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48.常冬の国



《キリエSide》


 ……気づいたら、目の前が真っ白だった。

 

「さむ……! ここは……?」


 四方を見渡しても真っ白で何も見えない。

 でも身体が……寒い。


 顔に当たるのは猛烈な吹雪。

 

「ここは……くしゅっ」


 多分だけど、またも神を求めるものがいたのだろう。

 わたしはその声に導かれて、召喚された……のだけど。


「さむい……さむいわ……凍え死んでしまいそう……」

「ぴゅいぃ! おねーちゃーん!」


 そのとき、頭の上に乗っていた何かが、コロンと落ちてきた。


「ぐーちゃんっ」

「ぴゅい! ぐーちゃん! です!」


 グリフォンのぐーちゃんが、頭の上の乗っかっていたのだ。

 そういえば、ここへ導かれる前に乗っていたわね。


「おねーちゃん! ぎゅーってして!」

「ぎゅー?」

「ぎゅー!」


 よくわからないけど、わたしはぐーちゃんをぎゅーっとする。

 すると……ほわん、となんだか温かいお湯にでも浸かってるような心地がした。


「あ、すごい……温かいわ……」

「ぴゅい! とれんときんぐ、ゆーてた! ぐーちゃん、適応! どんなとこでも、生きてける! 力!」

「適応……つまり、この寒さもぐーちゃんの能力で、柔らいだと?」

「ぴゅい!」


 ぐーちゃんがそばに居てくれたおかげで、凍え死ぬことはないみたい。

 

「ありがとう、ぐーちゃん」

「ぴゅい! どーいたしましてっ」


 とても運良くぐーちゃんがそばに居てくれたのも、やっぱり神の思し召しね。

 ありがとうございます、ノアール神さま。それとぐーちゃんもありがとう。


「で、ここはどこなのかしら……?」


 寒さは和らいだけど、ここがどこかわからないことには変わらないわ。

 まあそれは二の次でもいいけども、問題は救いを求めている人が、どこにいるかなんだけど……。


「た、たすけて……たすけてほしい……んだべぇ……」

「! 今どこからか声が……」


 わたしはぐーちゃんを抱っこした状態で、声のする方へと進む。

 吹雪で身体が持ってかれそうになりながら、えっちらおっちらと向かう……。


 そこには……。


「ぴゅい! なにあれ狼!?」

「いや……生き物じゃないみたい」


 言うなれば、ゾンビ犬かしら。

 皮膚がただれ、肉や骨がのぞいてる、犬だわ。


 ゾンビ犬が何かを取り囲んでいる。

 なにか……大きな……。


「あれ……なぁに? おっきい……人?」


 ゾンビ犬が取り囲んでいるのは、ぐーちゃんの言う通り、巨大な人だわ。

 粗末な革の布を身体に巻き付けている。


 大きな人間の女の子が丸くなって、それをゾンビ犬が取り囲んでいる。

 いけない! 助けないと!


「でも……ああどうしましょう。わたしではケガを治すくらいしか……」


 ここは神に頼むしかないわ。

 ノアール神さま、どうか……あの大きな女の子をお救いくださいませ……。


「ぴゅい! でたー! おねえちゃんの、はねーびーむ!」


 はねビーム?

 ずどどどどお! という音が近くからする。


 ゆっくりと目を開けると……ゾンビ犬が倒れていた。

 そしてそのゾンビ犬たちが、みるみるうちに、元の姿に戻っていく。


「がう……?」「ぎゃう……?」「ごぎゃう……?」


 元の生きてる犬の姿に戻った彼らが、戸惑ったように周囲を見渡す。

 敵意はなくなったみたいね。


 わたしは急いで、大きな女の子のもとへいく。


「あの! 大丈夫!」

「あ、ああ……おらはもう、しんでしまうんだ……」

「え? なにいってるの?」

「だってあんた、おらをお迎えに来た天使なんだべ……? 翼と輪っかが生えてた」

「いいえ、人間ですけど」

「そうなんだべか……?」


 きょとんとした顔の女の子。

 あら、よく見ると結構幼い見た目だわ。


「わたしはキリエ。神に仕えるものです。神に救いを求めたのはあなたね?」

「そ、そうなんだべ! ガンコジーが! ガンコジーが死んじゃいそうなんだべ!」

「がん、こじー?」「おじーちゃん?」


 ふるふる、と女の子が首を振る。


「お、おらのその……ともだちだべ」

「なるほど……友達がピンチなのね」

「んだ! 病気で死にそうなんだべ! 天使様、どうか、ガンコジーたすけてほしんだべ!」


 ……なんて優しい子なのだろう。

 自分ではなく、他者のために、助けてあげようと動くなんて。

 

 この大きな女の子は、とても、勇敢で、とても優しい子だわ。

 こんな子の涙を、わたしは見たくないし、神さまはこの子を助けろと、そう言ってるのだわ。


「わかったわ。わたしをその、ガンコジーって人のところに連れてって。治癒術の心得があるの、わたし」

「たすかったべ! ありがとう!」


 泣いて喜ぶ巨人……そうか、巨人なのかしら、この子。


「それであなた……ええと、お名前は?」

「おらに名前なんてねーべ」

「そう……それは困るわね。えと……じゃあ、デッカーちゃん! どうかしら?」


 大きいくて可愛いからね。


「お、おらに名前くれるんだべか?」

「ええ。どう?」

「気に入ったべ! おら、デッカーだべ」


 その瞬間だ。

 しゅおん! とデッカーちゃんの身体が輝き出す。


 まただわ!

 神様がご加護をお与えになられたのだ。


 デッカーちゃんのサイズが、みるみるうちに縮んでいく。

 桃色の、もさもさした髪の毛。


 でもくま子さん並に、抜群のプロポーションをしてる。


「か、身体が縮んでるべ! トロルじゃなくなったんべか?」

「とろる……?」


 そういえば、昔本で読んだことあるわ。

 たしか、氷雪の国カイ・パゴスにいるっていう、巨人の魔物……。


 って、カイ・パゴス!

 わたしたちの居た場所から、南東にずっといったところにある、冬の国じゃないの!

 

「遠くに来てしまったわ……」


 勝手に遠出してしまい、怒られてしまいそう。

 あわわわ。


「ありがとう! 天使様! ありがとうだべ!」


 デッカーちゃんはわたしに抱きついて、わんわんと泣き出した。

 ど、どうしたのかしら……?


「これでおら……ガンコジーと同じになれた……!」

「? よくわからないけど……早くその人の元へ連れてって。大事なお友達なんでしょう?」

「んだべ! こっちだべ!」


 小さくなったデッカーちゃんが、ずんずんと前を進んでいく。

 この猛吹雪の中、まるでくま子さんみたいな力強さで、ずんずんと進んでいくわ。

 これも神のお力があったからこそでしょう。


 まあ、こうしてわたしは、カイ・パゴスという国に召喚され、元トロルのデッカーちゃんの依頼で、そのガンコジーってひとの病気を治しに向かうのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 巨人で、〝デッカー〟…………ウ●トラマッ!
[気になる点] 「これでおら……ガンコジーと同じになれた……!」 ガンコジー?鍛冶屋の?
2023/04/24 18:02 退会済み
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