188.神、再臨
逢魔。ノアール神の遺体をあやつる、魔王種。
ノアール神の強大な力の前に、奈落の森の主、キリエは殺されてしまう。
逢魔は闇の力を使って、星を食らう闇の魔物を生み出した。
世界が今……闇に沈みかけていた。
が。
「やらせません……!」
ざんっ! とネログーマに現れたのは、白銀の髪を持つ青年……チャトゥラ。
「キリエ様がお戻りになるまで! この星は……我ら聖十二支が、お守りするのです!!!!!! わかりましたね、皆!」
チャトゥラの声が世界に響く。
彼に言われて、聖十二支……キリエより力を貰った魔物達が、世界各国に転移する。
シンドゥーラやハクタクのヴァジュラ等、神の力を分け与えられし守護者達が、己の力を用いて、魔物をたおしてく。
「邪魔してんじゃあねえぞ、犬っころ」
チャトゥラの前に、突如として一人の男が転移してくる。
「貴様が……逢魔だな」
「おう」
チャトゥラの目に殺意がみなぎる。
彼が怒るのも当然だ。キリエを殺した、張本人なのだから。
彼らの愛する、優しき魔王を殺した……憎き敵!
だが……。
チャトゥラは逢魔ではなく、人を襲うとする闇の魔物を倒していく。
「おおい、無視するんじゃあねえよ」
逢魔が先回りしてきて、蹴りを放ってくる。
チャトゥラはそれをギリギリで見極めて避ける。
だが、やはり反撃はしない。
「なんだ? 主のために、一矢報いるようなことはしないのか?」
「ふっ……そんな無駄なことはしませんよ」
「無駄だぁ?」
「ええ。なぜなら……帰ってくるから。我らが神は」
「ちっ……どいつもこいつも! 良いか! 神はおれだ! ノアール神こそが、神!」
ノアールは飛び上がる。
そして、両手を広げる。
黒い稲妻が発生し、チャトゥラに直撃する。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされ、地面に転がるチャトゥラ。
「神を侮辱した愚か者は、ここで処刑してやろう!」
ノアールが手をかざす。
上空に超巨大な黒い炎の塊が出現する。
チャトゥラではあれを消すことはできないだろう。
かといって、逃げ切れない。稲妻の直撃により、脚が黒焦げになってしまってる。
「……キリエ様。申し訳ありません。私は……ここまで……」
「死ね……!」
黒い炎が地上へと降り注ぐ。
どがぁあん! という大きな音とともに、爆煙が広がる。
「はっはっはー! 見たか! これが……神の力だぁ……!」
そのときだった。
「いいえ」
と、どこからか声が聞こえる。
黒い炎が、消える。
「なにぃい!?」
「……信じておりましたよ」
涙を流しながら、チャトゥラは上空を見やる。
そこに、居たのは……。
七色の、3対の翼を纏い、美しい白い衣装に身を包んだ……。
短髪となった……。
「キリエ様……!」
聖女キリエが、本物のノアール神より、力を授かり、地上に再臨したのだった。




