第13話 遊園地の世界 その2
あなたの帰宅を感知して起動。体温によって、最適な温度に調整。自動AI搭載で、快適な空間を実現します。人に寄り添えるエアコン。「ホワイトエアー」。
城田が地図を広げると
「ちょっと待てい!!!」
え、何?怖いんですけど。
「怖いのはこっちだわ!なんでいきなりCMから入ってんだよ!しかも知らないCM!」
いや、番組の前にもCMは入るから。リアリティを追求しないと。
「どこでリアリティ追求してんだよ!ていうかこれ番組じゃないからな!?」
うるさいな。じゃあどうしろと?
「普通に始めりゃ良いんだよ!ほら、城田が地図を広げると……ってとこから!」
はいはい、分かりましたよ面倒臭いな。
「文句言うな!早く始めろよ!」
この人がうるさいのでさっさと始めまーす。
城田が地図を広げると、遊園地の縮図が描かれていた。
「さて、では早速宝探しを始めるぞ。最初の暗号はこれだ」
城田は地図のある箇所を指し示した。そこに書いてあった暗号は、
『ひたとたにたよたりたそたえたるたえたあたこたんたほたわたいたとたえたあたーた』
というものだった。
暗号の横には、タヌキのイラストが描いてある。
「これは簡単だね!タヌキ暗号ってやつだよ!」
「ですね。どれどれ、たを抜いて読むと……「ひとによりそえるえあこん、ほわいとえあー」……ってさっきのCMじゃねえか!」
「おお我が作ったエアコンのことが示してあるのだな。素晴らしい、分かっているではないか」
「お前が作ったのかよ!!確かにエアコンって大概白いけども!!」
城田と瞬が言い合っている中、真美だけが真剣に暗号の意味を考えている。
そして真美は一瞬ワイヤレスマウスに見せた鬼の形相を二人に見せ、黙らせてから口を開いた。
「ねえ、この暗号がエアコンのCMのフレーズってことだけどさ、この帆船のアトラクションに行けばいいってことじゃない?ほら、帆船って風で進むし!」
「なるほどな。その考えは的確だと思うぞ。では行ってみようではないか」
城田を先頭に、真美、瞬が続く。
真美が言う帆船のアトラクションとは、「シップアドベンチャー」という、ゆっくりと進む船に乗って世界中を冒険するアトラクションである。
世界中を冒険すると言っても、屋内型アトラクションで、ミニチュアで作られた世界遺産などを見ることができるアトラクションだ。
三人が「シップアドベンチャー」の建物へ辿り着くと、そこには新たな暗号が書かれた紙が置いてあった。
「よしっ!これで暗号ゲットだね!」
「次の暗号はなんて書いてあるんです?」
「えーっとねー……」
真美が読み上げた暗号は、
『しらないあいだにめばえてた
ろくにきづかなかったけど
いつのまにかきみのことを
もとめるようになっていた
のんびりしちゃいられない
ただちにこのおもいをつたえたい
べつにいそぐわけじゃないけど
ろくじになるまえにいわないと』
というものだった。
「なんか詩みたいですけど……。ラブレター的な感じですかね?」
「いや、これは縦読みだろう。頭の文字だけを読むと、「しろいものたべろ」となる」
「おいまたお前のことじゃねえか!!え、これお前が仕組んだ?」
「断じてそんなことはないぞ。単にこの世界は、我が暇だから作ったからというだけだ」
「じゃあお前が仕組んでんじゃねえか!!」
「まあまあ二人とも。これはとりあえずレストランに行けば良いんじゃないの?白い食べものがメニューにあるレストランは……ここだね!」
真美が地図の一箇所を指差す。そこには、「白いオムライスのおみせ」と書いてあった。
「おおこれは我のお気に入りのレストランだぞ。ここのグリーンカレーが名物でな、非常に美味であるぞ」
「白いオムライスは名物じゃねえのかよ!!なんでグリーンカレーなんだよ!?」
「それは我が作った世界であるからな」
「ああそういやお前の好物グリーンカレーだったな。忘れてたわ……じゃなくて!!お前なんで白いものじゃなくて緑のものが好物なんだよ!?」
騒ぎながら三人がレストランへ歩いていくと、レストランの入口ではシェフらしき人物が待ち構えていた。
「これはこれはいらっしゃいませ。御三方のメニューは決まっておりますので、さあどうぞ中へお入りください」
「ご丁寧にどうも……。やっぱりこれ、白いオムライスを食べられるのかな?」
「だろうな。我は後で個人的にグリーンカレーを食べに来たいものだ」
「お前緑のもの食っても何にも特にならねえからもう食うな!?」
三人が中へ入って席に着くと、すぐに白いオムライスが三人分運ばれてきた。
「おおこれは美味そう!早速いただきま……」
「ちょっと待って瞬くん!これ、ケチャップで暗号が書いてあるよ!」
「え!?」
真美の言う通り、オムライスの上にはケチャップで暗号が書いてあった。
三つのオムライスにそれぞれ二文字ずつ書いてあり、それぞれ『おを』『よを』『さも』となっていた。
「これはどういう意味だろう……?」
「この手のやつは大体文字がズレてるんですよね。例えば一文字前にズラして読むと……「かんらんしや」ですね」
「ビンゴだ。ナイスだぞ瞬よ。観覧車に宝があるということだな」
「そうと決まれば、早速れっつごーだね!」
三人は早足で観覧車に向かった。観覧車は割と近くにあり、すぐ傍には小川が流れていた。
そして観覧車の下に辿り着くと、そこにはワイヤレスマウスが立っていた。
「やあみんな!よくここまで辿り着いたね!お見事だったよ!じゃあ、僕から宝物をあげるね!」
そう言ってワイヤレスマウスは三人に何かを手渡す。
「これは……」
「うん、ぬいぐるみだね」
「ワイヤレスマウスのだな。ここでしか手に入らないからレアではあるが……」
三人は同時にワイヤレスマウスのぬいぐるみを、近くの小川へ投げ捨てた。
「ああ!!何をするんだい!」
「いや、いらねえから……」
「そんな!?僕のぬいぐるみはレア物なんだよ!?」
「いや、いらないから……」
「ええ!?ちょっと城田オーナー!なんとか言ってよ!!」
「いや、いらぬのでな……」
「この世界においての僕の扱い酷くない!?」
城田は切り替えて、次の世界の説明を始める。
「さあ、次はプラネタリウムの世界だぞ。綺麗な星を解説付きで見ることができる。楽しみだな」
「それは楽しみだね!星は魔術ともよく関係してるって言うから、私の魔術の参考にもなるかも!」
「そうですね!早く行きましょう!」
「もうちょっと僕に優しくしてよ!!」
こうして三人は、無事遊園地の世界から脱出することができたのだった。




