92.超神水《ちょうしんすい》
わたしが祈ると、旧楽園の地面から、大量の水があふれ出た。
ドワーフさん達はあっという間に貯水池を作った。
池の水を逃がすため、奈落の森へ用水路を作ってくださった。
結果、あふれ出てくる水は、森の中の小川と合流し、そして森の外へと排出されることになったのだった……。
「ごめんなさい、ガンコジーさんたち……」
わたしはドワーフのガンコジーさんに頭を下げる。
余計な工事をさせてしまったわ。
しかしガンコジーさんは笑顔で首を振る。
「なぁに気にするな。もとより用水路は作る予定じゃった。まあ水源がまさかここからになるとはおもわなんだが」
「うう……ありがとう」
水をお恵みくださった神さまには感謝だが、それにしては、限度って物が……いやいや!
神さまを否定なんてしてはいけないわ。
きっと……そう!
この湧き出た水、神さまの特別な水に違いないわ。
そしてその水を使って、試練を乗り越えなさいという……教え!
そうに違いない! ……うん、そうに違いない。
「単にキリエが自分の力を制御できず、やらかしただけだと思うんだけどね」
「くま子さんっ。不敬ですよ! 神さまはやらかしたりしませんっ!」
はいはい、とくま子さんがさらっと流してしまう。
うう……神さまはそんなミスなんてしないのにぃ。
「しかしドワーフの技術力っていうのは、すごいね。あっというまに村中に水道? ってやつを張り巡らせて、いつでもどこでも水が飲めるようにしちまうなんて」
村中には水道が設置された。
蛇口をひねると、そこから貯水池の水が出る。
手のない魔物さんたち用の水道もある。 魔力を流すことで、水が出るのだ。
「すごいわ、ガンコジーさん。天才ね!」
「ありがとよぉ、嬢ちゃん。でもすごいのはあんただぜ。無限にこの清らかな水を生み出しちゃうなんて」
ああまた……まただ。
また勘違いされてる……!
「あのね、ガンコジーさん。それに、みなさん。このお水は、天にまします我らがノアール神さまが、わたしたちの生活が困らないようにと……お恵みくださった水なの」
ドワーフさんや魔物さんたちが、わたしの話に真剣に耳を貸してくれる。
啓蒙も聖女の役割だ。
「みなさん……今日の水をくださった、神に感謝いたしましょう」
『『『はい! キリエ神さま! ありがとう!』』』
うん……どうしよう、わかってくれない……!
どうしたらわたしじゃないってわかってくれるのかしら……。
「そのうち、天から使いがきたらどうしましょう」
『姉ちゃん、なぁに、天からの使いって』
蛇口から出てる水を、ぺろぺろなめながら、くま吉君が聞いてくる。
「俗に言う天使って方々ね」
『天使ぃ?』
「ええ。天の神さまを守ったり、天界、地上界の秩序を守る、えらい方々よ」
聖書をひもとくと、基本、神は人間の世界……地上界に干渉してはいけないルールになっているらしい。
現世にかかわるときは、神の使い、天使を通して行われる……らしい。
『へえ、天使。姉ちゃんは見たことあるの?』
「いいえ。わたしのような未熟な聖女では、天使さまに会うことすらできないわ。もっと修行しないと」
『へー……じゃあ天使って、聖十二支の人たちみたいなもんなんだね』
聖十二支とは先代聖魔王、エレソン様を守護していた、すごい12匹の魔物さんたち。
今のところ、チャトゥラ、シンドゥーラ、アニラさん、美緋羅さん、そしてメドゥーサさんの5匹が聖十二支のなかまになっている。
「あと7匹のかたたちは、今頃どこにいるのかしらね……」
そこへ……。
「おおい、くま吉やーい」
『あ、ガンコジーさん。なんだい? おいらに何かようかい?』
ガンコジーさんが、奥さんであるトロルのデッカーちゃんを引き連れて、わたしたちのもとへやってくる。
「また用水路を引くから、手伝っておくれ」
『いいけど……前に作ったんじゃなかったっけ?』
「水が次から次へとあふれ出て困るからな。一本じゃ用水路が足りないんだ」
『はえー、やっぱ超神水すげえー』
ん?
超神水……?
「なぁに、それ?」
『みんな言ってるよ。キリエ神が作り出した超スゲえ水……略して超神水!』
「きゃっかー! 駄目でしょ! わたしが作ってないのにっ」
『えー、まだいうの? 姉ちゃん強情だねえ』
強情も何も、わたしは間違いを正してるのっ。
もうっ。
『超神水すげえんだぜ。超うめえし……それになんかこう……飲んでると力がわいてくるんだ』
「力?」
……そう言えば。
用水路ってどうやってか、たった数日でできたのよね。
ここから奈落の森の川って結構離れていたはず。
ドワーフさん達の技術力が凄いからって、そこまで長い用水路を、こんな短時間で作れるものかしら……。
「おおい、くま吉を連れてきたぞーい」
『おいらの出番だ!』
わたしたちがやってきたのは、貯水池の近く。
くま吉君がふがふが、と鼻息を荒くする。
『いっくよぉお!』
そういって、ごくごく、とくま吉君が超神水(不本意ネーミング)をたくさん飲むと……。
ピカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
「く、くま吉君!? どうしたの!? 体が黄金に光ってるけど!」
『くらえ! おいらの必殺技! くまびーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーむ!』
「くまビーム?!」
ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
く、くま吉君の口から……ビーム出た……!?
ええええええええ!?
吐き出されたビームは地面を削りながら、奈落の森へと伸びていく。
ビームの通ったあとには、立派な用水路が出きていた。
あとはそこに水を流すだけ……。
「す、すごいわくま吉君……ビームなんて出せるなんて……」
『ちがうよぉ。これは姉ちゃんのおかげだよ!』
「わたしの……?」
わたしなにもしてないんだけど……。
『くまびーむね、ちょー魔力使うんだ。おいらの体内の魔力じゃ足りないんだって』
「へえ……じゃあどうやって魔力を補ってるの?」
『そこで超神水だよ! この水、魔力量を一瞬で回復させる効果があるんだ! しかも、たくさんのめば一時的に無限魔力が手に入る!』
「まあ……!」
そんな……。
「す、すごいわ……」
『そうでしょぉ~。ほら、姉ちゃん、やっと姉ちゃんが凄いことを認めて……』
「やっぱりノアール神さまの作ったお水は、すごいわ!」
『あー、そっちかー』
うん、わたしにこんな凄い水が、作れるわけないものね!
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