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136.三章エピローグ




《キリエSide》



 ……ふっ、と目が覚める。

 もふっと、いつもの感触がした。



『あ、キリエ姉ちゃん! おはよー!』



 高級なお布団ともそん色ない、ふわふわもふもふ具合にくわえ、元気いっぱいの声。

 わたしがゆっくりと体を起こすと、友達のくま吉くんが、そこにいた。



「くま吉くん……。ここは?」

『デッドエンド村の、姉ちゃんの部屋だぜ』



 かつて旧楽園デッドエンドと呼ばれた荒れ地、そこにあった廃教会が、わたしの拠点だ。

 今はガンコジーさんほか、ドワーフさんたち、魔物さんたちの協力があって、急ピッチで開拓が進められてる。



 今やここはデッドエンド村と呼ばれており、廃教会は立派な教会になっていた。

 ……うん、現状整理してたら、頭がさえてきた。



「キリエ、起きたかい?」

『母ちゃん!』「くま子さん」



 人間姿になったくま子さんが、入り口で立っていた。

 よっ、と手を上げると、わたしのもとへやってくる。



「大丈夫かい?」

「だい、じょうぶって?」

「……そうかい、やっぱり覚えてないんだね」



 覚えてない……?



「昨日のことはどこまで覚えてる?」



 昨日は、たしか……。



「ヴァジュラさんとマコラさんの歓迎会があって、お酒飲んじゃって……そのまま気づいたら朝になってたわ」

「!!!!!!!!」



 あれ、くま子さんがすごい驚いてるわ。どうしたんだろう……?

 


「ほ、ほんとに何も覚えてないのかい? 飲み会の後のこととか?」

「え、ええ……」



 くま子さんが、なんだか焦ってる?

 どうしたのかしら。



 わたしは覚えてることを、全部言ったんだけど……。

 するとくま子さんは、じっとわたしの目を見つめてくる。



 どうしたのかしら……?



「うそは、言ってないんだね」

「?」

「いや、なんでもない。すまなかった……そっか、あんたは飲み会の後、今朝起きるまでの記憶がすっぽり抜けてると」

「そうよ」

「エレソンの死の秘密は?」

「死の、秘密……?」



 たしかエレソン様は、ヴァジュラさんが殺したっていっていた。

 でもわたしは、彼女が殺したとは到底思えない。



 死の秘密っていうのは、ヴァジュラさんが隠してることを言ってるのだろう。



「いいじゃない、誰にだって、言いたくないことの一つや二つくらいはあるわ」

「! そ、そう……そうだね」



 というか、昨日も同じことを言った気がするのだけど。

 同じ話を二度して、なんでそんな驚いてるのかしら……?



『なーなー、かーちゃーん。はらへったー。むずかしい話やめて、めしにしよーぜー』



 くま吉くんがぶーぶー文句を言ってる。

 わたしは微笑んで、くま吉くんの頭をなでる。



「そうね、食事にしましょ」

「そ、そうだね……悪い、キリエ。先に魔物のがきんちょどもに、ご飯を食べさせておいてくれるかい?」

「? いいけど……」



 くま子さんはそそくさと、部屋を出ていった。

 最初から最後まで、なにか焦ってるような感じがしたわ。



『へんなかーちゃん』

「まぁ、くま吉くん、お母さんの悪口言っちゃだめよ?」

『悪口じゃないよ。なーんか変だったきがしただけだい』



 くま吉くんも、わたしと同意見のようだ。

 どうしたんだろう……?



    ☆



《くま子Side》



 キリエのもとをさったあと、くま子は世界樹マーテルのもとへ、今回のことを報告にいった。



「なんじゃと……? 記憶が、ない……?」



 マーテル、そしてくま子には、昨日の夜の出来事が、聖十二支デーバたちから共有されている。

 昨晩判明した、エレソンの死の真実。



 そしてキリエが天使を召喚し、逢魔に鉄槌を下したこと……。

 そのくだりを、あろうことか、キリエ本人が覚えていなかった。



「何が起きてんだろうね?」

「わからぬ……」



 くま子は目ざとく、気づく。

 マーテルが何かに思い当たるようなことが、あるようだ。



「何か言いたげだね」

「……ああ。あくまで、仮説でしかない。ほんとに仮説じゃぞ?」

「くどいね。キリエに、いったい何が起きたってんだい?」



 マーテルは、重々しい口調で、自らの仮説を口にする。



「天使の召喚の代償として、キリエの記憶が、持ってかれたのじゃ」

「! な、なんだいそりゃ……! 代償に、記憶を失った!?」

「うむ……あれほどまでの強い力じゃ。当然、リスクがあって当然じゃろう?」



 くま子も直接見たわけではないが、キリエは山一つ吹き飛ばしたという。

 ノーリスクでそんなことができるわけが、なかった。



「今までのように何かを治す力に、代償は伴っておらなかった。あくまで、あの破壊の力を使うときだけ、記憶を持ってかれてしまうのじゃないだろうか」

「……癒しの力に代償はないんだね」

「おそらくな。今までいろんな奇跡を起こしてきて、生活に一切支障が出てなかったしな」



 くま子は心から安堵する。

 もしも、天使召喚の、あの破壊の力と同じ風に、癒しの力にも代償があったらどうしようかと……。



「……このことはキリエには黙っておくべきだね」

「当然じゃな。聖十二支デーバと、わしらだけで共有するべきじゃ」



 でないと、大騒ぎになる。

 ただでさえ、この森にはキリエを愛する魔物が多い。



 力の代償なんて話をすれば、パニックになるのは必定といえた。



「幸いなことに、癒しの力と違って、破壊の力は我らでも代替可能じゃ」

「ああ……じゃあ、あたいらのやることは、ひとつだね」



 今までと同様、キリエを陰ながら守る。

 キリエが破壊の力を、彼女が最も忌み嫌う、暴力を振るわなくていいように。



「魔物一同、より一層、気合を入れてキリエを守らないとね」


【★読者の皆様へ】



これにて3章完結です。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


キリエの物語はまだ続きますが、一旦ここで区切らせていただきます。


4章開始は少々お待ちくださいませ。


ここまでで

「面白かった!」

「続きが楽しみ!」

「4章も期待!」


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[一言] え?完結済みタグついてたけどコレで終わり? 嘘でしょ?
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