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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第17話 剣の世界 その2

 三人がフェリーに乗り込んでから三日経ち、遂に目的の岩山が見えてきた。



「やっと……。やっとだ!俺の異世界冒険譚は、ここから始まるんだ!」



「ちょっと瞬くん興奮し過ぎ!いくら売店のアイスで当たりが出たからって、大騒ぎしないの!」



「んなことで騒ぐか!!異世界感に興奮してるんです!!」



「瞬よ。気持ちが昂るのは分かるが、これから我らは聖剣を抜きに行くのだ。厳かな態度でああ頭痛!!」



「おいこら俺のアイス食うな!!」



 だんだんとフェリーが岩山に近づいて行く。

 海の真ん中にそびえる岩山は、無骨で荒々しく、異様な雰囲気を醸し出していた。


 そしてその頂上には、人一人と変わらないサイズの剣が刺さっている。



「あれが聖剣……!俺たちが抜けるのか分からないけど、一回は勇者って呼ばれてみたいんだよなあ……」



「瞬くんは勇者に憧れがあるんだね!私は大関に憧れがあってね……」



「カテゴリが違い過ぎませんか!?」



「我は雑学王に憧れがあるぞ」



「お前は黙ってろ!!もう、これから聖剣を抜きに行くって言うのに緊張感の無い人たちだな……」



 呆れながらも、瞬は岩山の頂上にある聖剣を見て目を輝かせる。男たるもの、一度は勇者に憧れるものだろう。彼もまた、立派な男だということだ。



「そろそろ岩山に着くぞ。フェリーから降りる準備をしろ」



「はーい!最後にレストランでチーズフォンデュだけ食べても良い?」



「なんでそんな食べるのに時間かかるもん食べるんですか!さっさと降りますよ!」



 内心ワクワクの瞬が真美を急かす。そしてフェリーが岩山の麓、岸になっている部分に止まり、三人は遂に聖剣の岩山に上陸した。



「よっしゃ!じゃあ早速聖剣のところまで行きましょう!」



「待て、歩いて行くと時間がかかる上に疲れてしまう。ここはヘリで行くのが得策だ」



「結局ヘリかよ!!でもまあ確かに、これ登って行ったら何日もかかりそうではあるな……」



「ではヘリを出すぞ。暖簾に腕押しッ!!」



「なんだその色んな意味で手応えのない掛け声は!?」



 城田が右手を上げて力を込めるとボワッと煙が上がり、三人の目の前に一人の男が現れる。困惑する瞬と真美に向かって、男は口を開いた。



「結婚しろ相手を見つけろって言うけど、結局俺に相手がいないのはイケメンに産んでくれなかった親の責任だと思うんだが」



「あのー……。城田さん、これは?」



「すまない。間違えて屁理屈男を出してしまった」



「ヘリ違い!!間違え過ぎだろ!!」



 城田は左手を上げて屁理屈男を消し、再び右手を上げた。



「では今度こそヘリを出すぞ。糠に釘ッ!!」



「また手応え無い掛け声!!」



 ボワッと煙が上がり、今度はちゃんとヘリコプターが出現した。しかもパイロット付きだ。



「城田保和糸殿、お呼び出し感謝致す。拙者が安全な空の旅を提供すると誓い候」



「パイロットのキャラが大分おかしいけど

まあいいや。とりあえず聖剣のところまでひとっ飛びだ!」



 三人はヘリに乗り込み、聖剣が刺さっている頂上に向かって飛び立った。



 そして1時間ほど飛び、三人は聖剣の元に辿り着いた。



「わーい着いた着いた!1時間暇でリズム四股踏みの練習してたからあっという間だったね!」



「ほんと危ないからやめて貰えます!?」



「我はリズムグリーンカレーをしていたからあっという間だったぞ」



「それは何だ!?リズム要素が見当たらねえ!!」



 いまいち緊張感の無い三人だが、聖剣を前にしてピリッと電流が走ったように顔が引き締まる。



「いよいよですね……!誰が勇者になるのか……」



「じゃあ、私からいくよ?」



 真美が自分より大きな聖剣に手をかける。だが、そもそも真美の身長より大きな剣を抜こうというのが無理な話だ。真美は力を入れることができず、シュンとして戻って来た。



「私は勇者じゃなかったみたい……。やっぱり大関を目指すしか……」



「さっきから気になってましたけどなんで横綱じゃないんですか!!」



「では、次は我が行こう。スっと抜いて見せよう」



 自信満々の城田が聖剣に手をかける。城田の身長は180cmほど。十分聖剣を抜ける位置にいる。

 城田は力を込めて剣を引っ張るが、剣はビクともしない。



「おいどうしたんだよ城田?」



「いや、抜けぬな……。引いてダメなら押してみようではないか」



 そう言って城田は剣を押し込むと、剣は柄の部分を残して完全に地面に埋まってしまった。



「ふう……。では瞬よ。抜いてみるが良い」



「お前何してくれてんだ!!もう抜けるもんも抜けねえだろ!!」



「仕方ないであろう。「逆を行く」が我の信条であるからな」



「余計なことしやがって……」



 城田への怒りを抑えながら、瞬が聖剣に手をかける。



「こんなの抜けるのかよ……?」



 疑問を覚えながら瞬が剣を引っ張ると、スルッと剣が抜け、勢いに負けた瞬は尻もちを着いてしまった。



「うわっとと!え……?」



「わー瞬くん!抜けたよ!おめでとう!!」



「びっくりなんですけど……。え、俺が勇者……?」



「その通りだ。祝福しようぞ。さあ真美よ、祝福の櫓投げを!」



「は?え、ちょっとちょっと……うわあああ!!」



 真美は無言で瞬を櫓投げする。飛んで行った瞬は、剣が刺さっていた穴にすっぽりとハマってしまった。


 すると瞬が刺さった部分から岩山が樽のような形に変わっていき、聖剣がいくつも出現した。



「は?なんだこれ?」



「これが聖剣の儀式。その名も黒ひげ危機一髪だ」



「黒ひげ危機一髪じゃねえか!!え、まさかこれ……」



 城田が聖剣を樽型の岩山に突き刺すと、瞬が勢い良く飛び出した。



「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」



 空の彼方でキラリと光った瞬は、そのまま星になった。

 いずれプラネタリウムの世界で語り継がれるだろう。



「嫌だわ!!逆戻りじゃねえか!!」



 あれ?戻って来たの?どうやって?



「そこはギャグパワーだよ。よくもオチに使ってくれたな!!」



「瞬よ。良いオチだったぞ。さあ、次はゲームセンターの世界だ」



「え!?剣の世界まじでこれで終わり!?」



「みたいだね!オチが強引だったけど、めでたしめでたしだね!」



「全然めでたくねえ!!」



 こうして三人は、剣の世界から旅立つこととなった。

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