79.百鬼夜行
《腐姫Side》
魔王のひとり、腐姫が発動させた儀式魔法……。
その名も、【百鬼夜行】。
一定範囲内にいる全ての生命を生け贄に捧げることで、100の邪悪なる神を召喚する外法。
……その、はずだったのだが。
『なぜだ!? どうして……1体しか召喚されないのだ……!!!!!』
肉体を失い、魂だけとなった腐姫が驚愕する。
腐姫から漏れ出た汚泥は、国中に広がった。
この泥に犯された生命は即死し、その魂は邪神への供物に捧げられるはずだったのだ。
しかし……である。
『ドワーフ、トロルなどの主要な生命は、ひとりたりとも生け贄に捧げられていない! だとぉ!?』
おかしい。
儀式の対象はこの国の全土。
トロル、ドワーフすべての命を奪い取っているはずなのだ。
だのに、そうならない。
なぜか?
『まさか……キリエ……キリエか……!!! 聖魔王の仕業かぁああああああああああああ!?』
魂だけとなっても、腐姫は魔法を使うことができた。
下僕のアンデッドを使って、様子を探らせる。
すると、この国の各地に、激しく光る場所があった。
よく見ると聖なる魔力が付与されていることがわかる。
『ドワーフどもの街、すべてに聖なる結界が張られてるだと!?』
そう、キリエはここに至るまで、立ち寄った街に聖なる結界を付与して回っていたのだ。
腐姫がまたいつ襲ってくるかもわからないので、街を出る際にちゃちゃっと結界を張っていったのである。
『ばかな……キリエ……! やつは、この儀式を使うことすら、読んでいたというのか!?』
まあ、誤解である。
別に儀式なんて知らない。
ただ町の人が危なくないよう結界を張っただけにすぎない。
『高度な儀式魔法を、中和するほどの、強力な結界を施せるなんて……くそ! やつめ、思慮深い上に、このような強力な結界まで使えるなんて! 化け物か!?』
まあ確かにキリエは化け物級に強いのだが……。
今回に限ってはたまたまである。
『まあ、いい。生き物の生命は奪えなかったが、この土地の生命エネルギーを、そしてこの魔王、腐姫の命を糧として、1体だけ召喚することができた……』
カイ・パゴスの土地は泥によって穢されて、土の中、大気中に含まれるエネルギーを全て奪われた。
大地はひび割れ、木々は枯れていく。
だが腐姫にとってそんなものはどうでもいいのだ。
すべてはこの儀式を使って、手に入れた力で、聖魔王を討伐すれば良い……。
国中に広がっていった汚泥は集まっていき、腐姫の前に集まる。
黒い球体となったそれは、【卵】だ。
『邪悪なる神よ! 今ここに顕現せよ!』
びきっ、と黒い卵にひびが割れて……。
そこから、莫大な量の魔力の嵐が吹き荒れる。
天は黒く染まり、雷鳴がとどろく。
異形の化け物がそこに召喚される。
「GYAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!」
それは、巨大な人だった。
否、人というにはあまりに巨大すぎ、また異形すぎた。
それには顔が二つあった。
腕は2対あった。
まるで、1人の上半身に、二人分のパーツがくっついてるかのようだ。
『鬼神リョウメンスクナ! 邪悪なる神よ! わたくしの呼びかけによくぞ応えたわ!』
鬼神……邪悪なる神の人柱。
リョウメンスクナと呼ばれし神は、ずぉ……と腕を伸ばしてくる。
腐姫の魂を指で摘まむと、そのまま口の中に入れる。
ごくん、と嚥下すると……。
『ぎゃはははぁあ! これよ! この圧倒的な力! わたくしは、神となったのよぉおおおおおおお!』
リョウメンスクナと腐姫は同化した。
ここに、神の力を手にした、【2体目】の魔王が誕生した。
そう……。
神の力を持つ魔王は、もうひとり居る。
ノアール神の力を持つ、聖魔王、キリエ・イノリ。
鬼神リョウメンスクナの力を持った腐姫。
ふたりの魔王が、激突する。
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