170.暗黒騎士ゆらちゃん、加入
封神の塔にて、デュラハンちゃんに、【ゆらちゃん】と名前をつけた。
すると、進化して、鎧を着た美少女に進化したわ。
これもノアール様のお導きね。
『ゆらちゃん! おいらはくま吉! で、ぐーちゃん、すら、ムイちゃん!』
魔物の子供たちが集まって、話し合っている。
ゆらちゃんはしゃがみ込んで、くま吉くんたちに、目線を合わせてるわ。
ゆらちゃんのほうが身長が高い。
くま吉くんたちが、首が疲れないようにしてるのね。優しい子。だから、ノアール様がお力を与えたのだろう。
「…………ゆら、です。センパイ」
『『『『!?』』』』
くま吉くんたちが目をむく。
『ぴゅるる? せんぱい?』
『せんぱいって、なぁに?』
『ムイ!』
『さきにうまれた、おにいちゃんって……こった!』
『『『おにいちゃんっ!』』』
ぐーちゃんとムイちゃんは女の子だから、お姉ちゃんのような気がするけど。
『ゆらちゃんは、じゃあ妹だ! おいらたちの、妹!』
『ぴゅいー! だいじにしないとね!』
『すらおにいちゃんだからー』
『ムムイ!』
わあわあ、と盛り上げる魔物の子供ら。
むいちゃんはうれしそうに、微笑んでいた。ああ、神様、なんて平和な世界なのでしょう……。
「キリエ姐さん」
わんこさんが近づいてきた。
「近くを調べてみやした。どうやら魔物はこの近辺にはいないみたいでさぁ」
「まあ、調べてくれたの。どうもありがとう。優しいのね」
「いえいえ」
さて……これからどうしましょう。
というか。
「ゆらちゃんって、元デュラハンよね? 今は進化して……何になったのかしら?」
するとゆらちゃんはこっちを見て……。
恥ずかしそうに、顔を赤らめ、くま吉くんを抱き上げる。
『お? なんだいゆらちゃん?』
「…………はずかし」
恥ずかしい……?
「キリエ様……きれい……恥ずかしい……」
ううん……どういうことなんだろう……?
きれいだから、恥ずかしい……。
「ゆらちゃんもきれいよ?」
「…………………………ぁう」
顔を真っ赤にするゆらちゃん。
くま吉君が、ぴん、となにかに気づいた表情になる。
『ねえちゃん……これ、メデューサの姉ちゃんと一緒だ!』
メデューサ・サンティラ。
わたしと同じ、魔王種がひとりで、聖十二支の一人。
まあ友達のことだ。
「メデューサさんと同じって?」
『キリエ姉ちゃんに……ぞっこんってこったな!』『めろめろってことだー!』『ちゅきなんだ~』『むいむい! 一緒だね!』
なるほど……
魔物の子らと同様に、わたしのことが好きと……。
「わたしもゆらちゃん、大好きですよ~」
魔物さんはみんな友達だし、愛しい存在。
好きに決まってる。
「!?」
ゆらちゃんは顔を真っ赤にして……その場で倒れた。
『ゆらちゃーん!』『ぴゅいー! たおれたー!』『きりえさまぱわーだぁ』『むい!』
あわわ……ど、どうしちゃったのかしら!
「しあわせ……すぎて……死ぬ……♡」
「死んではだめですっ!」
その後なんとか回復したゆらちゃん。
「ゆらは……【暗黒騎士】に進化したの」
「暗黒騎士……! 強そうね」
「ありがとう……キリエ様……♡ ゆら……しゃべれるようになった。ずっと……おしゃべりしたかったの」
「そっか……その気持ちわかるわ。わたしも、一時期しゃべれなかったから」
盗賊に親を殺されたトラウマで、言葉がしゃべれなかった時期があるのだ。
だから、この子の痛み、苦しみは理解できる。
……うんと、優しくしてあげないと。
「ねえ、ゆらちゃん。わたしたち……森の仲間にならない?」
「! い、いいの……?」
「うん! 一緒に森へ行って、そこで楽しく暮らしましょう?」
じわ……とゆらちゃんが涙をためる。そして何度もうなずいた。
「ありがとう……キリエ……様♡」
こうして、デュラハン改め、暗黒騎士のゆらちゃんが、奈落の森のメンバーになったのだった。




