176.敵
皆さんを外に送り届けて、わたしはまた封神の塔へと戻ってきた。
かぐやさんを助けたので、あとは、ここに居座ってる悪いひとを、説法するだけだわ。
「わらわも力を貸すぞ」
「かぐやさん! 皆置いてきたのに……」
ここから先は危ないから、魔物の子供達は置いてきたのだ。
一人で解決しようと思ったのだけど……。
「わらわにもやらせておくれ。これは……わらわもやらないといけないことじゃ」
元々ここの主はかぐやさまだった。
でも、新しくやってきた悪い人にその座を奪われた。結果、ここを訪れる人たちの命を落とす羽目になった。
……自分のせいで、皆を苦しめてしまったと、そう思ってるのだろう。
「けれどわらわ一人ではまた返り討ちにあってしまうじゃろうて。だから頼む、キリエよ。わらわに力を貸しておくれ」
ぺこり、とかぐやさんが頭を下げてくる。
わたしは彼女の肩に手を置く。
「わかりました。一緒に、行きましょう」
「すまない。恩に着るのじゃ」
「それで、敵の名前は?」
すると彼女はこういう。
「逢魔、となのっておったのじゃ」




