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63.策士?


腐姫くさりひめ視点》


 カイ・パゴスの王都カイの街にて。


 王城を占拠している、屍魔王の腐姫くさりひめは、目の前の光景に唖然とした。


「うそ……でしょ……?」


 腐姫くさりひめは死人の目を通した映像を、空中に魔法で映し出してる。

 それによると、待ち構えていたこちらの魔導人形ゴーレムたちを、キリエの配下が魔法でぶっ飛ばしたのだ。


「な、ナニあの威力……! 聖魔王は、あれほどまでの魔法力を持った配下をもっているというの!?」


 配下……鬼の少女ひいろのことだ。

 ひいろが放った魔法は、極大魔法といって、この世界の魔法使い達が、長い年月鍛錬に励んで修得する魔法の奥義。


「あんな子供にも極大魔法を覚えさせているですって……聖魔王は軍事国家でも作るつもりなの!?」


 単純にひいろが異常なだけであるのだが。

 腐姫くさりひめは、魔王種がキリエの側に二匹居ることを知らない(ひいろが魔王種と知らない)。


 だから、子供でもあんだけ強いって勘違いしてるのだ。


「しかも……聖なる力を使わなかった。魔導人形ゴーレムにそれは通じないってわかってたんだわ。どうやって……」


 グリフォンの子供、そしてスライムによる偵察があったからだ。

 しかしその二匹の存在を、腐姫くさりひめが感知できなかった。


 それはどうしてか?

 簡単だ、キリエが(無自覚に)聖なるバリアを張っていたからだ。


 キリエはぐーちゃんたちに、無事であるようにと祈った。

 その結果、彼女たちには不可視の結界が張られていたのである(キリエ無自覚)。


 不可視の結界とは、文字通り、敵からみえなくなる結界のことだ。

 もちろん超高度な結界術である。


「なんなの……キリエ・イノリ。あいつ……マジでなんなの! こっちの裏を平然とかいてくるし! 子供を使って油断させておいて、実は超強力な魔法使いとか! 策士すぎるでしょ!」


 別に策士というわけではない。

 単に腐姫くさりひめが深読みしているだけだった。


「くそ……聖魔王め……!」


 キリエを映した映像が、腐姫くさりひめの前に映し出される。

 茶髪に、青い瞳。


 確かに整った顔をしてはいるものの、特段美人というわけでもない。

 普通なのだ。


 こんな地味で、人畜無害そうな顔をしながら、腹の中では相手の裏をかく策士だなんて……。


「人は見た目にはよらないってやつなのね……」


 あわあわ、とキリエが映像の中で慌ててる。

 これもまた相手を油断させるための罠(かもしれないと屍姫は思ってる)。


「まあ……良いわ。向こうはこっちに来るつもりなようだし、本気でお相手してあげる」


 にぃ……と腐姫くさりひめが唇の端をつり上げる。


「わたくしのほうが上位の魔王であることを、教えてあげるわ」

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