101.光の速さで参上す
《キリエSide》
わたしは雷狼のわんこさんと、そのお仲間の大灰狼さんたちと協力して、ヴァジュラさんを追跡。
位置を特定したあと、チャトゥラさんにここまで乗っけてってもらったのだ。
わたしの(というか神さまの)転移は、助けを求める声が無いと、その場所へ飛べない。
ヴァジュラさんは、わたしを最後まで求めようとしなかった。
……理由は、多分わかる。でもいまはそれどころじゃない。
「な、なんだよてめえは!」
柄の悪そうな人? ケモノ? がいた。
人間の姿を残した、蛇っぽい人。
「火竜人ですね」
チャトゥラさんがフェンリル姿から人間の姿に戻る。
わたしはいち早く彼の背中から降りて、ヴァジュラの治療を行う。
「キリエちゃん……どうしてきたんだい? 裏切り者なんてほっとけば……」
「だまって!」
わたしは目を閉じて、一生懸命に祈る。
「神さま……どうかこの優しい子を、おすくいください」
「はっ! 馬鹿が……おれの神器黒蛇はよ、いちど相手に絡みついたらもう二度と……」
パキィイイイイイイイイイイイイン!
「なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
わたしが目を開けると、ヴァジュラさんを縛り付けていた、黒い鎖は破壊されていた。
「くそっ! 魔王種に白澤、それにフェンリルだと!? 完全に想定外だ! 【転移】!」
火竜人さんが懐から転移結晶を取り出して、いなくなる。
……とりあえず、安心ね。
「キリエちゃん……どうしてきてしまったんだい? こんな危ない場所にきて」
ああ、よかった。
「やっぱりあなたは思った通りの優しい人。あなた、うちに来たのは、この人からわたしを遠ざけるためだったのね」
「どういう……ことでしょう?」
チャトゥラさんが尋ねてくる。
「おそらくだけど、ヴァジュラさんは忠告に来たのよ。この火竜人さんが、わたしを狙いに来るとわかってたのね」
「! そ、そんな……いやしかし! こやつは保護を求めていた! 自分が狙われてた何よりの証拠!」
「ならどうして、森なんて寄らず、遠くに逃げなかったの?」
多分だけど、この火竜人さんは、わたしとヴァジュラさんの両方を狙ってたんだろう。
わたしのほうへ狙いを変えたから、自分が囮になってくれたのだ。
「……君は、お人好しすぎる」
ヴァジュラさんがどこか、懐かしむような口調で言った。
誰かと私を重ねているのかもしれない。
「そうですよ、キリエ様。あなたの意見は……根拠のない憶測に過ぎません。こんな裏切り者の行為を、そこまで好意的に解釈するのは……どうしてですか?」
どうして?
決まってるわ。
「ヴァジュラさんが、わるい子には思えないからよ」
最初から、わたしは彼女が悪人だとはどうしても思えなかった。
「それに極めつけは、神さまが力を使ったこと。神さまが悪人に、治癒の力を使うとは思えないわ」
確信を得たのは、祈ったあとに、神さまが力を使ってくださったこと。
やっぱり神さまは間違ってないわ!
「「…………」」
あ、あれ……?
ふたりが、なんだかぽかーんとしてるわ……?
「く、うっくく……あっはっはっは!!!!」
ゲラゲラとヴァジュラさんが大声で笑い出した。
え、ええ~……なに?
「そうか、神さまが僕を善人だと認めてくれたから、善だと思うんだね」
「ええ、まあ……でも、神さまがお認めになるまえから、わたしはわかっていたわ。あなたがいい人だって。それに……人を殺すような人じゃないって」
しゃがみこんで、わたしはヴァジュラさんに手を差し伸べる。
「森に帰りましょ、一緒に。歓迎するわ」
【☆★読者の皆様へ お願いがあります★☆】
良ければブックマークや評価を頂けると嬉しいです!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると幸いです!
ポイントが入ると、更新を続けていくモチベーションが上がります!
よろしくお願いします!




