122.わたし何かやっちゃいました?
《キリエSide》
うーん、むにゃむにゃあ~……はっ!
「こ、ここは……?」
『あ、キリエ姉ちゃん起きたよぉ!』
背中に凄いもふみを感じる。
この声は……。
「くま吉君……」
『おはよ、姉ちゃん!』
「うん……おはよ……」
わたしは周りを見渡す。
ここはデッドエンド村の中央広場だ。
レジャーシートの上にわたしは寝かされていたらしい。
そしてくま吉君が側にいてくれたようだ。
どうやら風邪引かないようにと、風よけプラス毛布になってくれたみたい。
ありがたい……。
「ありがとう、くま吉君。あったかかったわ」
『そか! よかった!』
わたしがぐいっ、と伸びをして……はっと気づく。
「そ、そうだ! 宴の準備の途中だったわ!」
ヴァジュラさんの歓迎会の準備の最中、ガンコジーさんの作ったワイン倉へいって……。
……そこからの記憶が無い。
『ぴゅいー! キリエお姉ちゃんおきたー!』
『おきたー』
『キリエ姐さん!』
ぐーちゃんたち魔物さんが、わらわらと集まってくる。
みんな準備を進めていたというのに……わたしってばぐーすかのんきに寝てしまうなんて……!
「ごめんなさい、みんな!」
わたしは一人サボっていたことを謝る。
でも……みんなきょとんとしていた。
『サボってる?』『サボってた?』『ぜんぜん』
「そ、そう……? でもわたしお酒飲んで寝ちゃってて……」
『『『あー……』』』
あー、ってなに?
え、なに……?
『もしかして姉ちゃん……覚えてないの?』
「な、なにを……?」
『お酒飲んだあと』
「直ぐ寝ちゃったんじゃあないの? わたしお酒弱くて……」
『『『あー……』』』
だからあーって、なにっ?
記憶が無い間に、何かやっちゃったってことかしら……。
「お、キリエ、起きたかい?」
「くま子さんっ」
わたしはくま子さんの胸に飛び込む。
「わ、わたし何か粗相をしてないかしら?」
「うん」
「うん!? どっち!?」
「ま、気にししなくていいさ、みんな嫌がってなかったし。な、みんな」
魔物さんたちが笑顔でうなずいてる。
え、え、ええ……。
なにかやったの……? うわ……どうしよう。
迷惑かけてないかしら……。
でもくま子さんは嫌がってなかったっていうし、魔物さんたちも笑顔だし……。
人の嫌がること、しなくてよかった。
でも気になる……!
何をしたのかしら……ああ……。
『姉ちゃん意外だったな~』
「意外!?」
『ぴゅい! あまえんぼさん!』
「甘えんぼ!?」
『ばぶー』
「ばぶぅ!?」
わたしだけ記憶無いの恐いんですけど……。
うう、酔ったわたしは何をしたのかしら……。
「わんこさんっ」
雷狼のわんこさんの元へ向かう。
この子なら、色々答えてくれそうだわ。
いつもわたしの言うことを、忠実に実行してくれる真面目な子だし。
「ねえわんこさん、わたし何したのかしら?」
『極上でやした』
「極上!? なにが!?」
『天にも昇る心地でやした』
「だからなにを!?」
うう……結局なにをしたのか、誰も教えてくれない……。
というか!
「なんでみんな、教えてくれないの?」
『『『…………(にっこり)』』』
「その温かい目はなんなのっ」
するとくま子さんが近づいてきて、ぽんぽんと頭をなでる。
「ま、別に変なことしちゃいないし、気にしなくてイイさね」
「いやでも……迷惑かけたらいやだな……」
「大丈夫。ごらん、誰かひとりでも、迷惑かけられたような目ぇしてるかい?」
くま吉君たちを見つめる。
彼らはにこにこーって笑っていた。
わたしに対するネガティブな感情は、感じられない。
「ね?」
「そう……だね。うん……」
もう何かしたことは、認めよう。
迷惑じゃないにしろ。
次からは……飲み過ぎないようにしないと!
「ごめんねみんな。もうお酒飲まないから」
『『『飲んで、どうぞ』』』
「なんでよっ」
まあまあ、とくま子さんがなだめる。
「さ、準備は整った。宴をはじめようじゃあないかい」
『『『おー!』』』




