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169.進化デュラハン



 ダンジョン封神の塔へとやってきた、わたしたち。

 デュラハンがわたしたちの前にやってきたけど、別に襲いかかったわけじゃなかった。


『でゅでゅ……でゅ……いいにくいいおまえっ!』


 くま吉がぺんぺん、とデュラハンさんの背中をたたく。

 ぺこぺこ、とデュラハンさんが頭を下げてる。


 いかつい見た目に反して、優しい子なのかもしれないわ。


『ぴゅ! なら……ねーちゃのばんだね!』

『それなー』

『ムイムイ! きりねーちゃの名付けセンス、ばくれつです!』


 じっ……と魔物の子供らがわたしを見やる。

 

「そもそも……デュラハンさん、あなた……お名前は?」


 ふるふる、とデュラハンさんが首を横に振る。

 どうやら名前はないみたいだ。名前持ち(ネームド)モンスターは少ないって言っていたものね。


 他の子らに名前があるのに、この子だけないのは、かわいそうだわ。


「わたしがつけてあげましょうか?」

「!?」


 いいの、といってるのが伝わってくる。

 ノアール神さまのお力がなくとも、伝わってくる。


「じゃあ……そうねえ……」


 どういう名前がいいかしら。

 でもデュラハンって、言いにくそうだったし。


 でもでも、子供たち、みんなもわかるような名前がいい……。

 ええと……ううん……。


 デュラハン……

 ゆら……。

 うん!


「ゆらちゃん! ゆらちゃんはどうかしら!」

『『『おー! しんぷる、いず、べーすと!』』』


 子供たちは気に入ったようだ。

 一方でデュラハンさん……はどうかしら?


 パァアアアアアアアアアアアアアア!


「え!?」


 みるみるうちに、デュラハンさんの姿が変化していく。

 首のなかった子が……。


 きれいな、鎧を着た、背の高い女の子に変わったのだ!


『ねえちゃんぱわーだ!』

『またねーちゃがなづけてしんかした!』

『やっぱぱねー』

『ぱなーい!』


 そ、そういえばわたしが名前をつけると進化するんだったわ。

 ひさしぶりだから、忘れちゃってた。


 うう……。ま、まあそれはどうでもよくって!


「えと……ゆらちゃん……? でいい?」

「…………………………………………」


 顔を赤らめながら、こくんとうなずいた。

 どうやら、こんなおっきい見た目で、ちょっと照れ屋さんみたい。

 でも、気に入ってくれてよかったわ。


「……………………あの」

「どうしたの?」


 ゆらちゃんが微笑みながら、言う。


「……………………あり、がと♡」

「どういたしまして!」

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