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103.13使徒



《サーティーンSide》


 キリエがヴァジュラを仲間に迎え入れた、一方その頃。

 そこは人外魔境スタンピードと呼ばれる、世界四大秘境のひとつ。


 円卓山テーブル・マウンテンと呼ばれる、文字通りとおめにみると円卓に見える山の頂上にて。

 サーティーンは報告のため、仲間の元へと戻ってきたのだ。


 円卓山の頂上には、山肌を削って作られた城がある。

 その中の会議室にて。


「ぎゃはっはあ! サーティーンだっさ! 息巻いといて、おめおめ帰ってくるんだもーん、ちょーだっさーい」

「……ちっ、黙りやがれ、ナナ!」


 ナナと呼ばれた女は、サーティーン同様に、身体の一部に【Ⅶ】という入れ墨があった。

 会議室の中には円卓があり、1~13の番号が割り振られた席がある。


 サーティーンの座るのは、13の席。

 そのうち、11席は埋まってる。


 ナナは「ぷーくすくす、だっさ~。まじださーい。うけるー」とサーティーンを煽り散らす。

 そんな風に馬鹿にされて、黙っていられるサーティーンではない。


「ナナ……! 今すぐてめえをぶち殺してやる……!」

「はー? できるんですかぁ? あーしらの中で最弱のあんたがぁ?」


 彼ら……13使徒のなかには明確な序列が存在する。

 ヴァジュラを圧倒してみせた、サーティーンすら、彼らの中では最弱に過ぎないのだ。


「命は大事にしておくのである」

「スリー……」

 スリーと呼ばれた大男が、ふたりをなだめる。

 ナナも、スリーも、見た目は人間に近い。


 だが彼らもまた、というかこの場にいる全員、魔物だ。

 逢魔おうまに名前を付けられ、存在進化をはたした、強力な魔物たちである。


「ファーストとセカンドがまもなく来る。そうしたら会議が始まる。おとなしく待つのである」

「けっ……! 命拾いしたなくそ女」

「どっちのセリフよ、ザコ助」


 ナナとサーティーンはソリが悪いようだ。

 

「ああ? 誰がザコだと? てめえ……今ここで死……」


 そのときだ。

 ぞくり、と悪寒を感じた。

 

 サーティーンは、その場から動けなくなる。

死神がすぐそばにいて、大釜を首筋に当てられている。


動けば死。そんなイメージが、サーティーンを始め、その場に居る全員の脳裏に浮かんだ。


「……おしゃべりはそれくらいにしろ」

「ふぁ、ファースト……」


 ファーストと呼ばれた人物は、女だった。

 彼らと同じ、人型に進化した魔物。


 だがほかの12人と比べて、異質だった。

 なぜなら残りの連中は、進化前の魔物の特徴を多少なりとも残してるからである。


 一方で、このファーストと呼ばれた少女は、見た目が完全に人間である。

 ……だが、彼女の身体から立ち上る殺気、そして、魔力量は、人外のそれだ。


 古竜なんて可愛く見える、それくらいのすごみを、彼女からは感じられた。


「じょ、冗談だよ……ただ戯れてただけさ。な、な? ナナ?」

「え、ええ……そーよ、サーティーン。いっつジョーク、だから、ね?」


 ファーストが二人を見て言う。


「そうか」


 一閃。


「「え……?」」


 ぼとり、とナナとサーティーンの首が、転げ落ちる。

 この二人は魔王より名前をもらった、名持ちの魔物。かなりの実力を持つ二人が、なんの抵抗もできないまま、死んだ。


 ファーストの手には1本の刀が握られている。


「我らになれ合いなど、不要。我らは偉大なる逢魔様の駒だ。駒が勝手に、主の意思を無視して、動くな」


 仲間二人を殺したというのに、ファーストの表情にはみじんも動揺が見られなかった。


 死体となったそれらを一瞥し、そして残りの連中を見渡す。


「貴様ら、なにか私に言いたいことがあるか?」


 ふるふるふる! と全員が首を横に振る。


「では、会議を始める」


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