61.次の方針
《キリエSide》
カイ・パゴスにやってきているわたし。
ノアール神様の聖なるお力で、ドワーフさん達を助けることに成功。
だが……。
「うんまぁい! こんなうめえもん食ったことないぞぉ!」
ガンコジーさんの弟、キムズカジーさんを含めたドワーフさんたちが、涙を流しながら、ご飯を食べている。
食べ物の実。
一見すると椰子の実みたいだけど、パカッと蓋を開けると、なかにはとんでもなく美味しいご飯が入ってる、ノアール様が作った神の食べ物である。
しかし……。
「すげえやキリエ神様! こんなうんめえものまで作っちまうなんてよぉ!」
「さすがキリエ様!」「すごいや神様!」
ああ~……また勘違いされてる~……。
違うのに~……。
『ねえちゃんいい加減に認めちゃえばいいのにね』
くま吉君がシチューをうまうま、と頬張りながら言う。
口の周りにシチューが付いていたので、ハンカチでふきふき。
「認めるもなにも、この力はノアール神様が授けてくれたものなのっ。わたしを神扱いしないでほしいわ」
『でも神様が授けたとしても、使ったのは姉ちゃんじゃん? なら姉ちゃんがすごいんだよ』
「違いますー! もう!」
ノアール神様は心の広い神様だったと聞く。
だから、みんなが間違ってわたしを神扱いすることに対しては、寛容なお心で許してくれるだろう。
けれども、よ!
この力は神様のものなのだから、みんな神様をあがめてほしいものだわ……はぁ。
「んで、姐さん。これからどーするんです?」
ドワーフさん、そして魔物さん達と一緒にご飯を食べながら、今後について話す。
「次はトロルさんたちを助けたいわ」
「トロル……ですかい?」
キムズカジーさんを含めた、ドワーフさん達の表情が曇ってしまう。
二種族は昔から争っていたと聞いていた。
だから、助けるって聞いて、いい思いをしないのだろう。
「わしは賛成じゃ」
「兄者……!」
デッカーちゃんの手を握りながら、ガンコジーさんが決然とした表情で言い放った。
そうよね、恋人のデッカーちゃんは、トロル族。
きっとデッカーちゃんのお父さんやお母さんも、不死の軍勢による被害を受けているにちがいない。
そんな彼女のために、ガンコジーさんは戦おうとしてるのだ。
「兄者……しかし相手はトロル……」
「関係ない。わしは愛する女の一族を助ける」
「…………」
デッカーちゃんがグスグスと涙を流してる。
美しい愛情だわ。
「もちろん、わたしや魔物さん達も加勢するわ」
『ねえちゃんがやるってんなら、力貸すぞー!』『ぴゅーい!』『おー』
くま吉君たちを含んだ、魔物さん達もやる気を見せている。
がしがし……とキムズカジーさんが頭をかいた後……。
「わかった、キリエ様。おれたちも手を貸すぜ」
「いいの?」
「もちろん。正直禍根がないといったら嘘になるが……親愛なるわれらが神が、救うというのなら、手を貸すのもやぶさかではございません!」
う、ううん……神じゃないんだけど、まあいいわ。
手が多い方がいいし。
「ありがとう。じゃあ、トロルを助けるとして、どこにいるのかわかってる?」
「たしか、マナカ湖って湖のほとりに、大きめのトロルキャンプがあったと思う」
「マナカ湖……そこをまずは目指しましょう」
こうして、次なる目的は、トロルの救出と相成ったのだった。
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タイトルは――
『勇者の兄、パーティ追放された幼なじみの付与術師を嫁にする〜実は世界最高の付与だったと、弟が気づいて謝りに来たけどもう遅い。嫁のサポートで勇者並みのスペックを手に入れた俺と田舎で2人暮らしてる』
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