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112.欲望解放聖女様




 デッドエンド村に、ヴァジュラが来たことの宴が開かれようとしていた。



「きゃーきゃー♡ まものたーん♡ いっぱーい♡ きゃー♡」


 

 酒に酔って幼児退行してるキリエに、魔物達はみな戸惑いの様子を見せている。

 しかし……。



『ぴゅい~♡ おねえちゃーん♡』

「ぴゅい~♡ ぐーちゃーん♡」



 魔物の子供達は、比較的キリエの奇行(※当社比)を見ても、特に困惑してない様子。

 子供同士だからだろうか……。



 キリエはグリフォンの赤ちゃん、ぐーちゃんを抱きしめて、毛皮に顔を埋めてもふもふしてる。



「もふもふ~♡ しゅき~~~~~~~~~~~~~~~♡」

『ぴゅい! もっともふもふしよう! みんな~!』

『『『はーい!』』』



 魔物の赤ちゃんたちが、キリエに集まってくっついてくる。

 毛皮のあるなし関係なくである。



「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~♡ もふもふい~~~~~~~~~~~~~~~ぱい! 天国だぁ!」


 

 キリエは魔物の子供達を侍らせて、うはうはと笑顔になっている。

 魔物たちは大好きなキリエとくっつけてうれしいらしい。



 キリエは結構まじめだ。

 こうして欲望全開にしてもふもふすることはほとんどない。



 魔物達はキリエにもっとくっつきたい、もふもふしてもらいたいと思っていたので……。



『キリエ様にもふってもらえた!』『うれしー!』『きりえさま~! もっとぼくらをもふって~!』



 と次から次へと魔物達がくっついて、もふもふしてもらっている。

 魔物の子供達のその様子を見て……次第に、大人達ももふってもらいたがる。



『あ、姐さん……』

「わんこちゃーん! おいでー!」

『あ、いいや……自分は別に……』

「こっちこーい!」

『あ、は、はい……』



 雷狼ライガーのわんこが、恐る恐る近寄ってくる。

 キリエはご満悦の表情を浮かべると、わんこを抱きしめる。



「わふーん♡ いいもふみ~♡」

『あ、あのキリエ様……! おやめください! 皆さんが見ており……わふん♡』

「よーしよしよし♡ もふもふ~♡」



 キリエはわんこのお腹をわしゃしゃとなでる。

 わんこは次第に恍惚の笑みを浮かべて、くたぁ……と力を抜いた。



『り、リーダーが骨抜きに!?』『キリエの姐さんの、恐るべき愛撫!』『すげえ……!』



 わんこの部下である大灰狼グレート・ハウンドたちが、戦慄の表情を浮かべる。

 キリエはひとしきりわんこをモフったあと……。



「みんな~♡ おいで~♡」



 大灰狼グレート・ハウンドたちを迎え入れようとする。

 痙攣してるわんこを見て、大灰狼グレート・ハウンドたちは躊躇するも……。



『キリエ様に、甘えるチャンス!』『こんなチャンスめったにないぞ!』『いつもは無理だもんな!』『ああ、またとないチャンスだ!』



 大灰狼グレート・ハウンドたちがキリエに近づく。

 キリエは犬の毛皮に顔を埋めて、もふもふぎゅーっとする。



『あひぃん、なんて愛撫だ!』『天にも昇る心地だぜ!』『キリエ姐さんのもふもふ最高だぜ!』



 といって、みんなノックダウンしてしまう。

 それでもキリエの側から離れようとしない。



「はーあん♡ しゃーわせー♡」



 キリエは魔物をもふれて大満足のようだ。

 くま子とヴァジュラはその様子を見て、あきれている。


 だが……温かいまなざしをしていた。



「キリエちゃんはあんなふうに無邪気に笑えるんだね」

「……普段はほんとうに、気を張ってるさね。かわいそうに」



 キリエは背負った使命のせいで、自分の欲望を表に出せていないのだと、ふたりは気づいたのだった。



「おーい! くま子ちゃん! ヴァジュラちゃん! かもーん!」



 キリエが二人に気づくと、ぶんぶんぶん! と手を振る。



「こっちこーい! これは、まおーさまのごめいれいであーる!」



 すると、配下の二匹は強制的に、キリエに引き寄せられる。



「魔王の強権発動だ……」

「な、なんだいそれ!?」

「上位種たる魔物は、配下の魔物にある程度命令を強制できるんだよ!」

「なんだってぇ!?」



 くま子はそれを知らなかったようだ。

 ふたりはキリエに捕まる……。



「さぁ! もふもふパーティのはじまりだ野郎ども!」

『『『ひゃっはー!』』』

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