116.魔王の守護者
《アニラSide》
13使徒が聖女のいる森に襲撃を仕掛けてきた。
敵はアニラたちを三つに分断して、各個撃破する作戦のようだ。
アニラはスリーの強制転移能力によって、森の外へ飛ばされていた。
アニラはじろり、とスリーをにらみつける。
……相手は一見すると熊のように大きく、無骨な見た目の、人間の男だ。
だがアニラは、スリーの内包する莫大な魔力を感じ取っていた。
「おまえ……守護者だな。逢魔って魔王の」
スリーが感心したように「ほう……」とつぶやく。
「さすが魔王種、慧眼であられるな」
スリーからはアニラに対する、ある種リスペクトのような物が感じられた。
彼我の実力差を、そして相手の立場を理解してる様子だ。
「お察しのとおり、拙者は逢魔様の守護者」
「やっぱり守護者か。階級は?」
「【ルーク級】でござい」
「ふん……取るに足らん雑魚か」
「まったくもって、その通りである」
そこへ……。
「……アニラ」
「なんだ、メドゥーサ。もう終わったのか。早いじゃねえか」
メドゥーサがナナの転移能力を使って、アニラの元へ飛んできたのだ。
ほぅ……とスリーがつぶやく。
「ナナはやられたか。まあ貴殿を魔王種だと見抜けていなかった節がある。負けても仕方あるまいて」
「……こいつ、やる?」
メドゥーサがスリーに対する警戒心を高める。
ナナと違い、スリーはメドゥーサの力を見抜いてるようだ。
「そのとおりだぜ、メドゥーサ」
「……その名前で呼ぶな。キリエだけだ」
「あ、そうかよ。じゃあ蛇女。正解だ、このおっさんは魔王の守護者だ」
「……魔王の、守護者?」
初めて聞くだろう単語に、メドゥーサが首をかしげる。
たしかメドゥーサも魔王種だったはずだが、たぶん教えてくれる人がいなかったのだろう。
アニラは後輩魔王に説明しようとするも、そこへスリーが言う。
「魔王種と契約を結び、力の供給と【王剣】を授かりしもの。それが守護者でありますよ」
「契約……? ……王剣?」
初めての単語が連続し、戸惑うメドゥーサ。
アニラはスリーのあまりの余裕っぷりに、逆に違和感を覚える。
「何が目的だ? 敵に塩なんて送ってよ」
「いえ、別に。ただ知りたそうにしていたので、教えてさしあげたまで」
「あっそう……」
アニラもできることなら、暴れたくないのだ。
なにせ愛する女がとんでもない平和主義者だから。
それに……彼女は一度暴れ回って失敗している。
エレソンに反省のため閉じ込められてる間に、最愛のひとを亡くしてしまった。
暴力は悲しい結末を産む。だから、この手で他者を傷つけることに、アニラはためらいを覚えていた。
「さて、説明に戻りますと……守護者魔物とは、名持ちの魔物の上位種と言える存在でございます」
名持ちとは、魔王が名前をつけた魔物のこと。
莫大な魔力があたえられ、たいていの魔物は進化する。
「しかし名持ちの場合は、一時の魔力供給に過ぎません。一方、守護者と魔王種との間に結ばれるのは契約。魔力経路が結ばれて、常時王から力をもらうことになります」
一時的な力の付与であると、名持ち魔物。
常時付与であると、守護者魔物ということらしい。
「守護者には階級があります。下からポーン、ルーク、ビショップ、ナイト、クイーン。名持ちは全員ポーン扱いです」
つまり、ポーンは名持ち。
ルーク以上は守護者と言う分類らしい。
「ご理解いただけただろうか?」
「……さっぱり。どうでも良い情報ばかりで、イライラする」
メドゥーサは最初から怒っていた。
「……キリエの領地に入ってきたやつは、全員殺す」
「まあ待てメドゥーサ」
アニラがメドゥーサの肩をつかむ。
その直後だ。
ずんっ……!
メドゥーサのほんの目と鼻の先、巨大なクレーターが出現したのだ。
「…………」
メドゥーサはいきなりの攻撃に驚いた。
そして、その力強さにも。
「おめえは魔王に覚醒して日が浅い。いくらスペックで守護者より上だとしても、力の運用についちゃ、相手のほうが一枚上だ」
スリーの手には1本の短刀が握られている。
「王剣を自在に使えるらしいな」
「それなりには」
「そーかよぉ。じゃあ……オレ様が相手してやるよ」
ぱきぱき、とアニラが指を鳴らしながら前に出る。
「魔王自らお相手してくれるとは、光栄の至り」
「勘違いすんな。これは遊びだ。死なない程度に手加減してやるよ。なにせ殺し合いじゃないからな」
アニラは人間姿のまま、つまり力をセーブした状態である。
魔王と、魔王の守護者がぶつかりあおうとしていた。
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