194.守護神
《逢魔Side》
逢魔は宇宙にて、闇の力を解放した。
それは星を食らう力、星食いと呼ばれる最終奥義。
噴出した闇は、星を食べるまで広がり続ける。たとえ、結界を使って防ごうとも、結界事星を食らうのだ。
目の前には青き星が広がっている。
そこにめがけて、吹き出した大量の闇が広がっている。
『ぎゃはっははあ! 終わりだぁああああああああああ!』
闇は星を丸ごとくらった。
後には何も残されていない。これで、勝利だ……!
「いいえ、あなたの負けです」
『キリエぇ……!?』
そこには翼を生やしたキリエがいた。
逢魔は、魔法で体に結界を張り、宇宙空間でも動けるようにしてる。
一方でキリエにはそういった類いのものを感じられない。
まさか、生身で宇宙空間にいられるというのか!?
「ふ、ふん……! だがおまえの守りたかったものは、たったいまおれが飲み込んでやったぞぉ!」
星食いの力は一度しか使えない。だが、もう目的は達成してる。
「いいえ、あなたは星を食らったわけではありません。見なさい」
キリエが指さすその先には……。
「青き星!? ばかなっ!?」
たった今逢魔が飲み込んだばかりの、青い星がそこにあった。
あり得ない……!?
「おれはきちんと星をくったはずだ!?」
「ええ、あなたは確かに食べました。でも、わたしたちの星は生きています」
「どういうことだ!?」
キリエが言う。
「あなたが食べたのは、わたしが作り出した偽物なのです」
……一瞬、言ってる意味がわからなかった。キリエは説明する。
圧倒的な力の差を、見せつけるかのように。
「あなたは今、領域結界のなかにいます」
「領域結界?! まさか……あれは天のものたちが使う秘術じゃないか!」
自らの心の内側を、結界のなかに投影するという、秘技だ。
「あなたが今いるこの宇宙空間そのものが、わたしの作り出した領域です」
「は、はぁあああ!?」
……理解しようとするも、やはり理解できない。
「わたしは領域を展開し、あなたを結界内に閉じ込めました。そして、結界に宇宙を、作りました。あなたはその作られた宇宙の、作られた星をくっていたのです」
……説明されても、やっぱり理解ができない。
「二つ目の青き星は?」
「結界を一部解いて、あなたにも見えるようにしただけです。本物の青き星は結界の外にあったので、無事です」
……つまり、逢魔はこの女の作った宇宙に閉じ込められ、この女の作った星をくって、悦に浸っていたということだ。
「なんだ……それは……宇宙を……作り出す……なんて……まさに……神じゃあないか」
はっ! と逢魔が我に返る。
神を自称していた逢魔にとって、相手を神とあがめること。それはすなわち、最大の屈辱であった。
「そう、わたしは……神! 聖女神キリエライト!」
キリエは堂々と、否定することなく、まっすぐに肯定する。
「この星を守る……守護神です!」




