180.真実
……逢魔の正体が、ノアール様?
うそ……。
逢魔は……わたしたちの森に、攻撃を仕掛けてきたやつよ?
それにかぐやさんたち、この塔に住んでいた人たちを殺してしまったような……悪い人。
そんな人が……わたしがずっとあがめていた神?
「…………うそ」
「残念ながら本当なんだぜ、キリエ。見てたよ、おまえのことは」
……本来なら泣いて喜ぶべきシーンなはずだ。
わたしが敬愛しているノアール様、本人ならば……。
……。
…………キリエ。駄目よ。動揺しちゃいけないわ。
それが相手の狙いかもしれないし。
「へえ……おまえ、意外と冷静なんだな」
「……あなたが、本物のノアール様なわけがない」
「なるほど、事実の否認ね。でもよぉ、これマジなんだぜ? 見な?」
ぱちんっ、と逢魔が指を鳴らす。
すると彼の目の前に剣が出現する。
『姉ちゃんと同じだ!』『ぴゅい! なにもないところから、モノを作り出したのねっ!』『きりえさまとおなじー』
……。
…………わたしの持つこの力は、ノアール様由来のもの。
彼が想像の力を使えたということは、つまり……。
「そうさ、おれが創造の神ノアール、ご本人さまだよ」
「…………」
うそ……。
信じたくない……。
ノアール様が、そんな……人を傷つけるなんてこと、ありえない……。
「だって……だって……ノアール様は、天導の教典では……慈悲深く、優しい人だって……」
ああ、と逢魔は……いえ、ノアール様はため息交じりに言う。
「それな、嘘だよ」
「うそ……」
「おれの周りの連中……やべえ信者どもがさ。おれのエピソードを誇張しまくって書いてよお」
「そん……な……」
じゃあ……。
少女を襲った魔物を、炎一発で倒したことも。
潜伏した魔族を見抜いて、撃退したことも。
教典に載っている、彼の行った善行はすべて……。
「ぜーんぶ、作り話の嘘っぱちさ。おれは善なる神なんかじゃないんだよ」
【★大切なお知らせ★】
新作
『虐げられてた片田舎の治癒師、自由気ままに生きる〜辺境の村で奴隷のようにこき使われてた私、助けた聖獣とともに村を出る。私が居なくなって大変お困りのようですが、知りません』
を投稿しました!
https://book1.adouzi.eu.org/n7876jj/
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