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86.一件落着



《腐姫Side》


 聖魔王キリエは、腐姫の前身となる魔物の名前……メドゥーサの名を呼んだ。


「なんで……その名前……知ってるの?」

「あなたをハグしたから、かな。急にね、記憶が流れ込んできたの」

「記憶が……」


 キリエは辛そうに顔をゆがめていう。


「ひどいこといわれて、つらかったね。大丈夫、あなたは、醜くなんてないわ」

「う……うう……」


 キリエの言葉が、胸にしみる。

 ずっと、彼女は気持ち悪いって言われ続けた。


 メドゥーサ。それは蛇の魔物。

 ぬめぬめとした体表に、は虫類の顔つき。


 誰もが彼女を醜いと言った。

 忌避され続けてきた。


 魔王へ進化して、やっと美しい見た目を手に入れたと思った。

 ……でも、今度はみんなメドゥーサを恐れて近づいてこなかった。


 悲しかった。

 そう……ほんとうは……。


「ほんとうは、誰かにこうして、ぎゅって抱きしめてもらいたかったのね」


 キリエは聖母のごとき笑みを浮かべながら、メドゥーサを抱きしめた。

 こらえていたものが決壊し、わんわんと、メドゥーサは涙を流した。


 温かい……。

 キリエの体は、とても温かくて、安らぎを覚える。


 そうだ……彼女が言うとおり、ずっとこんなふうに、誰かに抱きしめてもらいたかったのだ。

 それだけだったのだ。


 嫉妬をこじらせ、いつしか自分以外の全てを憎むようになったけど……。

 彼女が望んだのは、そんな小さな願いだったのだ。


「ねえ、メドゥーサさん。一緒に森にこない? あそこには、たくさんの、優しい魔物さんたちがいるわ」


 微笑みかけながら、キリエが提案する。

 自分の理解者キリエと、そしてその仲間が居るなら……とても楽しく暮らせるかも知れない。 

 だが……。


「無理、だよ」

「どうして?」

「だって……わたくしは、もう……死んだから……」


 このリョウメンスクナを召喚する供物として、メドゥーサは自分の肉体を捧げた。

 この神が消えれば自分も、この世から退散することになる。


「大丈夫。あなたを、生まれ変わらせることができるわ」

「そ、そんなこと……できるの?」

「ええ、わたしを信じて。わたしに……身を預けてくれる?」


 成功する保証なんてどこにもない。

 そもそも死んだ人間が、この世に再び生を受けることなんて、できるわけがない。


 でも……キリエのその、まっすぐな瞳には、一点の曇りもない。

 できる、と確信を持ってるようだ。


「…………ほんとに、できるの?」

「ええ! ノアール様に、不可能はないんだから!」


 ノアール……?

 何かの隠語だろうか。


 わからないが、とりあえず凄い自信だ。 彼女が凄まじい力を持つことを、メドゥーサは身をもって教えられた。


 そんなカノジョができると言う。

 なら……信じてみてもいいかもしれない。


「おねがい……キリエ……わたくしを……この地獄から、助けて」


 キリエはうなずくと、リョウメンスクナに吸収された状態のメドゥーサを抱きしめて……。

 腰の後ろで、手を組んで祈る。


「神さま……どうかこの子に新しい人生を、お与えください」


 そのときだ。

 カッ……! とリョウメンスクナが輝きだす。


 巨大な二人の神は、みるみるうちに小さくなっていく。

 キリエは元の大きさに……。


 そして、リョウメンスクナは光輝きながらドンドンと小さくなっていって……。


 あとには、1人の美しい女性が立っていた。

 紫色の長い髪に、豊満なボディ。


 肌の色は白く美しく、絹のようにすべらかだ。

 黄金の瞳は大きく、そしてまぶたはぱっちりとした二重。


「まぁ! なんて美しいの! ほら、見てごらん」


 一緒に小さくなったキリエが、普段身に付けているポシェットから、手鏡を取り出す。


「うそ……なに……これが……わたくし……?」


 そこに居たのは、驚くほど……美しい女性だ。

 この姿を見て誰が、気持ち悪いというだろうか。


 瞳孔が縦に割れてて、そこだけが蛇っぽさがあるけれど、それ以外は文句のつけようがない美しい見た目。


 メドゥーサが、望んだ姿。


「よかったね、腐姫……ううん、メドゥーサさん」

「う……ううう……うわあああああああああああああああああああん! ありがとぉおおおおおおおお! キリエぇえええええええ! ありがとぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


 メドゥーサは大泣きしながら、キリエに抱きつく。

 キリエは迷える子羊ならぬ、魔王の心を救えたことを、心から喜んでいるようだった。


「ありがとうございます、ノアール神さま」


 いつも心にいる、彼女の信じる神に、キリエは祈りを捧げるのだった。 

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