193.祈りを力に
逢魔が最後の手段を使って、攻撃してくるという。
だが、シュンッ! と逢魔が目の前から消える。
『消えたよっ? お姉ちゃんがやっつけたのかっ?』
くま吉くんが困惑してる。
……わたしには、わかる。神の持つ全知全能の力は、わたしが知りたいとおもったことを、教えてくれる。
「いいえ、まだです。やつは……空に……いいえ、宇宙にいます!」
わたしが指さす先には、黒い球体が浮かんでいた。
『ぴゅい……? 月……?』
「いいや、違う! あれは……月じゃあない!」
チャトゥラさんの言うとおりだ。
隣には本物の月がある。あれは……月並みに巨大化した、逢魔の闇の力だ。
『まずいぞ、キリエ』
未来視の力を持つ、ハクタクのヴァジュラさんが言う。
『このままではあの闇の力は破裂し、この星を丸ごと消し飛ばす!』
……わたしにもわかっていた。
あの力のせいで、この星が滅びてしまうことを。
そして、その衝撃は結界で防げないということを。
結界で防いでも、闇の力は結界を蝕み、やがて星を食らう。
『ねえちゃん……! なんとかしてくれるんだろうっ!』
くま吉くん、そして、森の皆が……わたしに期待してくれる。
世界を救ってくれるって。
……ああ、皆の期待が、信頼が、わたしに力をくれる。
『きりえさま、かがやいてる……!』
すらちゃんがわたしを見て叫ぶ。
わたしの短かった髪の毛が伸びる。
七色に、極光を放つ。
「わたしが……世界を救う! みんな……わたしを信じてください!」
わたしが言うと、みんなが……祈る。
わたしに、神に祈りを捧げている。
……そうか、わたしは、理解しました、ノアール様。
祈ることで、人と神の心をつなげることができるんですね。
みんなの強い思いが、伝わってくる。
わたしに、助けて欲しいという、強い思いが……。
信じるものの祈りを、力に変える。
そしてそれを体現するのが……神。
わたしは皆の祈りをあつめ、そして……力を行使する。
世界を、皆を、救うために。
「【領域結界】!」




