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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第16話 剣の世界 その1

 荒れ狂う波に揉まれながら、海にそびえ立つ岩山がある。

 その頂上には一本の剣が刺さっており、それを抜いた者は勇者と呼ばれるようになる。


 人一人と変わらないサイズの巨大な剣。果たしてこれを抜ける者、「勇者」は現れるのか……。



「これが聖剣の伝説だ」



「おお……!やっとなんか異世界っぽい感じになってきたぞ!」



「今までも異世界だったんだけどね?ほら、レーシングゲームの世界にはプリンセス的な人もいたし」



「そうですけど異世界と言えば剣じゃないですか!レーシングゲームの世界なんか、城田に関しては大阪と京都行ってましたからね!?むしろあの新幹線に乗ってればもう帰れてる気がしてますよ」



 気分が高揚し、いつにも増して饒舌な瞬。

 彼もいつも正論を言っている冷静な男とはいえ、所詮は高校生。異世界への憧れは、人並みに持っていたのだろう。



「では早速、聖剣を抜きに行くぞ。聖剣が刺さっている岩山は海の真ん中にあるから、そこまで行かねばならない。乗り物はヘリで良いか?」



「雰囲気ぶち壊しだな!?船とか無いのかよ!」



「船も出すことはできるが……アヒルボートだぞ?良いのか?」



「そんな平和な乗り物がこの荒波に耐えられるか!!ていうかそもそも二人乗りだろそれ!」



「じゃあじゃあ、私が魔法で船出そうか?それぐらいならできるよ!」



「もう先輩の方が神に近くないですか!?」




 相変わらずマイペースな城田を見かねて、真美が助け舟を出す。船だけに。



「やかましいわ!!」



「こらこら瞬くん、地の文にツッコまないの!それより、魔法で船を出すからちゃんと見ててね?」



 そう言うと真美はまたどこからか杖を取り出し、呪文を唱え始めた。



「精霊の加護を今ここに、かの者に癒しを与えよ!ヒール!」



 真美が呪文を唱えると、目の前の海に巨大なフェリーが出現した。



「おいなんでフェリーなんだよ!?九州行くんじゃないんだから!!」



「レストランと大浴場も完備!車とバイクの駐車場も付いてるよ!」



「要らねえだろ!!だから九州行くのかって!!」



「新幹線は止められないか?」



「お前は黙ってろ!!ていうかまた完全に違う呪文唱えてましたよね!?」



「そうかな?フェリーって寝泊まりする場所だし、体力は回復しない?」



「回復が遠回し過ぎるわ!!」



 頑張ってツッコミを入れていた瞬だが、こうなってしまってはアヒルボートかフェリーの二択。どちらを選ぶかと言われれば、当然それはフェリーの方になる。

 三人はいそいそとフェリーに乗り込み、聖剣が刺さっている岩山に向かって出発した。


 城田と瞬は海が見える窓際の椅子に座って、束の間の休息の時間だ。



「ところで城田、岩山まではどれくらいかかるんだ?」



「三人だから、大体六万円といったところではないか?」



「誰がこの流れで値段の話すんだよ!!時間の話!!」



「ああそうであったか。ややこしい言い方をするでないぞ。岩山までは大体三日ほどかかる。アヒルボートでは地獄を見ていたな」



「心からフェリーにしといて良かったと思えました!!」



 瞬がフェリーを選んだ自分を心の中で褒めていると、真美が三人分のドリンクを持って戻って来た。



「はい!ドリンク持って来たよ!私はジンジャーエール、城田さんは牛乳、で瞬くんはネズミの生き血だよね?」

 


「俺は吸血鬼かなんかか!!嫌ですよ生き血は!?」



「えー、でもそうじゃないと水道水しか無かったよ?ドリンクで水道水出すのってアウトじゃない?」



「なんでネズミの生き血はセーフなんだよ!水道水に謝れ!」



 赤黒い液体が入ったコップを持ったまま、真美は瞬の隣に座る。



「まあまあ、そんなことより聖剣の話をしようよ。この中で誰が勇者になるんだろうね?」



「普通に考えたら神の城田が抜きそうですけど……。でも城田だからなあ」



 瞬はチラッと城田の方を見る。城田は風呂上がりかのように牛乳を一気飲みしていて、全く聞いていない様子だ。



「何か言っていたか?ドライブでかけていたらセンスが良いと思われる曲の話か?」



「何をどうしたら今その話になるんだよ!?」



「我は「にんげんっていいな」がセンスが良いと思うぞ」



「どんなセンスしてんだお前!?でんぐり返しでバイバイするじゃねえか!!」



「城田さん、そんなのはどうでも良いの。聖剣を誰が抜くかって話!」



 珍しく真美が話を戻す。常に大ボケの城田とは違い、真美は真面目な時は真面目なのだ。



「それは決まっている。我だろうな。だが我は勇者をも超えた神という存在。我がさっさと抜いてしまっては面白くないかもしれないぞ」



「自信満々だねー!じゃあ城田さんの前に、私がチャレンジしちゃおうかな?せっかく海に来たから、魚を捌く刃物が欲しかったし!」



「そんな想定外の使われ方したら聖剣がびっくりしますよ!?」



 三人は誰が聖剣を抜くか、抜いたらどう使いたいかという話題で盛り上がり、剣の世界で過ごす一日目の夜が更けていった。


 真美は眠くなったと言って部屋へ向かい、瞬も眠ろうとベッドに横になった。だが……。



「眠れねえ!!ダメだ、初めてのマトモな異世界でワクワクが止まらなくなっちゃったぞ」



 今までのトンチキな異世界に疲れ果てていた瞬は、剣の世界への期待を膨らませていた。

 目が冴えてきてしまい、瞬は甲板へ出て風に当たりに行くことにした。



「あれ……?城田?」



 そこには、海を見つめて口から煙を吐いている城田の姿があった。



「瞬ではないか。どうしたのだ?こんな夜更けに」



「いや、ワクワクして眠れなくて……。お前は眠らないのか?」



「神に睡眠はあまり必要無いぞ。我は普段することが無いから朝寝、昼寝をしているがな」



「それ単に明るい時間帯に寝すぎて夜眠れないだけじゃねえの!?……それよりお前、タバコ吸うんだな」



「いや、これはドライアイスを口に含んでいるだけだ」



「死ぬぞ!?どういう発想したらそんな行為に走るんだよ!!」



 いつものようにツッコミを入れるが、興奮している瞬にとって、話し相手がいるのはありがたいことだった。

 

 城田と瞬はそのまま夜明けまで話を続け、朝日が昇る頃にようやく瞬は床に着いたのだった。

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