85.燦然と輝く
《腐姫Side》
リョウメンスクナと融合した腐姫。
彼女は仇敵、聖魔王キリエ・イノリとの一騎打ちに挑んでいた。
『死ねぇえええええええええええええええ!』
リョウメンスクナの体からふきだしたのは、とてつもない量の呪毒。
触れたものを殺し、溶解する凄まじい強毒だ。
吹き出した毒がキリエに降り注ぐ……だが。
「主よ」
キリエは、祈った。
ただそれだけで呪毒が綺麗さっぱり消えてしまう。
『なんだ!? なんなのだ貴様、その力……!』
「神の力です!」
堂々と、巨大キリエが胸を張る。
神の力だとばかりに。
……一方で、腐姫が手に入れたこのリョウメンスクナの力は、仮初めのものだ。
自分の力では決してない。
くやしい。ねたましい。
『なぜキリエ! 貴様は! おなじ魔王という立場なのに! 全てを持っている!?』
スクナは呪毒で固めて作った槍を手に、キリエに突撃する。
海面を割るほどの凄まじい速さで走るリョウメンスクナ。
渾身の力を込めた、毒の槍による一撃は……。
「主よ……!」
しかしキリエの作った聖なる結界によって阻まれる。
ばきぃい! という音を立てて槍が壊れる……。
それどころか、突撃の勢いが反射してきたのだ。
『ぐわぁああああああああああああああああああああああああああ!』
リョウメンスクナと同化した腐姫が海面にたたきつけられる。
無様に仰向けに、倒されてしまった。
ずんずん……とキリエが近づいてくる。
彼女の体からは、キラキラと、美しい光が立ち上っていた。
燦然と輝く、まるで太陽のようだ。
……一方、自分は。
こんな醜い姿になって、渾身の力を込めたとしても……。
キリエには、敵わなかった。
『くそ……くそぉおおおお!』
リョウメンスクナの毒を、手に、そして指の先に集中させる。
この神は4本の腕を持つ。
両腕、両手、その指先に毒の力をチャージ。
『直接おまえに、毒をぶち込んでやるぅうううううううううううううううううううううう!』
ああ、にくい、にくたらしい……!
あんな、太陽のような輝きを持つ……キリエが憎い。
なんの辛い過去も持ってなさそうで、ヘラヘラと皆と楽しそうにしてる……。
そんなやつが、自分より強いなんて。
『みとめない! わたくしは……! 絶対に認めない! 認めて、たまるかぁあああああああああああ!』
自分が負けてしまったら、存在を否定されてしまう気がした。
キリエのようにヘラヘラと、毎日楽しく暮らしてるようなやつに、負ける。
それはつまり、人のことを恨み、妬んでいる自分が……格下ということになる。
そんなのは嫌だ。
腐姫は己が、キリエより優れていると証明したかった。
自分の生き方が正しかったのだと、主張したかった。
自分は。
醜い。
でも強い。そう言いたかった。
『くたばれキリエぇえええええええええええええ!』
さて、それに対してキリエは……。
祈るポーズを取らなかった。
『なっ!?』
毒の爪でひっかこうとする腐姫のことを……。
ふわり……と抱きしめたのである。
『なっ、なあぁ!? お、おまえ……何をしてる!? 祈らないのか!?』
「祈りません」
『なぜ!?』
「あなたが、泣いてるから」
泣いてる……?
キリエに指摘されて、腐姫はようやく、自分の頬に熱い何かが流れていることに気づいた。
これは……涙だった。
「周りから、きもちわるいとか、くさいとか、酷いこと言われたんだね……辛かったね……」
なんだ……それは。
腐姫は自分の境遇を、一言も語っていない。
だというのに、この女は。
自分が経験してきた、辛い過去を、知ってるかのようだった。
「大丈夫だよ、腐姫……ううん」
キリエは、首を振って、言う。
「メドゥーサちゃん」
……メドゥーサ。それは、この姿になる前の、名前。
そう……メドゥーサは、蛇の化け物だったのだ。
【☆★読者の皆様へ お願いがあります★☆】
良ければブックマークや評価を頂けると嬉しいです!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると幸いです!
ポイントが入ると、更新を続けていくモチベーションが上がります!
よろしくお願いします!




