68.おいでよ、女神の湯
商業ギルド、銀鳳商会のギルドハウスにて。
わたしたち女子チームは、魔物さんたちと一緒に、お風呂に入ることになった。
「わー! すごいべー! おおきなお風呂だべー!」
銀鳳のお風呂を前にデッカーちゃんが声を張り上げる。
気持ちはわかるわ。
湖みたいに広い湯船がそこにはあったのだ。
しかも……。
「湯船が、複数あるですって!」
「ボコボコ泡でているお風呂あるべ!」
「あっちは真っ白な湯船まで!」
見たことないお風呂にテンションがあがるわたしとデッカーちゃん。
イッコジーさんが得意げに胸を張る。
「銀鳳の風呂は、複数種類あるんや。泡風呂、ミルク風呂などそれぞれちがった効能があるんやで? どや?」
「「すっごーい!」」
お風呂にもそんなたくさんの種類があるなんて!
これはテンションがあがるわっ。
体をゴシゴシ洗ったあと、わたしたちは一番大きなお風呂に入る。
「『『はぁ~……きもちええ~……』』」
体が溶けて無くなりそう……。
外が寒いからかな、いつもよりお風呂が身にしみるわ……。
『ねーちゃーん、きもちいいね!』
「そうねくま吉君……」
くま吉君たちも湯船に浸かっている。
魔物さんたちがまとめてはいっても、まだ余裕があるわ。
「キリエ様! あっちに草浮いてたべ! 草が!」
「草?」
あっちのお湯で、ぷかぷかと緑の草の束が、湯船のうえに浮いている。
「ごみかしら?」
すると髪の毛をごしごしと、湯船の外で洗っていた、ドワーフのイッコジーさんが言う。
「ちゃうわい。あれは薬草。薬草風呂や」
「薬草なんて入れて意味あるの?」
「あるで。薬草から体に良い成分がにじみでて、疲労回復を助けてくれるンや」
なるほどぉ……。
お湯に何か入れるって発想はなかったわ。
「他にはどんなのがあるの?」
「柑橘系の果実を入れるやつとか、あとはミルク風呂とかあるで」
お風呂……なんと奥深い。
こんど奈落の森に帰ったら、試してみようかしら。
「イッコジーさん、髪の毛あらうのたいへんそうだべな」
まだ外で、わしわしと髪の毛を洗っている。
「ドワーフは剛毛やからなぁ。全部洗い流すのがめんどうなんや。キリエの嬢ちゃんは髪の毛さらっさらで羨ましいわ」
「そういうもん? わたし、イッコジーさんのその髪の毛も、力強くて素敵だと思うけど」
「あんがとな。せやけど毎回洗うのはめんどうなんや」
イッコジーさん髪の毛の量も多いものね。 大変……。
やっと洗い終えて、イッコジーさんがわたしの隣に座って……。
「はぁああああああああああああああああああああん♡」
え、え? え?
な、なに……?
イッコジーさん、お湯に入った瞬間、妙な声を上げたわ。
なんだか、甘い声……。
「か、体がとろけるでぇ~……なんやこれぇ~……すんっごいきもちええ……」
「え、ええと……そんなに?」
「ごくらくやぁ~……」
確かに気持ちいいお風呂だけど、そこまでなるかしら……?
「って、なんやこの湯船! 光ってるやん!!!!!! 白銀に!」
「? お風呂ってそういうもんじゃないの?」
「はぁああああああああああ!?」
驚くイッコジーさん。
あ、あれ……?
『ドワーフの姉ちゃん、おかしいでやんの。お風呂って光ってるもんでしょー?』
『ぴゅいぴゅい! ひかるもん!』
『ひかるー』
ほら、魔物さん達もこういってるわ。
「いやいや! おかしいわ! 湯船が光るってなんやねん! どないなっとんねん!」
「元からこうじゃなく?」
「ちゃうわい! いったい、なんでこんなことに……」
難しいことはわからないわ。
「わたし、あっちの薬草風呂ってのに入ってきますね」
「あたちもー!」
『あ、おいらもいくー』
ぞろぞろと、わたしたちは薬草風呂へと向かう。
湯船が緑で、きれいだわ。
わたしがお風呂に入ると……。
ピカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
『薬草風呂が、エメラルドグリーンに発光したー!?』
「すっごーい!」
驚く魔物さん達。
「たしかに、すごいわ……! 入る人を楽しませる施設になってるのね」
「原因あんたやぁああああああああああああああああああああ!!!」
イッコジーさんが湯船から出てきて、わたしのもとへ駆け寄ってくる。
あらまあ。
「こら、イッコジーさん、走ると危険ですよ。濡れて滑りやすいんですから」
「んなもんどーーーーでもええわ!」
どうでもよくないのに。怪我したらどうするのかしらっ。もうっ。
イッコジーさんは光り輝く薬草風呂をみながらいう。
「光り輝く風呂の正体が判明したで。キリエの嬢ちゃんの持つ、圧倒的な光の魔力が、お湯ににじみでてたんや」
「ええー……」
魔力がにじみ出てたですって……。
「こらすごいで。疲労回復、血行促進、病気まで治す!? どないなっとんねん!」
「効能なんてよくわかるわね」
「わいは鑑定スキル持ってるさかいな、鑑定スキル(上)」
なるほど……。
「こりゃすごいで……嬢ちゃんが入れば、どんなお湯もたちまち、名湯にはやがわりや」
『すごいね姉ちゃん! 女神の湯だ!』
いやいや……なにそれ……
女神の湯って……。
わたし女神じゃ無いんだけど……。
「なんっじゃこりゃああああああああああああああああ!」
「今度はなに……って、ええ!? い、イッコジーさん!? 髪の毛が……! さらっさらに!」
ボリューミーでゴワゴワしていた、イッコジーさんの御髪が、さらさらストレートヘアになっている!?
「女神の湯……すごすぎるで。髪の毛に栄養をあたえ、つやっつやにするんやん!」
「ねーちゃんすっげー!」
そんなことしてたのね、わたし……。
「全然気づかなかったわ……」
「そら嬢ちゃんがば……げふん、天然やからな」
そ、そっかぁ……。
天然なら、しょうがない……よね?
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