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152.発明王キリエ


 イッコジーさんがデッドエンド村に移住することになった。

 仲間が増えることは嬉しいのだけど……。


「でも、大丈夫なの? こんなへんぴな場所に住むなんて。イッコジーさんって、商会のギルマスなんでしょう?」


 大きな商業ギルド、銀鳳ぎんおう商会でギルドマスターをしてるらしい。

 田舎でギルマス業務ってできるのかしら……?


「そこでわしが、最近開発してる、魔道具の最新魔道具の出番じゃ」

「最新……魔道具?」


 ガンコジーさんのおうちへと向かう。

 そこには、巨大な円形のオブジェクトがあった。


 2本の柱が、大きな円形のオブジェクトを挟んでいる。


「これは?」

「転移門じゃ」

「てんいもん……?」


 何かしら、それ……?


「空間をつなぎ合わせ、別の場所へと移動するというものじゃ」

『なんじゃそりゃー?』『わからーん』『ぴゅい! むつかしー』


 魔物の赤ちゃんたちが首をかしげる。

 わたしもさっぱりだった。


「ようは、高度な転移魔法を使えずとも、行きたい場所へ転移できるってことだ」

『! しゅげー!』『しゅごー』『ぴゅい! どこでもいきほーだい!』


 それが実現するなら、本当に凄いことだと思う……。

 転移魔法って凄い高度な技術だって聞くし……。


「と言っても、まだ起動できんのじゃ」

「そうなの?」

「うむ。理論上、これ動くはずなんじゃが、どうにも何回やっても起動できん」


 ふぅん……どうして起動しないのかしらね。

 私はオブジェクトに、なんとはなしにぴたり、と触れる。


 すると……。

 カッ……!


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオ!


 円形のオブジェクトの内側に、七色の光の膜が出現した。


「え、なにこれ……?」

「おお! 動いたぞ! 成功だ!」

「え、う、動いたの? なんで……?」

「恐らく起動には莫大な量の魔力が必要じゃったのだろう。キリエ嬢ちゃんが魔力を付近でくれたおかげじゃ」


 ええ……。

 ただ触っただけなんだけど……?


『ねーねー、転移してみてー!』


 くま吉君がわくわくしながら尋ねる。

 ガンコジーさんがうなずく。


 もう1個、同じオブジェクトがある。

 それを村の外にセット。


「くま吉、くぐってみよ」

『おけー! とぅ!』


 くま吉君が工房内の転移門をくぐる。

 すると……煙のようにくま吉君が消えた!


『おーい! みんなー!!!』

「村の外からね」


 私たちは村の外へ移動。

 そこには、くま吉君が元気よく、びょんびょんと飛び跳ねていた。


『すげーやこれ! 一瞬で村の外にきてたよ!』

「はわー……すごい。ガンコジーさんの発明凄いわね」


 するとガンコジーさんがふるふると首を横に振る。


「キリエ嬢ちゃんの手柄だ」

「え、わ、わたし!? 何もしてないんだけど……」


「このアイディアを思いついたのは、嬢ちゃんのおかげだ。あんた結構な頻度でどっかいなくなるだろ?」


 そ、そうね……。

 でもあれは、神さまが私に、救いを求める人の元へ派遣してるだけだから……。

「嬢ちゃんの転移魔法を見て、解析し、発明した。起動にも嬢ちゃんの魔力が必要だった。つまりまあ、あんたが作ったようなもんじゃ」

「いやいやいや……その理屈はおかしい……頑張ったのはガンコジーさんじゃあない」


「いやいや、ぬしがいなければ完成しなかった。やはりキリエ嬢ちゃんは凄いな」


 私ほぼ何もしてないのに……。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃ発想のきっかけはキリエだろうけどもよ、手柄を全部キリエに押し付けるのは違うだろ。 せめてキリエと自分の合作ぐらいにしなさいよイッコジー。
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