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91.神パワーで辺境開拓



 奈落の森(アビス・ウッド)に新しい仲間が増えた。

 仲間達が住む場所が必要になった。


 わたしたちは手分けをして、住処を作ることになった、のだけど……。


「まずは整地じゃな」

「はい。神さま……どうかお力を……!」


 ぱぁ……!


『うぉお! すげえ! このあたりの雑草が一気に消えたぜ!』


 ぱぁ……!


『ぴゅいー! 地面のボコボコが一気に平らになった!』


 ぱぁ……!


『きがはえたー』


 ……神さまに祈ったら、整地作業はあっという間に終わってしまった……。

 神さま……気前よすぎじゃないでしょうか……。


「やっぱキリエはすごいね」

「……しゅごい、キリエ……かっこいい~♡」


 くま子さんが感心したように言う。

 メドゥーサちゃんがまたも絡みついてくる。


「だから、神さまのおかげです。みんな、感謝を……」

「さー、魔物組は、キリエの生やした木材を伐採、ドワーフ連中は木材の加工だよ」

『『『あいあいさー!』』』


 聞いてない……!

 うう……神さま……すみません……また勘違いされてます……。


『うぉっしゃー! おいらの出番だー! おらぁ!』


 わたしの生やした木材を、くま吉君がバターのように切り裂く。

 すぱぱぱぱぱんっ!


「へっ、やるじゃあねえか、くま吉よぉ! じゃあオレ様も……どぉりゃああ!」


 竜の(今は人間姿の)アニラさんもまた、手刀で木を切っていく。

 すぱぱぱぱんっ!


 ガンコジーさんをはじめ、ドワーフさんたちは採取した木々を綺麗に加工。


「よーし、おいらたちトロルもがんばるべー!」

『わたくしたち空の民は木材の運搬をいたしますわ!』


 トロルのデッカーちゃん、グリフォンのシンドゥーラさんたちが、頑張ってくれている。


「わ、わ、わ……」


 みんな……すごいわ。

 流れるように作業している……。


 いや、待って。

 わたしは?


 わたしは何もしてない……。


「あ、あの……! くま子さん!」

「ん? なんだい?」


 わたしは現場指揮を撮っているくま子さんに尋ねる。


「わたしも何かお手伝いします! なんでもしますので、何か言って!」


 わたしだけ休んでるなんて、ゆるせないわ。

 わたしたちはみんな仲間なのだから……。


「あー……キリエはいいよ。おとなしくしてな」

「が、がーん! そんな……わたしだって何かできます……!」

「いやいいから、キリエはそこにいれば……」

「やります……!」


 一人だけ役立たずなんて……いやよ!

 わたしは加工された木材を持ち上げる。

「どっこいしょ!」


 怪力のスキルを発動する。

 わたしは友達のスキルを使えるのだ!


 ほら、怪力があれば……木材だってモテるんだから……!

 げしっ!


「あうん……」


 石に躓いて、わたしは持っていた木材を放り投げてしまう。


「あぶねえ……!」

「拙者にお任せを!」


 飛んでいく木材の前に、鬼の美緋羅みひらさんが躍り出る。


虎神一刀流こしんいっとうりゅう……猛虎絶爪!」


 すぱんっ! と美緋羅みひらさんが持っていた剣で、木材をおがくずにかえる。


「キリエ殿! だいじょうぶでござるか!」

「う、うん……ごめんね美緋羅みひらさん……怪我ない?」

「問題ないでござる!」


 よかった……傷つけるところだったわ……。


「キリエ……」

「はい……」


 くま子さんがため息をついて、頭をなでてくる。

 あう……。


「あんたは他のところで頑張ってるから、雑用はあたいらに任せな」

「で、でも……」

「キリエはただそこにいてくれればいいんだよ。それだけで十分。な、おまえら?」


 こくこく、と魔物さん、ドワーフさんたちがうなずく。

 いればいい……か。


「役立たずってことじゃない、よね?」

「さーて、作業を再開するよー」

「くま子さん!?」


 そう言えばわたし、昔お母さんに、あんたは抜けてるところがあるって言ってたわ……。

 もしかして……。


「わたし……祈ること以外……役立たず……?」


 しょんぼり……。


『ぴゅい! そんなことない!』

『そーだよぉ』


 ぐーちゃんとスラちゃん、ふたりのベイビー魔物たちが、わたしを慰めてくれる。


『おねえちゃんは、祈ると、ぶわわー! って木が生えたもん!』

『しゅげー』


 でも……わたしには加工もできないし……。


「キリエ」

「メドゥーサちゃん……」


 しゅるん、とメドゥーサちゃんが抱きついてくる。


「キリエには、キリエにしかできないことがある。だから落ち込まないで」


 ……わたしにしかできないこと、か。

 たしかに……そうだわ。


 そうよ、できないことをするんじゃあなくて、できることをすればいい。

 わたしにできるのは……祈ること!


 何を祈れば良いかしら……。


『うひ~。のどかわいた~』


 のっしのっし、とくま吉君が森へ向かおうとしてる。


「どうしたのくま吉君」

『あ、姉ちゃん。おいら喉渇いちゃって……』

「それだわ!」


 みんな外での作業で、喉が渇いてる。

 この旧楽園デッドエンドには飲み水がないため、いちいち森の小川まで行く必要がある……。


「神さま……どうかお水を。みんなが飲める水を……お恵みください!」


 そのときだった。


 ごごごごごごごごごご……!


『み、みんな警戒! 姉ちゃんがまた神パワー使ったよ!』

『ぴゅいい! 地面が揺れてるぅ!』


 どぱぁあああああああああああああああああああああああん!


『みずがでたー』

『なんだっこりゃああああああああああああ!』


 村の中央から、凄まじい勢いで水が噴き出したの!

 

『うわわわ……! すげええ! 水だぁ! あむあむ……おいちー!』


 ふふ……よかった……!

 水があればみんな困らない……!


 ああ、神さま、ありがとうございます……。


「キリエぇ……!!!!!!」


 くま子さんが走ってやってくる。


「もう! 力を使うなら早めに言っておくれよ! みんなびっくりしたじゃあないかい!」

「あ、えと……ごめんなさい……あと、力はわたしのじゃなくて……」

「まあでも飲み水問題はあったから、助かったよ。さすがだね、キリエの力は」

「いやだからわたしの力じゃ……」

「さー、この水を使っての水飲み場を作るよ!」

「わーん、聞いてくださいよぉ~」

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[一言] >「わーん、聞いてくださいよぉ~」 せやったら神様に祈ったらみんな聞いてくれるんちゃいますかねー?(ハナホジー) 洗脳になるかもしれないとか言ってはいけない
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