138.続・川遊び【閑話】
みんなで奈落の森の小川へと遊びに来た。
魔物の赤ちゃんたちが気持ちよさそうに、川遊びする一方……。
聖十二支のみなさんが、わたしを川に入れてくれないのだった。
危ないからって……子供じゃあないんだから……
「おおい、キリエ~」
『あ、母ちゃんだ』「くま子さん!」
わたしはくま子さんに抱きつく。
頑固な魔物さんが多い中、くま子さんは結構わたしの意思を尊重してくれる。好き。
「みんなが川遊びしちゃいけないって……」
「別にイイだろ、こんな大勢で遊びに来てるんだし。もしも溺れたら、みんなで助けりゃあいい」
くま子さんが言うと、チャトゥラさんたちが「「「たしかに」」」とうなずいた。
「さすが森のリーダーね、くま子さんっ」
「あ、あのぉ……キリエ様。いちおう私が森のリーダー……」
チャトゥラさんが恐る恐る手を上げる。
……うん、確かに前はチャトゥラさんが、森の主をやっていたわ。
でもわたしがここへ来てから、あんまりリーダーシップを発揮してるところをみたことない(だいたいわたしに構ってる)。
一方くま子さんはあれこれテキパキと、みんなに指示を出している。
「申し訳ないけど……くま子さんのほうが……リーダーっぽいかなぁ」
「ぐぬ……そ、そうですか! まあいいです! 私はキリエ様の守護者! 指示出し役はくま子、おまえに任せた……!」
くま子さんがあきれたようにため息をつく。
「ま、最初からそのつもりだったからいいけどね……っと、キリエ。ガンコジーさんからあんたに届けもんだ」
「ガンコジーさんが? わたしに?」
なんだろう……?
くま子さんが脇に抱えてた、包み紙をわたしてくる。
開けるとそこには……。
「わぁ! かわいらしい水着ね……!」
ワンピースタイプの水着が入っていたわ。
ガンコジーさんがわたしに作ってくれたのね……! ありがとー!
……あれ?
わたしのスリーサイズなんて、彼知ってたかしら?
「……ワタシが測った」
「め、メドゥーサちゃん……」
しゅるり、とメドゥーサちゃんがからんでくる。
「……夜の間に測った。キリエの裸見たかったの」
「そ、そう……」
メドゥーサちゃんってたまーに、危ない発言することおおいよね……。
まあでも、水浴びするなら、水着は欲しかったし、ちょうどいいかな。
「あとでお礼言っとかないと。じゃ、ちょっと着替えてくるわね」
「あたいも水着もらったから、着替えにいこうかね」
と、ふたりで小川を離れようとしたのだけど……。
チャトゥラさんが……ついてきた。
「あの……」
「なんでしょう!」
「お座り!」
「きゃうん!」
……うん、チャトゥラさん、あなたが守護者としての役割を果たそうとしてくれたこと、とてもうれしいわ。
でもそれのぞきだから……やめてほしい……。
「てめえこの犬ぅ!」「……キリエの裸を見るつもりだったな」「ははっ、殺すよ?」
聖十二支女子組から、ボコられるチャトゥラさん。
あわわ……。
「み、みんな暴力はいけませんっ!」
「「「だってぇ……」」」
「だってじゃないの! もうっ! ヴァジュラさんまでっ」
大人なヴァジュラさんまで暴力振るうなんて。
まったくもうっ、いい年して子供じみたことするんだから……。
わたしは治癒の力で、チャトゥラさんを治す。
彼は涙を流して「ありがとうございます」といってきた。
はあ……ただ水着着るだけなのに、大騒ぎね……。
賑やかで嫌いじゃあないけど。




