58.ドワーフの街でも神扱い
わたしたちは氷の国カイ・パゴスにきている。
腐姫に説法しにいくため、道中、山小人の街【ニサラキ】に立ち寄ることにした。
『姉ちゃん! 大変だ! 武装した山小人がいっぱいだ!』
街の外壁の外。
わたしたちの目の前には、武器を持った山小人さんたちがいた。
みんな、その表情にはおびえや、敵意が見れるわ。
どうしたのかしら……?
「やいやいそこの猛獣使い!」
「猛獣使い……? 誰かしら……?」
「おまえだよ、おまえ! そこの茶髪の女ぁ!」
山小人のひとりが、そういう。
ええと……確かにわたしも茶髪だけども。
猛獣使いじゃないんだけど……。
「どこどこ?」
「おめえだよ! ふざけてるのか!?」
「いえ……わたしは猛獣使いではなく、天導教会の聖女、キリエ・イノリと申します」
「聖女ぉ……? 天導の……?」
天導教会とは、この世界で最大の宗教。
カイ・パゴスにもその名前は知れ渡っているはず。
その聖女となれば、警戒心をきっとといてくれるわ。
「嘘をつくな! 天導の聖女が、なぜ猛獣……いや、魔物をそんな引き連れてるんだ……!!!!!」
「た、確かに……!」
「肯定するな! 馬鹿にしてるのか貴様ぁ……!?」
ああもう、どうしましょうっ。
どうやら山小人さんたちは、敵だと思ってるみたいだわ。
どうしよう……神さまにお祈りしてみましょうか。
でもなぁ、人間同士のもめ事くらいで、神を頼るのはどうだろう。
神さまは忙しいかただし。
すると……。
「【キムズカジー】! 聞いてくれ!」
「きむず、かじー……?」
え、なに?
誰?
すると、大灰狼に載っていた山小人、ガンコジーさんが、わたしの前に立つ。
「キムズカジー!」
「あ、兄者ぁ……!?」
兄……?
キムズカジーさんっていうのは、わたしに疑いをかけてきた山小人さん。
彼はガンコジーさんを兄って呼んだ。
つまり……。
「あの山小人さんは、ガンコジーさんの……?」
「うむ、弟じゃ」
警戒心を保ちつつも、キムズカジーさんだけが、こっちにやってくる。
「兄者……? 本当に、兄者なのか……?」
キムズカジーさんは信じられない、とばかりに、お兄さんを見ている。
「だって……兄者は……ボロボロの体だったんじゃ……」
どうやらキムズカジーさんは、彼の状況を知っていたようだ。
アトリエにこもって、ボロボロになりながら、神器を作っていたって。
「うむ。じゃが、そこの聖女の嬢ちゃん……キリエ神様に助けてもらったんじゃ」
「キリエ……神!?」
いえ神じゃ無いんだけど……。
口を挟むとこじれそうなので、黙って兄弟の会話を聞いている。
「そうじゃ。神じゃ。なにせ、このわしの体を治すだけじゃ無く……見よ」
すっ、とガンコジーさんが右手の甲を、弟のキムズカジーさんに見せる。
くわっ、と目を見開いた。
「そ、それは黄金の手ぇ!? あ、兄者……!? でも……発現しなかったんじゃ!?」
「うむ。しかし、キリエ神が、わしに授けてくださったのじゃ……」
「なんと……! それは……すごい!」
天に召します、我らがノアール神さま。
どうか信者の間違いをお許しくださいませ。
どうやらわたしの手柄になってしまっているようです。
あなた様のおかげなのに。
どうか、寛容なお心で、お見過ごしくださいませ。
「不治の病を治し、しかも力まで付与するとは……あいわかった!」
キムズカジーさんは、その場で膝をついて、額を地面につける。
雪にずぼっと顔をつけてるので、さ、寒そう……。
「悪かった! 嬢ちゃん! いや、キリエ神……! あんたを敵だと思ってしまった! あの魔導人形や、ゾンビ犬から、守ってくれたっていうのに!」
「あ、い、いえ……気にしないでください。気が立っていたんですよね? 戦いで」
じゃあしょうがないわ。
それにいきなりよそ者がきたら、びっくりするでしょうし。
「おお! なんとお優しい……心の広い神さまだ! なあ兄者!」
「そうじゃ、キリエ神様は、とても優しく、そして強く、それでいて心の広いお方なのじゃ……」
「ははあー!」
……ああもう。
ここでも神扱いだわ。
やめてって言ってるのに~……わたし神さまじゃ無いのに~。
どうしてこうなるのかしら……?
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