ!自由か!」
瞬がその場にいない城田にツッコミを入れている間に、真美は既にUFOキャッチャーを始めていた。
「先輩、こういうの得意なんですか?」
「んー、私相撲観戦以外であんまり外に出ないからなー。経験無いんだよね」
「え、大丈夫ですか?お金無駄になりません?」
「だいじょーぶだいじょーぶ!いざとなれば魔法で取るから!」
「大丈夫じゃなかった!!」
真美が操作するUFOキャッチャーは、一度餃子のぬいぐるみを持ち上げることに成功した。だが持ち上げて獲得口まで移動する途中に、ぬいぐるみは落ちてしまう。
「ああー!何これ、難しいんだけど!?」
「そういうもんですよ。大体UFOキャッチャーってのは確率機ですからね。何回かやったら取れる仕組みになってるんですよ」
「むー、悔しい!こうなったら魔法使っちゃうんだから!粉に牛乳か豆乳を混ぜ、シェイカーに入れて振る者よ!飲み干して己の力にせよ!プロテイン!!」
「それただの工程ですよね!?」
真美がどこからか取り出した杖をUFOキャッチャーに向けると、アームが突然黒い毛が生えた屈強な腕に変わった。
「え、なんかリアル過ぎる腕出てきたのは何ですか!?」
「ああ、これ腕をゴリラの腕にする呪文なんだよね」
「ピンポイントな呪文!!」
「じゃ、これでやってみよ〜!」
真美は再び100円玉を投入し、ゴリラの腕になったアームを操作する。
すると今度はガッチリと餃子のぬいぐるみを掴んで離さない。
「おお!これは取れるんじゃない?餃子の餃子ちゃん、私のところにおいで〜!」
「漢字が変わらないからネーミングが分かりずらいな!!」
ゴリラアームはぬいぐるみをガッチリと掴んでいるが、どうも様子がおかしい。
握力が強すぎるのか、ぬいぐるみがミチミチと音を立てているのだ。
「先輩、あれやばくないですか?」
「だいじょーぶでしょ!所詮UFOキャッチャーだからね!」
「それをゴリラの腕に変えたのが先輩なんですけども!?」
瞬の心配は的中した。獲得口の上までゴリラアームが来た時、ぬいぐるみは限界を迎えたのだ。
バチン、と弾け飛んだぬいぐるみは、中に入っていた綿をふわふわと落としていた。
「餃子ーーーー!!!!」
ゴリラアームが手を広げ、抜け殻となったぬいぐるみが落ちて行く。
瞬と真美は真顔で綿と布を回収し、無言で城田の元へ向かった。
当の城田はと言うと、ホワイトチョコレートのUFOキャッチャーにかかり切りだった。
「おい城田、お前まだそれやってんのかよ!」
「おお瞬に真美よ。無事景品を獲得できたのか?」
「ああうん、獲得できたって言うかなんて言うか……」
真美は手元にあるぬいぐるみだったものを見る。
「そうか。獲得できたのなら何よりだ。それより助けてはくれぬか?我の力では、このホワイトチョコレートは獲得できなさそうなのだ」
「お前……一体いくら使ったんだよ?」
「ざっと八千円といったところか」
「使い過ぎだろ!!お菓子の景品にここまで使うやつ初めて見たわ!!そんだけ使ったら一つぐらい取れ!?」
「どうしてもこれが欲しいのだ。これがあれば、我はしばらく消えるリスクが無くなる」
「そうだね!城田さんファイト!」
「先輩また魔法でも使ってやってくれません!?」
更に1時間後、無事城田はホワイトチョコレートの山を獲得したのだった。




