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80.聖魔王vs屍魔王



《キリエSide》


 わたしたちが【それ】に気づいたのは、トロルさんを復活させてしばらくしたときだった。


 急に森の木々が枯れていったと思ったら、続けざまに異常が発生したのである。


『うわわわぁ! ね、ねえちゃんあれやべえよ! ちょーでっかいバケモンが現れたよぉおおおおおおおおお!』


 くま吉君がそれを見て叫ぶ。

 なに……あれ……?


 大きな、人……?

 2対の腕と顔を持つ、巨大な人間型の化け物が立っていたのだ。


「か、鑑定!」


■リョウメンスクナ($”R$!)

封印されていた悪しき神の一柱


 樹木王トレント・キングさんの力、鑑定をもってしても、表記にバグが見られた。


「リョウメンスクナって神らしいわ」

『『『神……!』』』

「どうしてみんなわたしを見るのっ!」


 なんでシリアスな雰囲気なのに、ぼけるの!?

 わたしは神じゃないの(定期)!


 しかし……なんで神なんかが突然……?

 何のために現れたの……?



『きぃいりえぇええええええええええええええええええええええ!』


 そのとき聞き覚えのない、女の声が聞こえてきた。

 トロルの長、キョシーンさんが声の正体に気づく。


「キリエ様、腐姫の声です!」

「腐姫……じゃあ、あのデカい化け物が……?」

「いえ、声は確かに腐姫ですが、見た目がちがいます。おそらく、あの神に取り込まれたのかと……」


 なるほど、ようはあのデカいのが神で、腐姫はその中にいる……ということね。


『きりえぇええええええええええ! どこだぁああああああああああ!』


 どうやら向こうはわたしの姿を見つけられてない様子だわ。

 あんな大きな存在からすれば、わたしなんてミジンコみたいなサイズ感。


 だから、見つけられないんだわ。


「皆さん、今のうちに撤退をしましょう!」

「撤退……そんな! この国を見捨てるだべか、キリエ様!」


 デッカーちゃんが悲痛なる叫び声を上げる。


「ちがうわデッカーちゃん。一旦引きましょう。あんな大きな化け物相手では、こちらに甚大な被害が出てしまいます。いったん引いて、チャトゥラさんたちと協力して……」

『姐さん! 危ない!』


 雷狼ライガーのわんこさんが危険を知らせる。

 リョウメンスクナの目のあたりに、何か輝いていた。


 赤い光はとてもまがまがしく、わたしに嫌な予感を抱かせた。

 急いでわたしは神に祈る。


『死ねぇええええええええええええええええええええええ!』


 リョウメンスクナの瞳から2筋のビームが放たれる。

 そのエネルギーは地面を無理矢理引き剥がすほどだ。


『『『ぎゃああああああああああ!』』』


 あまりの熱量に、思わず魔物さん達が叫ぶ。

 だが……。


「すごいよ、おねえちゃんっ。あたちたち無事だわ!」


 妹鬼のひいろちゃんが安堵の声を上げる。

 ノアール神のお力で、敵のビーム攻撃を防ぐことができたみたい。


 でも……。

 周りの地面には今のビームによる傷跡ができていた。


 熱によって地面がガラス化してる。

 結界で防ぐことはできたけど、何度も張ったらこの星が傷付いちゃう。


『みぃいいいつけたぁああああああ! キリエぇええええええええええ!』


 ! なんで見付かったの……。

 と思ったら、地面でわたしが結界を張った部分だけ、無事だった。


 敵をあぶり出すためのビームだったのね。


『キリエ……キリエ……キリエぇええええええええええええええ!』


 ずぉおおお! と敵の体から莫大な量の魔力が湧き出る。

 びりびりと大気が鳴動するほどの、すごい魔力量だわ。


『殺す……! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! あんたは殺すぅううううううううううううう!』


 えっと……。

 ナンデこの人、こんなにぶち切れてるのかしら……。


 いや、今はどうでも良い。

 撤退を……。


『死ねぇええええええええええ!』


 再びビーム攻撃。

 今度は範囲を絞って、わたしだけを殺しに来た。


 聖なる結界でビームを防ぐことはできる。


『まだ……まだぁああああああああああああああああ!』


 出力がさらに上がる。

 結界は無事なのだけど……。


 ずぶ……ずぶぶぶぶ……。


『大変だ! ねえちゃんの結界が地面に沈んでいくよぅ!』

「敵の攻撃の勢いに押されているようじゃ」


 結界の中にダメージはないけど、それに接地してる地面の方に、衝撃が伝わってしまっているらしい。

 いけない、神が作りし星を傷つけてしまうわ……!


 それに……。


『ぴゅいい……こわいい……』『すらーたちつぶれちゃう……?』


 魔物さんたち、そしてトロルさんたちが怯えている……いけない。

 そんな暗い表情、させちゃいけないわ……!


「大丈夫、神さまが味方についてるわ……!」


 そう、いつだって天から、ノアール様が見守ってくれている。

 わたしたちの力強い味方になってくれるわ……!


『『『そうだった! わたしたちには、キリエ神がついてるんだった!』』』

「そう……! って、ちがあう!」


 ああもう!

 今はどうでもいい!


「神さま……どうか、お力を……!」


 わたしが渾身の祈りを捧げる。

 すると体から激しい光が放出された。


『巨人のビームを押し返していくぜ!』

『すごい! おねえちゃんバリアがひろがっていくー!』


 ずずうぅん……という大きな音がした。

 目を開けると、リョウメンスクナが仰向けになって倒れている。


「すごいべキリエ様! あんなでっけーばけもん押し倒してしまうなんて!」

「バリアが拡張して、敵を押し返したんだな……って、嬢ちゃん! 敵はまだ無事なようじゃぞ!」


 リョウメンスクナが立ち上がる。

 まだ……勝負はついてないわ。


 どうしよう……と思ったそのときだ。


「キリエえええええええええええええええええええええええ!」


 空中から、高速でなにかが近づいてくる!


「あれは……! アニラさん!」


 わたしの友達、魔王種がひとり、竜のアニラさん!

 彼女が勢いそのままに、リョウメンスクナの顔面を蹴飛ばす……!


「助けに来たぜ、キリエ! 仲間とともにな!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 神様、(本人否定)大暴れ。腐ちゃん、もしかしたら心を強制的に清らかにされちゃってキリエ様の忠実なる配下になっちゃう??(笑) [気になる点] リョウメンスクナが[オア向け]になって倒れてい…
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