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69.キリエ汁



 わたしはどうやら、光の魔力とやらを体から放出し、それが湯に溶けて、みんなをいやしていたらしい。


「光の魔力ってなんなの?」

「回復術に親和性のたかい、特別な魔力のことや」


 イッコジーさん曰く……。

 魔法の原料になる、魔力。


 その魔力には性質という物がそれぞれあるらしい。


「魔法使い達によるとや、魔力は6系統にわかれるらしいねん」

「系統……」


 火、水、土、風、光、闇、の六系統だそうだ。


「火の魔力を持つものは、火の魔法と相性が良い。水の魔力なら水の魔法ってかんじやな」

「じゃあ……わたしは光の魔力をもっているから、光の魔法と相性が良いってことなのね」

「せや。光の魔法……つまり、回復魔法やな」


 なるほど……。


「まあでもわたしとは関係ないわね」

「な、なにいうてんの……?」

「だってわたしの治癒術は、神さまの力ですもの」

「またそれか……! せやからな、あんたのそれは、魔法! 魔力! あんたがぜーんぶやってるの!」

「またまた~」

「ああもう! あんたほんまば……天然やな!」


 また出たわ。

 天然……わたしそんな天然かしら……?


「ええか? あんたはとんでもない光の魔力を持ってるンや。あんたの使う回復魔法、結界魔法、浄化魔法、それらすべて、あんたが持つ莫大な量の魔力があってこそ、運用できてるんやで」

「いいえ、全部ノアール様のお力」

「意固地……! なんちゅー頭の固い女や……!」


 頭固いって言うか、だってわたし自身すごくないし。

 神さまがすごいんだし。


「せ、せやったら……証明したるわ。ちょっと待ってな」


 そういって、イッコジーさんは風呂桶を取り出す。

 外のシャワーで水をためて、わたしのもとへ持っていくる。


「なにするの?」

「あんたがど偉い魔力もってること、証明したるわ」

「風呂桶で?」

「せや。あんた、【水変すいへん式魔力診断】って知ってるか?」

「すいへん……? いいえ」


 イッコジーさんが、風呂桶を指さしながら言う。


「簡単な魔力の質をテストする方法や。

水は魔力をとかしやすい。一定量の水の中に向かって、魔力を込める。すると……」


 イッコジーさんが桶に手をかざす。

 風呂桶の水が、うすぅく、黄土色に変化したのだ。


「色が変わった。黄土色ね」

「黄土色の変化は、土の魔力や」

「なるほど……色によってどの魔力に向いてるのかわかるのね」

「そのとおりや。そして、色が濃ければ濃いほどに、高い魔力適性があるっちゅーわけや」


 イッコジーさんは凄い薄い、黄土色をしていた。


「嬢ちゃんがやれば、さっきみたいに金ぴかになるはずやで。やってみ?」

「あ、はい。ええと……えいやっ」


 その瞬間……。

 どどどどどどどどどどどどっ!


「んなっ!? なんやてぇえええええええええええええええええええええ!?」

 

 風呂桶から、大量の水があふれ出てきた!

 しかも……。


「え、ええ!? イッコジーさんこれ、真っ黒じゃないのー!」


 なんとあふれ出たのは墨汁みたいに、真っ黒な水だった!

 

「し、信じられへん……! 全属性持ちや! あんた!」

「ぜんぞくせい……?」


 なにそれ……?


「六系統、全部の魔力持ってるっちゅーこった! 絵の具全部の色混ぜると、黒になるやろ! 黒になったのは、全部の魔力を持ってるからなんや!」

「そ、そうなんだ……」


 しらなかった……っていうか!

 どどどどどどどどどどどど!


「いつまで黒い水あふれてくるのー!?」

「魔力込めすぎや! セーブセーブ!」

「やりかたわかないわよー! わーん! 助けてぇ……!」


 ……結局、お風呂場の床が浸水するレベルで、黒いお湯を出してしまったわたし……。

 でもなんか、浴びたくま吉君達は『めっちゃ体に力がわいてくるよー!』とのことだった。


 

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