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54.広げよう、キリエ神の教え



 氷の国に来ているわたしの元に、くま吉くんがやってきた。


「おねえちゃーん!」

「ひいろちゃん」


 妹鬼、ひいろちゃんもくま吉君と一緒にやってきたのだ。

 いったいどうやって……?


『ひいろがよぉ』

「うんうん」

『急にぐわー! と体が光って、そしたらおいらが、気づいたらここにいたってわけ!』


 くま吉君が説明してくれたのだけど……うーん……アバウト。

 しかし光った……?


「何かしたの?」

「うん。お姉ちゃんの元にね、飛びたいなぁって思ったの。でね、とれんときんぐさんからね、まほう? のてきせーがあるっていうから、まほーつかったの!」

「まあ……魔法……」


 そういえば聖十二支デーバのひとり、アニラさんが言っていたわ。

 ひいろちゃんは魔王種であると。


 魔王種。なんだかすごい魔物の種族らしい(わたしも入ってるのが解せないけども)。

 だから、ひいろちゃんは魔法を習得できた……ってことかしら。

 

 しかも転移魔法。

 すごい難しいって樹木王トレント・キングさんが言ってたっけ。


「でも転移ってひとりだけしか飛べないんじゃ」

「あたち、くまきちの上に乗ってたの。あと、すらちゃんも!」


 ひいろちゃんの胸元から、スラちゃん飛び出てきた。


「ぴゅい! すらちゃん、くまきち~!」

『これでみんなそろったな!』「おそろー」


 わー、と喜ぶくまちゃんズ(命名わたし所要時間3秒)。


「それと……この狼さんたちはいったい……?」

『あっしが説明します』


 ずい、と1匹の狼がわたしの前に現れる。

 右目にひっかき傷があって、特徴的だった。


『あっしは姐さんに命を救われた、灰狼グレー・ハウンドでございます』

灰狼グレー・ハウンド……? 助けた……?」


 はてそんなことしたかしら……?


『ゾンビとなり、自我を失い、そちらの可愛らしい桃色髪のお嬢さんを襲ってしまっておりましたでさぁ』

「あ! おらを襲ってた、あのゾンビ犬たちだべな?」


 デッカーちゃんが声を張り上がる。

 ああ、わたしがこの国に来たばかりのときに、お祈りして追い払った子達ね。


『姐さんのおかげで、あっしらは正気に戻れやした。あっしら灰狼グレー・ハウンドは、あなた様の軍勢に加わりたいでさぁ』


 ぐ、軍勢って……別に軍じゃないんだけど。

 でもどうしよう。


 まあ。森の民が増えるのは、歓迎するべきことね。


「わかったわ。じゃあ、あなたたちは今日からわたしのお友達ね」

『了解でさぁ! 姐さん!』

「姐さんって……まあいいけど。とりあえず、お名前つけないとね」

『いいんですかい!?』

「無いと不便でしょう?」


 灰狼グレー・ハウンドに名前を付けていく。


 代表してしゃべっていた灰狼グレー・ハウンドさんに……。


「そうね、わんたちゃん」

『え?』

「え?」

『あ、あの……あっしは雌でさぁ……』


 なんと、雌とは。


「これは失礼したわ。じゃあ、わんこちゃん」

『へい! あっしは今日からわんこでさぁ!』


 しゅおん、とわんこちゃんが光り輝く。

 どうやらわたし(神の使徒)の仲間となったことで、神様がご加護を授けたようね。


『でたー、姉ちゃんのパワーアップ!』


 くま吉君、それだとわたしがパワーアップしてる、ないし、わたしがパワーアップさせてるみたいじゃないの……。

 灰狼グレー・ハウンドのわんこちゃんが、ぐぐん、と体が大きくなる。


 右目の傷はそのままに、側頭部から2本の角が生えた。

 ええと、鑑定……!


雷狼ライガー(S)

→雷をまとう特別な狼型モンスター。


 樹木王さんからコピーさせてもらった鑑定スキルによると、どうやらわんこちゃんは雷狼って種族になったみたい。


『おお! 力がみなぎります! ありがとうございやす!』


 そのほかの灰狼グレー・ハウンドさんたちにも名前を付けたところ、大灰狼グレート・ハウンドって種族になったわ。

 もふもふであふれたアトリエの中を見渡し、くま吉君がひとこと。


『また姉ちゃんの配下が増えたなー』

「だから配下じゃないわ。さ、くま吉君、いきますよ」

『おう! って、どこに?』


 わたしはくま吉君の背中の上に乗っかる。

 ああ、もふもふで落ち着くわ。


腐姫くさりひめって悪い人が、この国で悪さをしてるの。だから、説法しにいくの」

『おせっきょー?』

「違うわ、説法。神の教えを説きに行くの」

『なるほど! ワカラセってやつだな! おいらも力貸すよー!』


 くまちゃんズがやる気を出してる。

 微妙にわかってない感がすごいけども……。大丈夫よね、きっと。


「さ、出発よ!」

『『『おー!』』』


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