82.大いなる祈り
リョウメンスクナとなった魔王の一人、腐姫。
彼女がわたしたちを襲ってきたそのとき。
アニラさんを含めた、森の民がやってきた。
でもアニラさんひとりでは暴走する腐姫を止めることはできない。
そこで……
「キリエ様、具体的に、大祈祷とはなにをするのですか?」
仲間の一人、聖十二支のチャトゥラさんが尋ねてくる。
「みんなで手をつなぎ、ともに心を一つにして、神に祈りを捧げるの」
「手を……つなぐ。それだけですか?」
「ええ、それだけよ。でも二人で祈れば二倍、三人で三倍、四人で……と増えればそれだけ、祈りの力が増すの」
天導教会の大聖女さまがやっていたのを見たことがある。
聖女様が信者の方と手をつなぎ祈ることで、砂漠に雨を降らしたことがあった。
大祈祷は人数が多ければ多いほどいいのだ。
「さ、みんな手をつなぎましょう。そして……腐姫の暴走を止めてくださいと、神に祈るのです」
わたしにできることは、祈りを捧げる、それだけだ。
神の力を使って暴れるリョウメンスクナ、もとい腐姫を止められるのは……。
よりつよい、ノアール様……つまり、神の力だけ。
「わかりました……みな! 手をつなぐのです! そして、祈りを捧げましょう!」
『『『おう!』』』
森の民たちがうなずく。
そこへ……。
「キリエの嬢ちゃぁああああああああああん!」
「イッコジーさん! ドワーフの皆さん!」
「騒ぎを聞きつけて参上したでー!」
ドワーフ、そしてトロルのみなさんに、わたしは簡単に説明する。
「我らトロルも協力しよう」
「わしらドワーフもじゃ。ともに、手を取ろうぞ」
トロルの代表キョシーンさん、そしてガンコジーさんがうなずく。
トロルも、ドワーフも、そして森の民たちも。
みんなが手をつなぎ……今、心を一つにする。
「目を閉じて……神に祈るの。わたしとともに、神に!」
『『『はい!』』』
「どうか、我らをお救いくださいませ! 偉大なる神……ノアール様! はい!」
復唱するように、みんなに言う。
彼らはうなずいて……。
『『『どうか、我らをお救いくださいませ! 偉大なる神……キリエ様!』』』
「ち、ちがぁあああああああああああああああああああああう!」
ちがうちがう、名前ちがう!
ああ、なんてことだわ!
「何で名前間違えるの!? 心を一つにしてっていったよねわたし!?」
そのときだった。
ピッカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
『『『『きたぁああああああああああああああああ!』』』』
「なんでなの……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
全然心を一つにしてないんですけど!?
どうして大祈祷が成功するの!?
『うぉお! すげえ!』『なんだありゃ!?』『で、でっかーい!』
いったい何が起きてるっていうのかしら……。
わたしは、恐る恐る目を開ける……。
「え……?」
……そこには、空が広がっていた。
「空の上に転移したの……? いや、なんかちが……え?」
わたしの目の前には、リョウメンスクナがいた。
いや、ちがう。
すぐ、目の前にいるのだ。
「え、お、おかしいわ……だって、リョウメンスクナって……超巨大な……巨人だったような……」
それがどうして、同じ目線にあるんだろう……。
「キリエ……!」
「アニラさん……って、えええ!? あ、アニラさん!? どうしてちっちゃくなってるの!?」
わたしの前に、暴虐竜アニラさんがやってきた。
でも……おかしいの。
すごいちっちゃいの。
まるでくまのぬいぐるみみたいなサイズ感……。
「キリエ! ちがうぞ! オレ様がちっちゃくなったんじゃあない!」
びしっ、とアニラさんが尻尾で、わたしをさして……。
「キリエ、おまえがでっかくなったんだ!」
「え……?」
ま、まさか……わたしがでっかく……?
周りを見渡す。
……足下に、なんかちっちゃい、チャトゥラたちがいた。
『姉ちゃんでけー!』『ぴゅいい! きょじんだー!』『ひかりのきょじんだー』
……わたしの体が、微妙に発光してる。
そして、ものすごくでっかくなっている……。
「え、ええええええええええええええええ!? わたし……でっかくなっちゃったのぉ!?」
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タイトルは――
『最強【結界師】の気ままな新婚旅行〜弱すぎる味方に最強結界を施してたのに、自分が強くなったと勘違いした勇者に追放された。効果が永続じゃないと気づいても遅い、俺を溺愛してくれる幼馴染と旅してる』
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