149.黄金郷
ドワーフのガンコジーさんの知り合い、イッコジーさんが奈落の森にやってきた。
「元気そうやな、ガンコジー」
「おまえもな」
二人がハグをしている。その様子をはらはらしながら、ガンコジーさんの恋人、デッカーちゃんが見守っている。
これは……恋の三角関係っ?
そんな!
デッカーちゃんやっと幸せになったところだったのに。まさかの恋敵が出現!? しかも相手は同種族の女性。
デッカーちゃんはわたしの大事なお友達。
彼女には悲しんでほしくない!
「なんやキリエの嬢ちゃん。ハラハラした顔して」
「えと、二人はそう言えばどういう関係なのかなって」
実は昔からガンコジーさんのことを思ってて、みたいなことがあるとか?
「従弟やで」
「あ、そ、そうなんだぁ~……」
ほぉ、良かったぁ。
デッカーちゃんもその場にへたり込んでいる。よかったね、デッカーちゃん!
「それでイッコジーさんは何をしに来たの?」
「ガンコジーから連絡がきてな。黄金郷がここにあるいうてな」
「おうごん、きょー?」
なんだか聞いたことないワードだった。
するとガンコジーさんが説明する。
「わしらドワーフの間でまことしやかに言い伝えられている、魔道具の聖地のことじゃ」
「魔道具の聖地って……?」
「黄金郷は、そこにあるものすべてが最高の魔道具、神器でできてるという。家も、道路も、街路樹も、何もかもが神クラスの魔道具でできてるとな。わしら職人にとっては、黄金でできた町よりも価値のある秘境、それが黄金郷」
へえ……そんなものがあるのねえ。
「嬢ちゃん、なに自分には関係ないみたいな顔してるんだ? こここそが、黄金郷ともいえる」
「ど、どうして?」
「そりゃ、キリエの嬢ちゃんがいるからじゃ」
わたしがいるから……?
首をかしげていると、イッコジーさんがぎょっと目をむいて叫ぶ。
「なんやこれ!? 魔力結晶が、そこら中にあるやんけ!」
イッコジーさんが見ているのは、わたしの家の周り。
魔力結晶(魔道具つくりの際に必要なもの)がにょきっとそこら中に生えているのだ。
「どないなっとんねんこれ!?」
「この嬢ちゃんがいるだけで魔力結晶が自生してくるんじゃ」
「なんやてえええええええええええ!?」
え、イッコジーさんも驚いてる……?
そんなにすごいことなのかしら?
「あ、ありえへん! 魔力結晶は魔素の濃いダンジョンにしか自生せえへえん! 地上で魔力結晶が獲れるなんて、聞いたことあらへんわ!」
「そ、そうなんだ……」
わたしビタイチ魔道具に興味がないので、知らなかったわ。
イッコジーさんが「なるほど、黄金郷は、ここにあったんやな」という。
いや、ここ黄金郷じゃあないんだけど……。




